ロアール川(読み)ロアールガワ(英語表記)Loire

デジタル大辞泉 「ロアール川」の意味・読み・例文・類語

ロアール‐がわ〔‐がは〕【ロアール川】

Loire》フランス中部を流れる同国最長の川。中央高地南部に源を発し、ほぼ北流して、オルレアン地方で向きを西に転じ、ビスケー湾に注ぐ。長さ1020キロ。ロワール川。→ロアール渓谷

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精選版 日本国語大辞典 「ロアール川」の意味・読み・例文・類語

ロアール‐がわ‥がは【ロアール川】

  1. ( ロアールはLoire ) フランス中部を横断する同国第一の大河。マシフサントラル山地南東縁のジュルビエ‐ド‐ジョン山に源を発し、西北流してアリエ川を合わせ、オルレアン付近から西流してビスケー湾に注ぐ。全長一〇二〇キロメートル。

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改訂新版 世界大百科事典 「ロアール川」の意味・わかりやすい解説

ロアール[川]
Loire

フランス第1の長流。全長約1012km。マシフ・サントラル(中央山地)から流れ出し,フランス中部を北流してオルレアン付近で西に向きを変え,フランス西部を潤して大西洋に注ぐ。流域面積は11万5000km2で,フランスの面積の約20%に及び,パリ盆地とマシフ・サントラルとの間に一つの独自な地域をつくり出している。平均流量は1050m3/sでライン川中流部に匹敵するが,季節的変化がきわめて大きく,水運には適さない。

 ロアール川の水源はマシフ・サントラルの東縁に近いビバレ山地にあり,ローヌ河谷に接している。断層でつくられた古い地溝帯を北流してマシフ・サントラルを貫く上流部は峡谷が多い。西をフォレ山地,東をリヨネ山地にはさまれたフォレ盆地に入ると谷は開け,なだらかなリヨネ山地を越えるいくつかの低い峠によってローヌ河谷と連なっている。フォレ盆地の下流にはロアンヌ盆地が続く。ローヌ河谷から峠を越えてフォレ盆地に入り,ロアンヌからロアール川を下ってパリやナントに出るルートは,鉄道ができるまで重要な交通路であった。現在のフランス語のもとになった北部フランス語(オイル語)とプロバンス語(オック語)との言語地理的な境界がかつてロアール川河口からボージュ山脈南端を結ぶ線にあったことは,南からの文化の流入路としてのロアール川の重要性を示している。フォレ盆地の東南にあるサンテティエンヌはかつてフランスの全石炭の35%を産出した炭田地帯の中心で,18世紀にロアンヌから上流の水運が開けると,この石炭もロアール川を通じて積み出された。現在のサンテティエンヌでは鉄鋼業,金属,機械工業が盛んであり,工業地帯はビバレ山地に延びて,リヨンとのつながりを深めている。ロアール川がロアンヌの下流で再び峡谷を抜け,マシフ・サントラルの山麓に出たあたりはブルボネと呼ばれ,ロアール川の支流のアリエ川に沿うムーランは,中世にブルボン王家の主邑として栄えた。ロアール川,アリエ川にはさまれた地域は〈ブルボネのソローニュ〉と呼ばれ,沼沢地や森林が多い。ソローニュはロアール川が大きく弧を描いて西へ流路を曲げるオルレアン南方の沼沢地帯で,ロアール川と南方のシェール川とにはさまれている。森林やヒースの荒地が広がり,秋から冬にかけての猟期にはパリからの狩猟客でにぎわう。

 オルレアンより下流のロアール川は全長約350km,幅は6~7kmにも及ぶ広い谷をつくり,ロアール河谷(Val de Loire)と呼ばれる。ロアール河谷は大西洋にまっすぐ開いているため海洋性気団の影響を強く受け,天気は変わりやすいが気候は温和であり,ルネサンス以来,国王や貴族の居城としてのシャトーがロアール川沿いに多くつくられたこともあって,〈フランスの庭〉とも呼ばれている。ゆったりとしたロアール川の流れ,ポプラやハンノキの林が続く河畔,その緑の間に見え隠れする白いシャトーはロアール河谷の独特な景観であり,とくにオルレアンからトゥールにかけて点在するシャンボール,ブロア,アンボアーズシュノンソーなどのシャトー群は世界的な観光地となっている。これらのシャトーがつくられたのはバロア朝末期の15~16世紀であり,なかでもフランソア1世のつくったシャンボール城は最も壮麗で,その後ルイ14世も一時居城としたことがあった。とくに15~16世紀には宮廷がパリを離れてロアール川のシャトーに移ったことが多く,ロアール河谷はフランス文化の中心でもあった。近年では高速道路の発達によってパリから1時間半程度の距離になったため,週末やバカンスのための別荘が増え,再びパリとの結びつきが強まろうとしている。オルレアントゥールなどロアール河谷の都市では商工業の発展が著しく,オルレアンでは1968-75年に20%以上もの人口増加があり,機械,化学工業,タイヤ製造業などが発展している。ロアール川の水を冷却水として利用する原子力発電所もロアール川沿いに次々と建設されており,パリに電力を供給している。ロアール川河口のナントと,三角江(エスチュアリー)の入口にある外港のサン・ナゼールは,造船,鉄鋼,機械,化学の各工業が盛んである。ロアール河谷の広い沖積平野ではアスパラガスを特産とする野菜や果樹栽培が行われ,河谷の両側に広がる段丘上ではブドウが栽培されている。ロアール・ワインは白が中心で,オルレアン上流のサンセール,下流のアンジューおよび河口周辺が主要な産地である。アンジューはロゼ・ワインで名高い。ブドウの栽培限界はロアール河谷の北側に当たっている。

 ロアール川はマシフ・サントラルの90%を流域とするため,地中海性降雨の集中する秋から冬と,春の融雪期に増水する。反対に乾燥が著しい夏には減水がひどく,フランスで最も流量変化の大きい河川となっている。夏には広い河原ができ,川は中州の間を流れる。ロアール川の水運が他の大河川より劣っているのはこのためである。パリ盆地とは低平なガティネ台地で接しており,セーヌ川とはブリアール,ロアンの両運河で結ばれている。第三紀にはロアール川もこの運河の方向に流れて(すなわちセーヌ川の支流として)パリ盆地に流入していた。その後,大西洋地域の沈下があって,ロアール川は西に曲がりセーヌ川から分かれた。流量変化の大きいロアール川がそのままパリ盆地へ流入し続けていたとすれば,流量変化の少ないセーヌ川の水運によるところの大きかったパリの発展はなかったかもしれない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロアール川」の意味・わかりやすい解説

ロアール川
ロアールがわ
Loire River

フランス中部を流れ大西洋に注ぐ,フランス最長の川。全長 1020km,流域面積 11万7000km2マシフサントラル(中央山地)の東部,アルデーシュ県西部のジェルビエドジョン山(1551m)のふもと,海抜 1370mのところに源を発し,ルピュイアンブレ盆地(→ルピュイアンブレ),フォレ盆地,ロアンヌ盆地を通りパリ盆地内に入る。オルレアン付近から流れを西に変え,ツールアンジェ付近を経てナントにいたり大西洋に注ぐ。河口北岸にナントの外港サンナゼールがある。中流部の河谷は気候が温暖でブドウの産地として知られるほか,ルネサンス時代の王侯貴族の城館が多く観光地としても有名。上流域はサンテティエンヌ工業地帯(→サンテティエンヌ)。フランス中央部一帯を流域に収め,セーヌ川ローヌ川と運河で結ばれているが,水量変化が非常に大きいため,近年水運利用度は低い。なお,ロアール川の支流サルト川には同音異字の小支流ロアール川 Loirがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロアール川」の意味・わかりやすい解説

ロアール川
ろあーるがわ
la Loire

フランス中部を流れて大西洋に注ぐ川。全長1020キロメートルは同国最長、流域面積11万5120平方キロメートルは全国土の5分の1強を占める。セベンヌ山地中部西麓(せいろく)の標高1408メートルに発し、南流してすぐ北に転ずる。ロアンヌを経て、ブルボネ、ブルゴーニュ両地方の間を北西流し、ヌベール下流で南からのアリエ川を入れ、オルレアンで転じて南西流し、トゥールの下流左岸でシェル川、アンドル川、ビエンヌ川と合流、ナントの下流に三角口を形成して大西洋に入る。河口の北側に港湾都市サン・ナゼールが位置する。オルレアン上流付近からセーヌ川へ、ヌベール付近からソーヌ川へ運河が通ずる。上流部はダムによる電源地帯、下流域には原子力発電所が建設されている。オルレアンから下流にはブロア城、ショーモン城、アンボアーズ城、ランジェ城、ソーミュール城とフランス王室ゆかりの名城が多く、ジャンヌ・ダルクにまつわるオルレアンとともに観光地となっている。

[高橋 正]

世界遺産の登録

数々の名城が点在する流域が2000年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「シュリー・シュル・ロアールとシャロンヌ間のロアール渓谷」として世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。

[編集部]

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