ローイ

百科事典マイペディア 「ローイ」の意味・わかりやすい解説

ローイ

インド革命家ベンガル生れ。最高位の司祭階級バラモン出身。本名ナレーンドラナート・バッタチャリヤNarendranath Bhattacharya。1900年代初頭の,英国のベンガル分割に反対する民族運動スワラージ・スワデーシー運動の末期から,テロリストとして活躍。第1次大戦の際ドイツから武器を獲得するため出国し,改名した。その後レーニン招待ソ連邦に渡り,コミンテルンのメンバーとして国際共産主義運動の第一線に立つ。1920年の第2回コミンテルン大会では民族解放運動と共産党のかかわりをめぐってレーニンと論争した。1926年末コミンテルン代表として中国に派遣され,中国共産党と国民党左派との同盟維持を図ったが,1927年国民党左右両派が共産主義者の追放を決めるとモスクワに戻った。1928年の第6回大会で除名されインドに帰国,国民会議派に参加した。第2次大戦中は連合国を支持して会議派と対立し,1940年急進民主党を結成。戦後は急進的ヒューマニズムを唱えている。著書に《インドの政治的将来》(1926年)や《回想録》(1964年)がある。

ローイ

インドの宗教改革家,社会運動家。ベーダウパニシャッドなどのインドの伝統宗教思想を研究し,宗教改革運動に着手,1828年ブラフマ・サマージ設立。唯一なるブラフマンへの絶対帰依を主張し,偶像崇拝を排斥した。学校の設立等の教育活動にも努めるとともに,寡婦殉死サティー)等の因習の打破女性解放運動にも努力した。1830年渡英,インドの政治・社会・宗教的独立を主張したが,ブリストルで客死。

ローイ

レーウィとも。ドイツ生れの米国の薬学者。フランクフルト大学に学び,グラーツ,ブリュッセル等の大学教授を経て1940年渡米し,ニューヨーク大学教授。心臓の抑制神経を刺激すると神経末端からアセチルコリンが分泌されることを発見。1936年ノーベル生理医学賞。

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世界大百科事典 第2版 「ローイ」の意味・わかりやすい解説

ローイ【Rām Mohun Roy】

1774‐1833
近代インドの社会運動家。ベンガルの富裕なバラモンの家に誕生(1772年説もある)。前半生はつまびらかでないが,当時の知識人の通例に従い,ペルシア,アラビア両語を学ぶうちに,イスラムの影響を受けた。1804‐14年,東インド会社に勤め,英語を習得し財産を築いた。15年カルカッタに定住,アトミーヤ・サバーを結成して宗教・社会改革運動を開始した。ヒンドゥー教の偶像崇拝を批判,ベーダーンタ学派の唯一無形の神を唱導し,古代インドの哲学書ウパニシャッドを英語とベンガル語に翻訳した。

ローイ【Manabendra Nath Roy】

1887‐1954
インドの革命家。出身はベンガルのバラモン。本名ナレーンドラナート・バッタチャリヤNarendranāth Bhattacharya。スワデーシー運動末期からテロリストとして活躍。第1次大戦に際してドイツからの武器獲得を目的に出国し,改名した。アメリカで社会主義を知り,メキシコ共産党の創設に参加。レーニンの招待でソ連邦に渡ったが,コミンテルン第2回大会(1920)で,ブルジョア民族・民主運動の評価をめぐってレーニンと対立。

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世界大百科事典内のローイの言及

【コミンテルン】より


[植民地・民族問題]
 コミンテルンは,ヨーロッパ中心主義を脱却できなかった第二インターナショナルとは違って,植民地,従属諸国における民族運動のエネルギーを高く評価し,これを先進国における変革に連結する反帝世界革命の構図をえがいていた。植民地・民族問題の核心は,本来ブルジョア民主主義運動である民族解放運動を共産党がどこまで支持すべきかという点にあり,コミンテルン第2回大会でレーニンとインド人共産主義者ローイM.N.Royの論争を呼んだ。論争は,民族解放運動を支持しながら,同時に共産主義者の自主性をあくまで維持するという折衷案に落着した。…

【民族資本】より

… 両大戦間期には,社会主義革命を指向する運動と民族資本の主導する民族主義との関係をめぐる理論領域が複雑にからみあっていた。第2回コミンテルン大会におけるM.N.ローイ(1887‐1954)とレーニンとの対立,トロツキーとスターリンとの対立がこの問題把握の難しさを示している。レーニン,スターリンは民族資本の運動を支援することによって,社会主義的勢力の成熟を期待した。…

【ブラフマ・サマージ】より

…近代インドの宗教・社会改革運動に最も重要な役割を果たした宗教団体。1828年R.M.ローイがカルカッタにブラフマ・サバーを結成した時点をもって,ブラフマ・サマージの創設とみなすのが通説である。唯一・無形・遍在の神を礼拝し,偶像崇拝を排し,普遍的信仰を標榜するブラフマ・サバーの活動は,ローイの渡英(1830年末)以降振るわず,43年タゴールDevendranāth Tagore(1817‐1905)が20名の青年を率いて入門儀礼を受けることによって復活した。…

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