万の文反古(読み)ヨロズノフミホウグ

デジタル大辞泉 「万の文反古」の意味・読み・例文・類語

よろずのふみほうぐ〔よろづのふみホウグ〕【万の文反古】

浮世草子。5巻。井原西鶴作。元禄9年(1696)刊。中・下層町人の生活の一断面を描いた書簡体小説集。

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精選版 日本国語大辞典 「万の文反古」の意味・読み・例文・類語

よろずのふみほうぐよろづのふみホウグ【万の文反古】

  1. 江戸中期の浮世草子。五巻五冊。井原西鶴作。第四遺稿として元祿九年(一六九六)刊。一七章からなる書簡体小説集。その内容は雑多だが、中下層町人のさまざまな生きる姿を浮び上がらせる作品主流を占めている。独立した一つの手紙によって小説的世界を構築するその方法は巧妙で、近世期に多い書簡体小説の中でも、最高の傑作と評される。題簽(だいせん)名は「西鶴文反古」。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「万の文反古」の意味・わかりやすい解説

万の文反古
よろずのふみほうぐ

井原西鶴(さいかく)の浮世草子。1696年(元禄9)1月、西鶴の第四遺稿集として門人北条団水(だんすい)が5巻5冊に編集し、京都・上村平左衛門、大坂・雁金屋庄兵衛(かりがねやしょうべえ)、江戸・万屋(よろずや)清兵衛より刊行。大坂・高津の片辺りで張貫(はりぬき)の女人形をつくる職人が、材料の紙くずのなかからみつけだしたという趣向で、20編の書簡体小説からなる。「おかしき噂(うわさ)、かなしき沙汰(さた)、あるひは(うれ)しきはじめ、栄花(えいが)終り」(序文)のさまざまな手紙であるが、巻1の3や巻2の3のように、窮迫した状況に陥った人間たちの真情を描いた佳作を含む。書簡体を利用して、人の心の奥底を表現しようとした西鶴の新しい試みを示す作品。

浅野 晃]

『神保五彌他校注・訳『日本古典文学全集40 井原西鶴集 3』(1972・小学館)』『麻生磯次・冨士昭雄訳注『対訳西鶴全集15 万の文反古』(1977・明治書院)』


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改訂新版 世界大百科事典 「万の文反古」の意味・わかりやすい解説

万の文反古 (よろずのふみほうぐ)

浮世草子。井原西鶴作。1696年(元禄9)刊。5巻17章。異称《西鶴文反古》。没後3年目に刊行された第四遺稿集であり,執筆は1689年(元禄2)から91年ごろか。それぞれ独立した書簡に短い評文を加えて一通一章とした書簡体短編集。武家,僧,遊女などの異色の書簡もあるが,その大半は中下層町人の現実生活の一状況を書簡という独特で有効な設定によって切り取り,恥多い人間の真実の姿を浮かび上がらせるという巧みな方法が駆使されている。とりわけ〈世帯の大事は正月仕舞〉〈京にも思ふやうなる事なし〉などの数章は,西鶴作品中でも一級の傑作と称するにたる短編である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「万の文反古」の意味・わかりやすい解説

万の文反古
よろずのふみほうぐ

浮世草子。『西鶴文反古』ともいう。井原西鶴作。北条団水編。5巻。元禄9 (1696) 年刊。西鶴没後の刊行で,彼の作以外のものも入っていると思われる。書名は種々の手紙の反古 (ほご) の意。手紙 17通を収め,1通が一つの短編をなす書簡体小説集。人心の機微をつき,書簡体文学の秀作。

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