万力(読み)まんりき

精選版 日本国語大辞典 「万力」の意味・読み・例文・類語

まん‐りき【万力】

〘名〙
人力により綱を巻き上げる大きな轆轤(ろくろ)。重い物を引っぱったり、持ち上げたりする時に用いる。車地(しゃち)
※雑俳・両面鏡(1756)「万力は四五人の声土蔵引」
船具の一つ。一端に鉄の鉤をとりつけた綱。荷物のあげおろしに使用する。鉤の緒(お)。〔和漢船用集(1766)〕
工作物を二個の口金の間にはさんで固定する工具。工作台に取りつけて用いる箱万力、自由に移動して用いる手万力などがある。口金の開閉は多くはねじハンドルで回すことによって行なう。
※青い月曜日(1965‐67)〈開高健〉二「万力に部品をはさんでヤスリを使っていると」
釘抜き。〔和漢三才図会(1712)〕
⑤ 籾(もみ)をこなすのに用いる農具。〔農術鑑正記(1724)〕
⑥ 江戸時代、多く劇場内で売った駄菓子
※洒落本・六丁一里(1782)少年国「うぢやま、まんりきと云菓子、幕のあひだにうる」
⑦ 刑具の一種。〔書言字考節用集(1717)〕

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デジタル大辞泉 「万力」の意味・読み・例文・類語

まん‐りき【万力】

《万人力の意から》
工作物を挟んで締めつけ、固定させる工具。バイス
もみ脱穀に用いる農具。
綱の一端にかぎをつけた船具。荷の上げ下ろしに用いる。鉤の

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「万力」の意味・わかりやすい解説

万力
まんりき

工作物を挟んで固定する装置。バイスviceともいう。板を曲げたり、やすりがけをしたりするときに、作業台に取り付けた万力の口金に挟んで作業をする手作業用として、広く使用されている。また工作機械テーブルに取り付け、機械加工をする材料を固定するのにも用いられる。口金の開閉は、万力についているハンドルでねじを回して行い、口金により工作物を締め付けて固定する。作業台に取り付けて使用する底の平らなものは横万力(箱万力)とよばれる。また下方に長い脚があり、これを作業台の側面に取り付けるものを立て万力といい、小さい部品を手軽に取り付ける小形の万力を手万力という。工作機械で機械加工をするとき、工作物を直接テーブルに固定しないで、万力を機械のテーブルに固定し、これに工作物を固定したほうが、一般的に作業性がよい。この時に用いられる万力をマシンバイスとよび、フライス盤用、平削り盤用などがある。量産用に使われる万力では、口金の開閉は、ハンドルで行わず油圧あるいは圧縮空気を使用して自動的に行われる。

[中山秀太郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「万力」の意味・わかりやすい解説

万力 (まんりき)
vise

バイスともいう。本体の固定口金と,ねじ作用で開閉する可動体の口金との間に,工作物をはさんで固定する作業工具。作業台に取り付けて使うものに,締付力の大きい横万力,大型工作物や鍛造物などの強力作業用の立万力,小物用の取付万力(ベンチバイス)などがある。横万力は,ふつうに万力と呼ばれているもので,角胴形と丸胴形があり,大きさは口金の幅(mm)で呼び,75から25とびに150まである。このほか,作業台に取り付けずに使う手万力,工作物をほかのなにかに固定するために使うしゃこ万力,配管工事のパイプ加工用のパイプ万力などがある。また,工作機械のテーブル上に取り付けて工作物を固定する万力をマシンバイスと呼び,フライス盤用,ボール盤用,立削盤用,平削盤用など種々あり,いずれも口金や底の平面,直角,平行の精度が横万力などよりきびしく製作されている。フライス盤用のミリングバイスには,目盛付き回転台付きのものもある。なお,ろくろや釘抜き,もみをこなすための農具なども万力と呼ばれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「万力」の意味・わかりやすい解説

万力
まんりき
vice; vise

手仕上げ,組立て作業,簡単な鍛造作業をするとき,加工物をくわえて固定する作業工具。用途に応じて種々の形式のものが製作されているが,本体と可動体との間に加工物をはさみ,可動部をねじで直進移動させて,加工物を締めつけ固定する。次のような万力が代表的である。 (1) 取付け万力 本体を作業台の張出し部にねじではさみこんで取付ける形をしており,設置が自由である。 (2) 横万力 角胴型と丸胴型があり,いずれも本体を作業台にねじ止めし,固定して使う。 (3) 立て万力 作業台の端面に沿って取付け,立型として用いる。本体と可動体との開きが平行でない点が他と異なる。 (4) パイプ万力 配管工事の際,V字形の上歯と下歯の間に管をくわえて固定する。作業台にねじ止めして使用する。このほか,フライス盤ボール盤,形削り盤 (→平削り盤 ) などで工作物を押え込むマシンバイスやC字形をした小型で多用途のしゃこ万力など,多くの種類がある。

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百科事典マイペディア 「万力」の意味・わかりやすい解説

万力【まんりき】

バイスとも。手仕上げや組立作業の際に工作物を固定する道具。ねじ作用で開閉する口金によって工作物をつかむ。横万力,立万力,パイプ万力,しゃこ万力等用途に応じた種々の構造のものがある。またフライス盤に工作物を固定するミリングバイスもある。
→関連項目金工具

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