丈六寺(読み)じようろくじ

日本歴史地名大系 「丈六寺」の解説

丈六寺
じようろくじ

[現在地名]徳島市丈六町

勝浦川左岸の丈領じようりようにある。瑞麟山慈雲じうん院と号し、曹洞宗、本尊は丈六の聖観音。当寺に伝わる「丈六観音来歴」によると、白鳳期に天真正覚尼により創建され、その後行基が当地巡錫のとき丈六の観音像を刻んで安置したことから丈六寺の寺名が付いたという。また延享二年(一七四五)成立の「丈六禅刹開山金岡禅師略記」によれば、当寺はもと浄楽寺と号し、行基巡錫の折、密宗尼理春が丈六の観音像を彫刻し本尊としたことから、丈六寺と名付けられたと伝える。しかし本尊の木造聖観音坐像(国指定重要文化財)は平安末期の製作であることが明らかである。当地一帯は平安時代から京都仁和寺領篠原しのはら庄の庄域に含まれていたことから、あるいは当初仁和寺末の真言宗寺院であったものとも考えられる。この密教寺院が院政期に同庄付近に勢力をもっていた平家方の武士田口成良に保護され、本尊も成良が造立して浄土堂に安置した一〇体の丈六仏のうちの一体だとする説もある。その後田口氏の衰退によって当寺は荒廃したものと考えられる。

明応元年(一四九二)阿波国守護細川成之により、荒廃していた当寺が中田ちゆうでん(現小松島市)桂林けいりん寺にいた金岡用兼を開山とし、曹洞宗寺院として再興された(勝浦郡志)。金岡用兼の法嗣である二世月殿昌桂は芥川氏の出身で海部かいふ郡にも曹洞宗の教線を拡大した(徳島県史)。永正六年(一五〇九)一二月六日、細川氏家臣宍草政之から「勝浦庄田浦之内吉田山」の地が四至を明確にして慈雲院(丈六寺)に寄進された(「宍草政之寄進状」丈六寺文書)

丈六寺
じようろくじ

[現在地名]名張市赤目町丈六

旧伊勢街道に沿う丈六集落のなかにあり、真言宗東寺派、本尊釈迦如来、多宝山釈迦院と号する。日光山とも号した(三国地志)。寺名は丈六の仏像を安置したことによると思われる。創建等不詳。寺伝では大宝年間(七〇一―七〇四)名張郡楽恩寺をこの地に移し、大同年間(八〇六―八一〇)に空海が室生むろう(現奈良県宇陀郡室生村)四門の北門の霊地として開創したという。永享一二年(一四四〇)一一月二二日の越智永遠請文・某実顕書状(三国地志)によれば、名張郡の国人衆が丈六寺に集まり東大寺への年貢進納を誓約している。「釈迦涅槃図」(当寺蔵)は裏面の書き入れによれば応永七年(一四〇〇)「河内国交野郡眷 本願主老年願衆」より奉納された。

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百科事典マイペディア 「丈六寺」の意味・わかりやすい解説

丈六寺【じょうろくじ】

徳島市にある曹洞宗の寺。白鳳(はくほう)期創建,行基(ぎょうき)が丈六(じょうろく)の観音像を刻して安置したという。境内から奈良時代の古瓦が出土する。1492年阿波(あわ)国守護細川成之(しげゆき)が金岡用兼(きんこうようけん)を開山に迎え禅宗寺として再興,7堂伽藍を整備。その後細川氏に代わって実権を握った三好氏,次いで長宗我部(ちょうそがべ)氏,江戸時代には徳島藩主蜂須賀(はちすか)氏から保護された。16世紀中ごろ建立の三門,江戸初期再建の観音堂・本堂,本尊の木造聖観音,絹本着色細川成之像は重要文化財。徳雲院(旧衆寮)に長宗我部氏に当寺で謀殺された牛岐城主新開忠之の血痕がついたと伝える血天井が残る。
→関連項目国分寺(徳島)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「丈六寺」の意味・わかりやすい解説

丈六寺
じょうろくじ

徳島市丈六町丈領(じょうりょう)にある曹洞(そうとう)宗の寺。瑞麟山(ずいりんさん)慈雲院(じうんいん)と号する。本尊は聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)。伝承では、672年(天武天皇1)ころ一尼僧が一堂を建て、丈六の聖観音像を安置したのが始まりと伝えられる。古くは浄楽寺といったが、行基により丈六寺と改められたとも伝える。もとは真言宗に属したという。史実として明らかなのは、文正(ぶんしょう)年間(1466~67)細川成之(しげゆき)の再興で、金岡用兼(きんこうようげん)を中興開山として曹洞宗となった。三門、本堂、観音堂、聖観音像、細川成之画像は国重要文化財。そのほか、蜂須賀(はちすか)一門の重臣たちの墓、古文書、歴史考古資料など文化財は多い。

[菅沼 晃]


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デジタル大辞泉プラス 「丈六寺」の解説

丈六寺

徳島県徳島市丈六町にある曹洞宗の寺院。山号は瑞麟山、院号は慈雲院。室町時代に建造された三門(国の重要文化財)など、多くの文化財を所有。

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