三井高平(読み)みつい・たかひら

朝日日本歴史人物事典 「三井高平」の解説

三井高平

没年:元文2.閏11.27(1738.1.17)
生年承応2.4.27(1653.5.24)
江戸前期の豪商三井家の家祖三井高利長男。母は寿讃。伊勢国(三重県)松坂生まれ。法号宗竺。父高利は江戸本町4丁目にある長兄三井三郎左衛門俊次の呉服店で支配人として働いて大いに伸長させ,競争相手となることを恐れた俊次から母殊法の世話をするという名目で松坂に戻された。しかし,高平は寛文7(1667)年に俊次の店に勤務。同10年ごろに三井八郎右衛門を名乗った。江戸に呉服店を開くという高利の願望を実現するために準備に当たり,延宝1(1673)年の俊次の死亡を好機として江戸本町1丁目に呉服店を,京都室町通りに仕入れ店を開くと,高平は京都で呉服物の仕入れに当たった。幕府の呉服御用や御為替御用を引き受けて,三井家経営の基礎を築き,実質的に三井家の事業を統轄していた。元禄7(1694)年に高利が認めた遺書では,8人の子供たちと2人の取り立ての者への財産の配分比率を定めているが,高平は4割1分と際立っていた。しかし三井家の事業は高平の兄弟たちが共同して築き上げたもので,事実上の共有財産となっていたため,兄弟たちは財産不分割の誓約の一札を高利に出している。高平は,高利亡きあとは家長として家産共有制を維持して,大元方制度を創設し,享保7(1722)年には自ら『宗竺遺書』を認めて本家6家,連家3家の同族組織を確定し,賄料以下同族の生活の基準を定めるとともに,同族の守るべき規範を定めてそれを三井家の家法とした。<参考文献>三井文庫編『三井事業史』本編1巻

(賀川隆行)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三井高平」の意味・わかりやすい解説

三井高平
みついたかひら
(1653―1737)

江戸中期の商人。高利(たかとし)の長男。惣領(そうりょう)家第2代。伊勢(いせ)松坂(三重県松阪市)生まれ。幼名長四郎、通称八郎右衛門のち八郎兵衛、剃髪(ていはつ)して宗竺(そうちく)。兄弟の中心となって父の創業を助け、とくに京都での呉服仕入れを主管。父の没後は親分として一家の統轄にあたり、とくに家政・経営両面にわたる組織・制度を整備して、元禄(げんろく)(1688~1704)の経済発展から享保(きょうほう)(1716~36)の低成長への時代の転換によく即応し、三井家永続の基礎を固めた。とくに家政と経営を一元的に統御する「大元方(おおもとかた)」の創立(1710)、同族の共有財産制とその内実を定めた家法「宗竺遺書」(1722)は永く一家に守られ続けた。ほかに、両親を中心にした家譜『家伝記』があり、三井高房の『町人考見録』も高平の原作になる。元文(げんぶん)2年閏(うるう)11月27日85歳で没。法名鶴操院林山宗竺居士。墓所は洛東(らくとう)真如堂(しんにょどう)。

[三井礼子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三井高平」の意味・わかりやすい解説

三井高平
みついたかひら

[生]承応2(1653).4.27. 松坂
[没]元文2(1737).閏11.27.
江戸時代中期の豪商。富豪三井家の始祖高利の長男。幼名,長四郎。三井総領家2代八郎右衛門。法名,宗竺。父を助けて越後屋呉服店を創業 (→越後屋 ) ,京都に本拠をおいて仕入れにあたったが,のち江戸幕府の呉服御用達となった。父の死後は兄弟を指導し,大元方という事業統轄機関を設け,また元禄 14 (1701) 年長男高房に家督を譲って隠居してのち,家憲『宗竺遺書』 (1722) を定めた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三井高平」の解説

三井高平 みつい-たかひら

1653-1738* 江戸時代前期-中期の豪商。
承応(じょうおう)2年4月27日生まれ。三井高利の長男。三井総領家2代。父の呉服店創業をたすけ,京都で仕入れにあたる。宝永7年事業の統合機関として大元方(おおもとかた)を創設,享保(きょうほう)7年家憲「宗竺(そうちく)遺書」を制定。同族をまとめ,三井家の基盤をかためた。元文2年閏(うるう)11月27日死去。85歳。伊勢(いせ)(三重県)出身。通称は八郎右衛門(初代)。法名は宗竺。

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367日誕生日大事典 「三井高平」の解説

三井高平 (みついたかひら)

生年月日:1653年4月27日
江戸時代前期;中期の豪商
1738年没

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