三井高福(読み)みついたかよし

改訂新版 世界大百科事典 「三井高福」の意味・わかりやすい解説

三井高福 (みついたかよし)
生没年:1808-85(文化5-明治18)

幕末維新期に三井総領家の当主として活躍した商人実業家。第13代三井八郎右衛門。高就(たかなり)の子として京都に生まれる。幼時から江戸,上方を中心に御用商人三井の家業呉服,両替等全般にわたり修業をつみ,家督相続直後の1837年(天保8)三井家全体を代表する八郎右衛門を襲名した。以後三井の経営は幕末の激動のなかで貸金の焦付きや呉服商売の行詰り,過重な御用金賦課などで極度に悪化し,明治維新にいたった。王政復古大号令の直後,高福の統率下で三井は小野,島田らとともに新政府金穀出納所御用達を拝命し,以後,会計局御為換方や外国人貿易商社取締総頭取,通商司為替会社幷御貸付方総頭取,開墾会社総頭取,開拓御用掛総頭取等に就任して初期明治政府の中枢と結ぶ政商になり,三井財閥の基盤を築いた。やがて76年三井銀行三井物産を発足させるが,同時に家政の近代化にも努めた。78年長男高朗(たかあき)に家督八郎右衛門名(第14代)を譲る。
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朝日日本歴史人物事典 「三井高福」の解説

三井高福

没年:明治18.12.20(1885)
生年:文化5.9.26(1808.11.14)
江戸時代の豪商三井家惣領家の8代目。高就の子。母は列。天保8(1837)年に13代八郎右衛門を襲名した。嘉永2(1849)年に2連家を同族から切り離すなど天保期以降の経営難の時期に家政の改革に取り組んだ。横浜が開港されると外国方御金御用達を引き受け,横浜店を開くなど新事業に積極的に進出しようとしたが,幕末期には横浜店の欠損幕府の御用金によって苦境に追い込まれた。しかし,政局行方を見極めて鳥羽・伏見戦争が起こるや朝廷側に献金して討幕派への加担をいちはやく鮮明にした。明治維新後は御東幸金穀出納取締や為替会社総頭取を務めるなど政府との結びつきを強め,明治9(1876)年に設立された三井銀行の初代総長となっている。三野村利左衛門を抜擢して重く用いたところにその包容力のある人柄が表れている。<参考文献>三井文庫編『三井事業史』本編1巻,2巻

(賀川隆行)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三井高福」の意味・わかりやすい解説

三井高福
みついたかよし

[生]文化5(1808).9.26. 京都
[没]1885.12.20. 京都
幕末~明治の事業家。三井高就の長男。三井総領家8代目。八郎右衛門。天保3 (1832) 年三井総領家の家督を継ぐ。幕末に早くから勤王派を支持し王政復古,鳥羽・伏見の戦い以後も財政的に勤王派を援助し,明治維新後も新政府の財政に大きく寄与した。三井銀行,三井物産を創立し,三井財閥の基礎を築くなど三井家の発展に貢献。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三井高福」の解説

三井高福 みつい-たかよし

1808-1885 江戸後期-明治時代の実業家。
文化5年9月26日生まれ。三井総領家8代。天保(てんぽう)8年13代八郎右衛門を襲名。同族を統率し,幕末の経営不振と維新の政局に対処。王政復古に際していち早く朝廷方に献金し,新政府の政商となる。明治9年三井銀行,三井物産を創業,三井財閥の基礎をきずいた。明治18年12月20日死去。78歳。京都出身。

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367日誕生日大事典 「三井高福」の解説

三井 高福 (みつい たかよし)

生年月日:1808年9月26日
江戸時代;明治時代の実業家。第一国立銀行頭取
1885年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の三井高福の言及

【三井財閥】より

…1867年(慶応3)に始まる明治維新期にいち早く新政府の御為替方に出仕した三井は,政府の財政・金融部門と結びつく新たな特権商人=政商へ転態した。この間,三井高福の統率下で番頭三野村利左衛門らの働きにより76年三井銀行,三井物産を発足させるなど,政府との結びつきをしだいに薄める方向で,急速な資本主義化に対応した事業・家政の近代化をはかった。やがて88年の官営三池炭鉱の払下げや鐘淵紡績,王子製紙,芝浦製作所(東芝),富岡製糸場など産業への投資を拡大し,政商から財閥への脱皮が進んだ。…

※「三井高福」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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