三宅艮斎(読み)ミヤケゴンサイ

デジタル大辞泉 「三宅艮斎」の意味・読み・例文・類語

みやけ‐ごんさい【三宅艮斎】

[1817~1868]江戸末期の蘭方医肥前の人。名はおんあざな子厚しこう。号は桃樹園。楢林栄建ならばやしえいけんに師事し、蘭方医学を学ぶ。佐倉藩医。外科術と包帯術に長じ、医療機器の製作貢献。神田お玉ヶ池種痘所開設にも尽力した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三宅艮斎」の意味・わかりやすい解説

三宅艮斎
みやけごんさい
(1817―1868)

幕末の蘭方(らんぽう)医。肥前国(長崎県)の医家に生まれた。名は温(おん)、字(あざな)は子厚(しこう)、桃樹園と号す。1830年(天保1)父の没後長崎に移り、楢林栄建(ならばやしえいけん)について蘭方医学を修め、その間江戸から遊学佐藤泰然林洞海(どうかい)らと親交を深め、相連れて1838年江戸に出て、薬研堀(やげんぼり)に数年間開業、下総(しもうさ)国(千葉県)銚子(ちょうし)に移り、1844年(弘化1)佐倉藩医となり、藩主の一女徳姫(とくひめ)の驚風(きょうふう)症の治療、藩主堀田侯の陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)の手術を行い、一時、藩の別封出羽(でわ)国(山形県)柏倉(かしわぐら)に赴任し、余暇に天産鉱物の調査にあたっている。1848年(嘉永1)江戸に出て開業、江戸お玉が池種痘所の設立(1858)に尽力、同所の後身である幕府医学所教授(1863)となり外科術・包帯術を教え、国防に対処する医学の革新を唱え、外科器機類の製作に熱意を示した。新着のイギリスの医師ホブソンの中国訳書をいち早く翻刻出版した。日本最初の医学博士一人である三宅秀(ひいず)(1848―1938)はその長男。

[宗田 一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三宅艮斎」の意味・わかりやすい解説

三宅艮斎
みやけごんさい

[生]文化14(1817).肥前
[没]慶応4(1868).7.3. 江戸
江戸時代末期の医家。名は英庵,号が桃樹園。 14歳のとき長崎に出て蘭方医楢林栄建について医学を学び,天保9 (1838) 年佐藤泰然に従って江戸に出て開業し,同 12年銚子に移って開業。同 15年佐倉藩堀田侯の侍医となる。嘉永2 (49) 年江戸で日本初めての睾丸摘出手術をするなど西洋外科医術にすぐれ,また外科機器や薬品類に精通していた。安政5 (58) 年お玉ヶ池種痘所設立に尽し,ホブソンの『全体新論』『西医略論』『内科新説』などを翻刻した。なお長男秀は東京大学医学部の最初の名誉教授となった。さらに孫の鉱一,曾孫の仁も同じく名誉教授となった。

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朝日日本歴史人物事典 「三宅艮斎」の解説

三宅艮斎

没年:明治1.7.3(1868.8.20)
生年:文化14(1817)
江戸後期の外科医。肥前国島原(長崎県)の医家の4男。天保1(1830)年長崎に行き,楢林栄建に蘭方外科を学ぶ。佐藤泰然と親交を結び,その後も江戸,佐倉で泰然から厚遇され,弘化1(1844)年佐倉藩医となる。安政5(1858)年神田お玉ケ池の種痘所設立にも協力。文久1(1861)年同所が西洋医学所と改称後は外科手術,繃帯学を教授した。高島秋帆,中浜万次郎と交わり,長男秀を米人宣教師ヘボンの門下に入れ,さらに米国の医薬を入手し,英医ホブソンの『西医略論』などを翻刻出版。蘭学よりむしろ英米医学に興味を示し,本草,兵学の造詣も深く,時代に先駆けた一般科学のディレッタントであった。<参考文献>三浦義彰『文久航海記』

(三浦義彰)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三宅艮斎」の解説

三宅艮斎 みやけ-ごんさい

1817-1868 江戸時代後期の蘭方医。
文化14年生まれ。三宅秀(ひいず)の父。長崎で楢林栄建にまなぶ。下総(しもうさ)佐倉藩(千葉県)の藩医。安政5年(1858)江戸神田お玉ケ池種痘所の頭取,のち西洋医学所への改組で教授となる。漢訳洋書「西医略論」などを翻刻した。慶応4年7月3日死去。52歳。肥前島原(長崎県)出身。名は温。字(あざな)は子厚。別号に桃樹園。

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