三徳山(読み)ミトクサン

デジタル大辞泉 「三徳山」の意味・読み・例文・類語

みとく‐さん【三徳山】

鳥取県中央部、東伯とうはく三朝みささ町にある山。標高900メートル。古くから霊山として信仰され、山全体が名勝・史跡になっている。北麓には約1300年前にえん行者ぎょうじゃの開基になるといわれる天台宗三仏さんぶつがあり、断崖絶壁の窪みに建てられた奥の院投入なげいれ堂は国宝に指定されている。かつては「美徳山」とも書いた。

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日本歴史地名大系 「三徳山」の解説

三徳山
みとくさん

三朝町東部、北側の三徳川と南の小鹿おしか川に挟まれ、標高八九九・七メートル。新生代鮮新世頃噴出した安山岩類よりなる溶岩円頂丘で、安山岩類が基盤の花崗岩およびその上層の凝灰岩を貫いて噴出している。したがって北側の三仏さんぶつ寺の奥院である投入なげいれ堂付近の標高約六〇〇メートルまでは凝灰岩類、その上層は安山岩類で構成される。岩石類は浸食され、急崖や洞窟群をつくり出している。古くから三徳山全体が山岳信仰の対象とされ、修験場・天台密教の道場として知られた。江戸時代までは美徳山と記されることが多く、大山、船上せんじよう(現赤碕町)とともに伯耆三嶺と称された(伯耆民談記)三仏寺境内を中心に約二五九ヘクタールが国指定名勝および史跡。植林杉の老成林を交えた照葉樹林・落葉樹林帯など植生も多様で、四季折々美しい景観を呈し、昭和六二年(一九八七)には全国森林浴百選に選ばれた。当山特有のミトクナデシコや、中国地方では珍しく標高三〇〇―四〇〇メートルの低い地帯にブナ林が分布し、植物学的にも貴重とされる。「伯耆民談記」には土産として三徳山の石南花をあげている。

〔三徳山信仰〕

「伯耆民談記」によれば、慶雲三年(七〇六)に役優婆塞(役小角)が新たに神窟を開き、子守・勝手・蔵王権現を安置したとされ、修験道との関連を語る開創説話を伝える。この三所権現は「一体分身、同体異名」といわれ、一体の神と考えられていた。嘉祥二年(八四九)慈覚大師(円珍)が神勅により刹柱を建て、釈迦・弥陀・大日の三仏を安置、浄土院美徳山三仏寺と号したと伝えている(同書)。当山の信仰は、自然崇拝に始まり、大和大峰おおみね山・金峯きんぷ山の修験者と結び付いて蔵王・子守・勝手権現を祀る修験道の山となったとみられ、「金峯山雑記」では「無量光仏の浄土」とされている。その後天台密教と結び付いて本山派の修験の山となったものであろう。当山はおもに修験者の行場として全国から信仰を集め、江戸時代中期以降それを背景として三仏寺が創建された。なお円仁が堂宇を建立したという所伝の背景には、伯耆国衙にかかわる天台系の僧の活動も考えられよう。

〔中世〕

「玉葉」寿永三年(一一八四)二月二日条によると「美徳山」にいた後白河院の子と称する二〇歳の人物が、伯耆半国と美作国の一部を占領しており、使者を京都へ派遣したところ院から源氏とともに平氏を追討せよとの命をうけたという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三徳山」の意味・わかりやすい解説

三徳山
みとくさん

鳥取県中央部、東伯(とうはく)郡三朝(みささ)町にある山。標高900メートル。天台宗三徳山三仏(さんぶつ)寺があることで知られ、国の名勝・史跡に指定されている。原形は角礫(かくれき)凝灰岩の基盤を破って噴出した鐘状火山で、硬軟を異にする上下両層の接触部にできた洞窟(どうくつ)内に国宝建造物三仏寺奥院(投入堂(なげいれどう))がある。標高350メートル以高では落葉広葉樹やスギの原生林がみられ、ブナ帯の下限は低い。山の北側を三徳川、南側を小鹿(おしか)川が渓谷をなして流れる。

 三仏寺は849年(嘉祥2)慈覚大師円仁(えんにん)が阿弥陀(あみだ)、釈迦(しゃか)、大日(だいにち)の3仏を安置したのが寺名のおこりと伝えられるが、寺宝のうちでは、銅鏡(国指定重要文化財)に長徳(ちょうとく)3年(997)と銘のあるのが最古である。大山(だいせん)と並ぶ山岳修験(しゅげん)道場として知られ、山内には奥院のほか、文殊堂、地蔵堂などの堂舎があり、国指定重要文化財の数も山陰屈指である。

[岩永 實]

『鳥取県立博物館編・刊『三徳山とその周辺』(『鳥取県の自然と歴史4』1982)』


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国指定史跡ガイド 「三徳山」の解説

みとくさん【三徳山】


鳥取県東伯郡三朝町三徳と鳥取市との境にある山。三徳山は、三徳山安山岩類と呼ばれる溶岩と安山岩質凝灰角礫(かくれき)岩からなり、標高は約900m。浸食によって洞窟や奇岩、絶壁、滝などの奇勝が形成され、山麓から山頂部まで連続する自然林は手つかずの状態で保全されている。一方、山岳仏教の霊場として知られ、伝承によると、706年(慶雲3)に役行者(えんのぎょうじゃ)が修験場として開き、849年(嘉祥2)に天台座主の慈覚円仁(じかくえんにん)が三仏寺(さんぶつじ)を建て、釈迦、阿弥陀、大日の三仏を安置したという。麓には三仏寺の本堂などが、山腹には文殊堂や地蔵堂、納経堂、投入堂(なげいれどう)など、重要文化財や国宝の建造物がある。とくに標高約500mのところにある国宝の投入堂は平安時代に再建されたもので、断崖絶壁にできた岩窟にはめ込むように建てられている。1934年(昭和9)に、周辺を含む240haが山岳仏教遺跡として国の史跡および名勝に指定された。JR山陰本線倉吉駅から日ノ丸バス「三徳山参道入口」下車。

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改訂新版 世界大百科事典 「三徳山」の意味・わかりやすい解説

三徳山 (みとくさん)

鳥取県中部,東伯郡三朝(みささ)町にある山。標高900m。山頂はややなだらかであるが,集塊岩や安山岩からなる山腹斜面は著しく急なこう配をもち,とくに安山岩の溶岩の露出する部分では急崖となる。斜面はブナ,カシなどの原生林で鬱蒼(うつそう)とした植生がみられる。霊山として古くから信仰され,山岳仏教の中心となり,三仏(さんぶつ)寺が建立された。
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百科事典マイペディア 「三徳山」の意味・わかりやすい解説

三徳山【みとくさん】

鳥取県中部,三朝(みささ)町東部にある溶岩円頂丘で標高900m,奇岩怪石が多い。役の行者が修験道場を開いたと伝え,山麓の三仏寺には藤原期の奥の院(投入堂)のほか,室町期の文殊堂,地蔵堂,納経堂などがある。2014年には山域の一部が大山隠岐国立公園に追加で指定された。
→関連項目三朝[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三徳山」の意味・わかりやすい解説

三徳山
みとくさん

鳥取県中部,三朝町にある山。標高 900m。安山岩質溶岩と集塊岩から成り,浸食の抵抗差によって急崖,洞窟などの奇勝が形成され,その洞内に古代建築の様式を残す三仏寺の国宝投入堂が奇観をみせている。修験道によって開かれた山岳仏教の聖地で,三仏寺は文殊堂,地蔵堂,納経堂などの重要文化財,十一面観音などのすぐれた彫刻を保存している。山全体が名勝・史跡に指定。三朝東郷湖県立自然公園に属する。

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事典・日本の観光資源 「三徳山」の解説

三徳山

(鳥取県東伯郡三朝町)
美しい日本の歴史的風土100選」指定の観光名所。

三徳山

(鳥取県東伯郡三朝町)
森林浴の森100選」指定の観光名所。

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