「伯耆民談記」によれば、慶雲三年(七〇六)役小角が子守・勝手・蔵王権現を安置して三徳山を開いたと伝え、嘉祥二年(八四九)円珍が刹柱を建て、釈迦・阿弥陀・大日の三仏を安置して浄土院美徳山三仏寺と号したのに始まるという。三仏寺の寺号が史料に表れるのは江戸時代中期以降で、それ以前はたんに三徳山・美徳山とみえるほかは各院名などで表れる。慶長四年(一五九九)三徳山惣中に対し一〇〇石が寄進され、寛永一〇年(一六三三)鳥取藩からも同高が安堵され、幕末に至った(→三徳山)。天保五年(一八三四)の寺社領帳(藩史)にも寺領一〇〇石とある。慶安二年(一六四九)
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
鳥取県東伯(とうはく)郡三朝(みささ)町三徳(みとく)にある天台宗の寺。三徳山浄土院(じょうどいん)と号する。本尊は釈迦(しゃか)・阿弥陀(あみだ)・大日如来(だいにちにょらい)の3仏。706年(慶雲3)役小角(えんのおづぬ)(役行者(えんのぎょうじゃ))が修験道(しゅげんどう)の行場として開いたと伝えられ、849年(嘉祥2)慈覚(じかく)大師円仁(えんにん)が再興して、3仏を安置したのが寺名の由来である。大山(だいせん)と並んでこの地方の古代中世における山岳仏教の一大霊地であり、地方豪族の信仰を集めて発展し、古代盛時には堂舎41、坊舎3000軒、寺領1万町歩(9920ヘクタール)と伝えられている。源平の戦い、南北朝の内乱、戦国時代の兵火などで興亡を繰り返し、歴史を物語る史料も焼失してしまったが、険しい崖(がけ)の岩窟(がんくつ)に懸造(かけづくり)で建てられた奥の院(投入堂(なげいれどう)、国宝)は、役行者が投げ入れたと伝えられる縁起にふさわしく、三徳山の象徴的な建物である。投入堂本尊の蔵王権現(ざおうごんげん)立像の胎内文書に仁安(にんあん)3年(1168)の造立願文があり、この種の最古の木像として他の6体の立像とあわせて国の重要文化財となっている。奥の院投入堂付愛染(あいぜん)堂1棟、棟札1枚、古材43点は国宝に、納経(のうきょう)堂、文殊(もんじゅ)堂、地蔵(じぞう)堂、木像十一面観音像、長徳(ちょうとく)3年(997)銘の銅鏡は国の重要文化財に指定されている。また三徳山全体が山岳仏教の遺跡として国の史跡・名勝に指定されている。伯耆(ほうき)西国三十三番霊場の第29番札所。
[中山清田]
『鳥取県立博物館編・刊『三徳山とその周辺』(『鳥取県の自然と歴史4』1982)』
鳥取県東伯郡三朝町にある天台宗の寺。三徳山と号する。706年(慶雲3)役小角(えんのおづぬ)が白雲に乗って飛来し,神窟を開いてみずから建物を投げ入れたことが開基と伝える。849年(嘉祥2)慈覚大師円仁が再興して釈迦,阿弥陀,大日の3仏を安置し,〈浄土院美徳山三仏寺〉と号した。奥院(国宝)は山腹の岩窟内に建つ小規模な建築で,床下は長大な柱で支えられたいわゆる懸造をなしており,〈投入堂〉とも称される。全体に木割が細く,大きく面をとった柱や垂木,高低の変化をつけたひさし屋根,軽やかに反り上がる軒などの構成は優美で,平安時代の特徴を示したすぐれた遺構であり,かつ山陰地方最古の建築としても貴重である。接属する愛染堂も投入堂と同時期と考えられている。他に建築では納経堂(鎌倉期),地蔵堂(室町期),文殊堂(1580),彫刻では蔵王権現立像(1168),聖観音立像,工芸では銅鏡(997)があり,いずれも重要文化財。なお大山とともに古代以来の修験道の霊場として栄え,山自体が山岳仏教の道場として,国の名勝および史跡に指定されている。
執筆者:谷 直樹
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鳥取県三朝(みささ)町にある天台宗の寺。706年(慶雲3)役小角(えんのおづの)が神窟を開いて建物を投げ入れて創建し(投入堂),9世紀半ばに円仁が釈迦・阿弥陀・大日如来の3尊を安置して再興したと伝える。平安末期には3000の坊をもち,多くの僧を擁したという。江戸初期まで大山(だいせん)寺の支配下にあり,古くからの霊場として信仰を集めた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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