上野盆地(読み)ウエノボンチ

デジタル大辞泉 「上野盆地」の意味・読み・例文・類語

うえの‐ぼんち〔うへの‐〕【上野盆地】

三重県西部の盆地。東は布引山地、西は大和高原、南は高見山地に囲まれ、中心伊賀市伊賀米伊賀焼を産する。伊賀盆地

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改訂新版 世界大百科事典 「上野盆地」の意味・わかりやすい解説

上野盆地 (うえのぼんち)

三重県西部の小盆地で伊賀盆地ともいう。東は布引山地,西は大和高原,北は水口丘陵,信楽(しがらき)高原,南は室生火山群によって囲まれている。第三紀末から第四紀洪積世にかけては,いわゆる古琵琶湖の一部であったが,その後の地盤変化で生じた木津川断層によって排水され陸化が進んだ。盆地内は木津川,服部川,柘植(つげ)川流域の北部平地(狭義の上野盆地)と名張川,宇陀川流域の南部小平地(名張盆地)に分けられる。気候は内陸的で寒暑の差が大きく,降水量は県下で最も少ない。盆地の範囲に一致する伊賀国古代から宇陀川,木津川の通谷によって大和との関係が強く,中世にも東大寺の荘園が大きな面積を占めた。近世に津藩藤堂氏領となったため三重県に属するが,現在でも経済的には西側大阪との関係が強い。伊賀,名張の2市を含み,中心の上野には古代の伊賀国府(西条に比定)や国分寺,近世には藤堂氏の支城が置かれた。1897年に北部を現JR関西本線が,1930年に南部を現近鉄大阪線が横断したが,産業の発達は遅れ,製糸,和傘,組紐,酒造と古琵琶湖層群の粘土を原料とした窯業などの在来工業が存在するにすぎなかった。第2次世界大戦中から近代工業の進出が始まり,名阪国道開通(1965)や国道165号線の改修がそれに拍車をかけている。また名張を中心とする丘陵地住宅団地開発が相つぎ,大阪への通勤者が急増している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「上野盆地」の意味・わかりやすい解説

上野盆地
うえのぼんち

三重県中西部にある盆地。伊賀盆地(いがぼんち)ともいう。地溝性構造盆地で盆地底高度は約130メートル。東の布引(ぬのびき)山地、南の高見(たかみ)山地が700~800メートルの高峻(こうしゅん)な障壁となって伊勢(いせ)平野とくぎるが、西はやや低い笠置(かさぎ)山地、北東部はさらに緩やかな水口(みなくち)丘陵を隔てて近江(おうみ)盆地に続く。第三紀末から更新世(洪積世)にかけて盆地の大部分が古琵琶(びわ)湖とよばれる湖の湖底にあった。とくに南部ほど古く、名張(なばり)市付近から北の丘陵に古琵琶湖層群最下部の伊賀累層が広く分布する。盆地内は小断層によって、旧上野市付近(現、伊賀市の中心部)の狭義の上野盆地のほか名張盆地、大山田盆地、阿山(あやま)盆地などにくぎられるが、すべて木津川(きづがわ)流域に属する。伊賀、名張の2市があり、JR関西本線、近畿日本鉄道大阪線、名阪国道が盆地を横断し、伊賀鉄道伊賀線が縦断している。

[伊藤達雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上野盆地」の意味・わかりやすい解説

上野盆地
うえのぼんち

三重県西部の地溝性構造の盆地。伊賀盆地ともいう。東は布引山地,西は笠置山地,南は高見山地に挟まれ,北は低い水口丘陵を隔てて近江盆地に続く。地質時代は古琵琶湖の一部で,古琵琶湖層群の地層が発達。盆地底は良質の水田地帯で伊賀米の産地。古代から開発され,条里制の遺構も明瞭に残る。また東大寺の広い荘園があったことは有名。中心都市は伊賀市名張市。 1965年名阪国道 (国道 25号線) が通じて以来,工業化が進んだ。

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百科事典マイペディア 「上野盆地」の意味・わかりやすい解説

上野盆地【うえのぼんち】

三重県中北部にある地溝盆地。伊賀盆地とも。面積約770km2で,小丘陵によって幾つかの小盆地に分かれる。主部は第四系,第三系からなる約60km2の盆地で,上野市街が発達する。米・野菜栽培,乳牛飼育が行われる。
→関連項目名張[市]三重[県]

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世界大百科事典(旧版)内の上野盆地の言及

【三重[県]】より


[地域差の大きい自然と農林水産業]
 県央の櫛田川の渓谷に沿って中央構造線が東西に走る。北部の西南日本内帯はなだらかな地形の伊勢平野上野盆地(伊賀盆地),南部の外帯は急峻な山地が海岸近くまでせまり,志摩半島と東紀州のリアス海岸が続いている。北部では鈴鹿山脈および布引・高見両山地が分水嶺をなす。…

※「上野盆地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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