滋賀県の中央部を占め,東縁を伊吹山地と鈴鹿山脈,西縁を比良(ひら)山地に囲まれ,中央に琵琶湖をたたえる断層盆地。北部は姉川の沖積平野が広い面積を占め,開発の歴史が古く,石器時代の遺跡や式内社の数が多い。北部は冬季の積雪が多く,農業は米作が主で,JR北陸本線,国道8号線,北陸自動車道が通じ,生活,経済の面で北陸地方との関係が濃密である。なお条里地割と畦畔木のみられる湖北独特の水田景観は最近の大規模圃場整備によってほとんど消滅した。東部は愛知(えち)川はじめ日野川,犬上川などの堆積作用によって広い湖東平野を形成している。農業は米作が中心で,蒲生野には,布施溜をはじめ古代に起源する溜池が多い。文化財も豊富で,西明寺,金剛輪寺,百済(ひやくさい)寺の湖東三山,安土城跡(特史),観音寺城跡などが名を知られている。また湖東平野の農村は多数の近江商人を送り出しており,現在も近江八幡市,東近江市の旧五個荘町,蒲生郡日野町などに豪壮な邸宅が残っている。南部は野洲(やす)川のつくった沖積平野が広がり,米作のほか,草津市では花卉,甲賀地方では茶の栽培が盛んであるが,京阪神の大都市圏に含まれているため,専業農家は極端に少なく,第2種兼業農家が多い。県庁所在地の大津市はじめ,草津市,守山市など東海道本線沿いの各都市は京都,大阪のベッドタウン化がすすみ,最近急速に人口が増加している。また名神高速道路の栗東(りつとう)インターチェンジ付近は内陸工業地域として活況を呈している。南部は比叡山の延暦寺,坂本の日吉大社,大津京跡,園城(おんじよう)寺(通称,三井寺)など文化財や史跡に恵まれており,大津港からは琵琶湖の遊覧船が発着し,湖国観光の中心地になっている。西部は安曇(あど)川の三角州以外に広い平野がなく,比良山地が琵琶湖岸に迫っており,わずかに急な扇状地がみられるだけで,河川の多くは天井川になっている。湖西は湖北と同様,冬季の積雪が多いためスキー場に恵まれており,このほか安曇川下流地域では農閑期の副業としてはじめられた扇骨製造や織物工業などの地場産業が盛んである。1964年に琵琶湖大橋が完成して以来,湖東と湖西の連絡が容易になった。最近,湖北の過疎現象に対して,湖南は人口増加が激しく,南北の人口のアンバランスが顕著になりつつある。
執筆者:井戸 庄三
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近畿地方の中央低地帯北部を占める盆地。ほぼ全域が滋賀県に属する。中央部には日本最大の琵琶湖(びわこ)がある。新生代第三紀末に生じた瀬戸内陥没地帯の延長部にあたり、京都盆地や奈良盆地と同じ地溝性の盆地である。したがって比良(ひら)山地や鈴鹿(すずか)山地などの地塁性の山地によって囲まれている。これらの地塁山地は一般に秩父中・古生層からなっているが、中生代のものはなく、新生代第三紀、第四紀の堆積岩(たいせきがん)や変成岩からなる。伊吹(いぶき)、鈴鹿両山系北部は石灰岩や白雲岩が卓越しカルスト地形がみられる。湖西、湖南の比良、比叡(ひえい)、信楽(しがらき)山地は花崗岩(かこうがん)が露出し、バッドランドが多い。また西側は急崖(きゅうがい)で、東西の山地は非対称的。これらの山麓(さんろく)には洪積層の古琵琶湖層群が堆積して丘陵を形成し、さらにその前面には河川によって形成された扇状地、沖積平野、三角州などが湖岸に向かって広がっている。
[高橋誠一]
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