日本大百科全書(ニッポニカ) 「下甑」の意味・わかりやすい解説
下甑
しもこしき
鹿児島県薩摩郡(さつまぐん)にあった旧村名(下甑村(そん))。現在は薩摩川内(せんだい)市の西部を占める一地区。2004年(平成16)川内市、樋脇(ひわき)町、入来(いりき)町、東郷(とうごう)町、祁答院(けどういん)町、里(さと)村、上甑(かみこしき)村、鹿島(かしま)村と合併、薩摩川内市となる。旧村域は、東シナ海上に浮かぶ甑島(こしきじま)列島最南端にあり、下甑島の大半を占める。急傾斜のまま海に接し、平地に乏しい。手打(てうち)地区にはトンボロ(陸繋砂州(りくけいさす))がみられ、この上に集落が形成されている。本土の串木野(くしきの)港と結ぶ定期船が、手打と長浜に寄航する。段々畑で米、いも類、カノコユリの球根なども栽培されてきたが、主産業は水産業。好漁場を生かした定置網、一本釣りなど沿岸漁業も行われ、釣り客や海水浴客も多い。手打の武家屋敷跡、瀬々野浦断崖(せせのうらだんがい)などは観光名所となっている。ヘゴ自生北限地帯として、瀬尾の自生ヘゴは国の天然記念物に指定されている。大晦日(おおみそか)の夜に行われる伝統行事「甑島のトシドン」は国指定重要無形民俗文化財。
[田島康弘]
なお「甑島のトシドン」は、2009年(平成21)に単独でユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されたが、2018年には全国の来訪神行事10件をまとめた「来訪神:仮面・仮装の神々」に拡張され、その一つとして改めて登録されている。
[編集部 2019年3月20日]
『『下甑村郷土誌』(1977・下甑村)』