下臈(読み)げろう

精選版 日本国語大辞典 「下臈」の意味・読み・例文・類語

げ‐ろう‥ラフ【下臈】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。夏臈(げろう)の数の少ない僧。僧になってまだ年数、修行の浅い者。⇔上臈
    1. [初出の実例]「今昔、比叡の山の西塔に延昌僧正と云ける人の、未だ下臈にて修行しける時に」(出典:今昔物語集(1120頃か)一五)
  3. 官位下級な者。序列の低い者。⇔上臈
    1. [初出の実例]「御兄人(せうと)堀河の大臣、太郎国経の大納言、まだ下らふにて内へまゐり給ふに」(出典:伊勢物語(10C前)六)
  4. げろうにょうぼう(下臈女房)」の略。
    1. [初出の実例]「殿の大納言、五節出させ給。皇后宮の女房、中臈・下臈の汚げなきどもを出させ給」(出典:栄花物語(1028‐92頃)根合)
  5. 人に使われる身分のいやしい者。下賤の者。下人(げにん)。転じて、人をののしっていうのにも用いる。→下郎
    1. [初出の実例]「一の車のとこしばりをふつふつと切りてければ〈略〉下らふの物見んとわななき騒ぎ、笑ふこと限りなし」(出典:落窪物語(10C後)二)

下臈の語誌

初め上臈と対で使用されたが、中世になって上臈が貴婦人気品のある遊女をさし、近世には上郎・女郎とも書かれ、若い女性をもいうようになるのに対して、下臈は卑しい男を意味したり、罵り言葉になっていったりして対応が薄れる。→上臈

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「下臈」の意味・わかりやすい解説

下臈
げろう

身分の卑しい者をいう。元来,臈とは僧家の語で,僧侶雨期の陰暦4月 16日から3ヵ月間,一室にこもって修行することを安居 (あんご) といい,安居を一臈として功を積む年 (→法臘 ) を数えた。したがって,下臈とは修行年限の短い僧をさした。それがやがて,僧侶のみならず,一般的に地位職掌により卑しいものをいうのに用いられるようになった。下臈蔵人,下臈御随身,下臈法師,下臈女房などといった。ちなみに下臈蔵人とは,六位の蔵人をさした。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「下臈」の解説

下臈
げろう

もとは仏教用語で,僧侶の出家後の年数をいう夏臈(臘)(げろう)が少ない修行の浅い僧をさした。一般には官位の低い者や年功序列の低い者に対する呼称。転じて人に使われている身分のいやしい者に対するよび名となり,蔑称ともなった。また多くは摂関家の家司(けいし)や賀茂・日吉(ひえ)神社の社司などの家の出身で,内裏女房のうち下級の者を下臈女房,略して下臈ともよんだ。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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