禅宗の立場を表す語の一つで、禅の悟りの内容は文字やことばで伝えられるものでないことをいう。中国の翻訳仏教や学問仏教を批判し、実践仏教を主張した禅宗の特色を示す。教えを心から心に伝える意の教外別伝(きょうげべつでん)や以心伝心の語と連結して使用されることが多い。唐代の『都序(とじょ)』などでは達磨(だるま)のことばとする。「教外別伝、不立文字、直指人心(じきしにんしん)、見性成仏(けんしょうじょうぶつ)」の四句は宋(そう)代の『祖庭事苑(そていじえん)』に最初に表れる。文字への執着を破って真実に入ることを説いた大乗経典の『大般若経(だいはんにゃきょう)』や『楞伽経(りょうがきょう)』などの「不説一字」の思想を承(う)けて、禅宗で強調する。
[石井修道]
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