十二支の丑にあたる日で,夏の土用の丑の日や2月と11月の丑の日など,この日を特別の日とする行事がいくつかみられる。夏の土用丑の日にはウナギなど脂肪の多い食物をとると夏やせしないとするのは一般的であるが,頭に〈う〉のつくウリ・梅干しなどを食べるとよいという所もある。この頃に牛に水浴させて休ませる風が各地にあったが,丑湯と称して人間が風呂をたてて入ったり,海水浴をすると病にかからないとも言われていた。薬湯に入る所もある。これらは禊(みそぎ)の一種とも考えられているが,ともあれ,夏負けしやすい頃に食物に気を配り,湯に入って養生することは必要だったのであろう。しかしなぜ丑の日が選ばれたかは未詳である。この日にダイコンの種まきを忌んだり灸をすえる風もある。2月,11月の丑の日には北・西九州各地で田の神の送迎を中心とする行事があり,独特の丑の日祭として知られている。また寒中の丑の日に丑神をまつると運命がわかるとも言われていた。
執筆者:田中 宣一
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十二支の丑にあたる日。夏の土用の丑の日(7月20日ごろ)にウナギ、うどんなど「う」の字のつくものを食べると、夏やせしないなどの俗信はいまも広く行われている。また、寒(かん)(1月6、7日ごろ~2月3日ごろ)の丑の日に買った紅(べに)は、口中の荒れを防ぐという。九州の北部一帯では、霜月(11月)初丑の日を「丑の日節供」とも「丑の日祭り」ともいい、田の神を祀(まつ)る収穫祭の日としている。佐賀県などでは2月の丑の日を出丑(でうし)、11月の丑の日を上がり丑という。農作業の開始に先だって田の神を祀り、秋の収穫が終わったときも感謝の祭りをするということで、春に山の神が田に下りて田の神になり、秋には山に帰って山の神になるという全国的な伝承と一連のものである。西日本では農耕に牛を使うことが多かったから、その反映もあろう。取り入れのときに、二つかみほどの稲を丑の稲といって、御神酒(おみき)をあげて祀る。
[井之口章次]
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…仏教の牛頭天王(ごずてんのう)も牛の化身とされ,出羽三山の信仰でも丑年の参拝を利益多しとして多くの登拝者が集中した。干支(えと)における丑の年と牛とが結合したのは,縁起を説く宗教者と庶民の信仰が結合した結果であるが,年のみでなく5月や8月の丑の日などに家畜の安全を祈願して潮をあびせ,水浴をさせる風もある。これはもともと人間のみそぎのように災厄を除こうとする民間信仰の強い要求が基底にあったからである。…
…稲の収穫祭で,民間の新嘗祭といえるが,祭りが実際の収穫期より1ヵ月ほど遅いのはこの間物忌(ものいみ)に服するためと説明されている。北九州の丑の日祭,奥能登のアエノコト,天草や長島の山祭,中国地方の先祖講,ダイジョウ講のほか,各地の氏神祭や大師講などが代表的なものといえる。また三遠信の国境地帯の遠山祭,冬祭,花祭や秋田県保呂羽(ほろは)山の霜月神楽のように神楽形式の祭りを行う場合も多い。…
…利用するほうでは,衣類や書物に風を通して虫干しする土用干しの風が全国的である。夏負け防止では土用丑の日の伝承が多く,ウの字のつくウナギ,ウリ,牛の肉や土用餅を食べる風習がある。静岡市にはユリの根を入れた土用粥を食べる所もある。…
※「丑の日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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