中朝事実(読み)チュウチョウジジツ

デジタル大辞泉 「中朝事実」の意味・読み・例文・類語

ちゅうちょうじじつ〔チユウテウジジツ〕【中朝事実】

江戸前期の歴史書。正編2巻、付録1巻。山鹿素行著。寛文9年(1669)成立中朝とは日本をいい、古学立場から日本の皇統を漢文体で論じたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「中朝事実」の意味・読み・例文・類語

ちゅうちょうじじつチュウテウ‥【中朝事実】

  1. 漢文体の論書。山鹿素行著。正論二巻付録一巻。寛文九年(一六六九)成立。中朝とは中国人が自国中華と呼ぶのにならい日本をさす。「日本書紀神代巻によって古学の立場から日本の皇統を解き、仏教伝来以前の日本固有の風物の優越性を説く。素行の反朱子学的な立場を知るのに重要な作。

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改訂新版 世界大百科事典 「中朝事実」の意味・わかりやすい解説

中朝事実 (ちゅうちょうじじつ)

江戸前期の儒者山鹿素行著書。赤穂流謫中の1669年(寛文9)に書き上げられ,81年(天和1)津軽藩から板行された。1巻。本書は日本が天神の皇統がついに絶えることなく,また外国より侵されたこともなく,智・仁・勇の三徳において,外国,とくに中国よりもすぐれた国であることを,歴史に即して述べたものである。この比較は普遍的な基準によってなされており,後年誤解されたような国粋主義の書ではない。《素行全集》所収
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中朝事実」の意味・わかりやすい解説

中朝事実
ちゅうちょうじじつ

江戸前期の儒者・兵学者山鹿素行(やまがそこう)の著書。1巻。1669年(寛文9)成立。皇統と付録の2部からなり、「天先」「中国」「皇統」「神器」等の13章で構成される前者には、『日本書紀』を主に『先代旧事本紀(くじほんぎ)』『古語拾遺(しゅうい)』『令義解(りょうのぎげ)』『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』『本朝神社考』等を援用して、神代・古代の皇統と文物の淵源(えんげん)が述べられ、後者にはそれらに関する問答が載せられている。

 本書において、日本は「中華」「中朝」「中国」とよばれ、「水土は万邦に卓爾(たくじ)として、人物は八紘(はっこう)に精秀」なるゆえんが述べられ、日本主義的傾向は明らかであるが、中国において聖人の示した政治理念が日本において実現していたとするのであり、儒教そのものを否定する国学の傾向とは異なる。

[佐久間正]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「中朝事実」の解説

中朝事実
ちゅうちょうじじつ

江戸前期の歴史書。2巻。山鹿素行(やまがそこう)著。1669年(寛文9)成立。中朝とは,中国が自国を中華・中国というのに対して素行が日本のことをさしていった語。日本こそ中華であり中国であるとの観点から,日本は「皇統連綿」「武徳」に秀でた国であるとして,おもに「日本書紀」を典拠とし,日本が大唐や朝鮮より優秀であることを論述している。江戸初期の中国崇拝から反発的ナショナリズムの成立を思想的に形象化した作品の一つとして意義をもつ。「山鹿素行全集」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「中朝事実」の解説

中朝事実
ちゅうちょうじじつ

江戸前期,山鹿素行の歴史書
2巻。赤穂配流中の著述で,1669年脱稿。別著『武家事紀』と対応し,皇室と武家の実事のうち本書は王朝政治に関するもので,記紀を中心に,中華文明の中心は日本であるとし,日本主義的思想を吐露した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中朝事実」の意味・わかりやすい解説

中朝事実
ちゅうちょうじじつ

江戸時代初期の歴史書。3巻。山鹿素行著。寛文9 (1669) 年完成。『中朝実録』ともいう。皇統の系譜と事績を記して,その正統性と政治的権威を主張したもの。

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