家庭医学館 「乾性角結膜炎」の解説
かんせいかくけつまくえん【乾性角結膜炎 Keratoconjunctivitis Sicca】
角結膜は、涙液(るいえき)におおわれており、乾燥や外界からの刺激から保護されています。涙液は粘液層、水層、油層の3層構造からなり、涙液が角結膜表面に均一に広がって安定化し、乾燥しにくいようになっています。
しかし、涙液が減少または質的な異常をきたし、角結膜が乾燥することによって、角結膜に障害がおこります。これを乾性角結膜炎といいます。
[原因]
ビタミンA欠乏、結膜炎後(トラコーマやウイルス性結膜炎など)、薬剤によるもの、兎眼(とがん)症(コラム「兎眼症」)などまぶたの異常、コンタクトレンズ装用による角膜知覚低下などが原因になりますが、原因のわからない原発性のものがもっとも多くみられます。
シェーグレン症候群(「シェーグレン症候群」)という自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)では、口渇、関節炎などの全身症状をともない、重症の乾性角結膜炎を生じます。
[症状]
乾燥感、異物感、灼熱感(しゃくねつかん)、充血、眼精疲労(がんせいひろう)(「眼精疲労」)などが代表的な症状ですが、自覚症状はさまざまです。乾燥した場所では症状が悪化し、湿度の高い場所では改善するといった場合、診断の参考になります。
涙液が乾燥すると角結膜表面が露出し、細かい傷がたくさんできることによって、これらの症状が現われます。
[検査と診断]
涙液の分泌機能(ぶんぴつきのう)を測定するためのシルマー試験、涙液の貯留量を調べる綿糸法、涙液の安定性を検査するための涙液層破壊時間(BUT)、角結膜の異常を調べる生体染色検査などが行なわれます。
またシェーグレン症候群では、血液検査や涙腺(るいせん)のバイオプシー(生検)なども行なわれます。
自覚症状、涙液の減少または質的な異常、角結膜の異常の3つから診断が得られます。
[治療]
涙液を増やすために人工涙液の点眼が行なわれます。
点眼薬にはふつう防腐剤が入っていますが、涙液が減少していると防腐剤が洗い流されにくくなり、角膜に障害をおこしやすくなります。防腐剤の入っていない点眼薬を使用するように注意しましょう。人工涙液はすぐに排出されてしまいますが、最近では、効果が長い点眼薬も開発されています。また、ドライアイ保護用めがねを使用して涙の蒸発を防いだり、涙の排出を抑えるための涙点プラグなどが用いられることがあります。
[日常生活の注意]
涙液が乾燥しにくいように、部屋の湿度を高く保つようにしたり、エアコンの風が目に直接あたらないようにするなど工夫します。
まばたきが減ったり、目を大きく開けていると乾燥しやすくなるので、VDT作業(パソコンなどの画面を用いての作業)など、長時間ものを見る作業をする場合には、注意しましょう。
かんせいかくけつまくえん【乾性角結膜炎 Keratoconjunctivitis Sicca】
涙の分泌(ぶんぴつ)が低下する(ドライアイ)ためにおこってくる病気です。
中年以降の女性に多いとされてきましたが、最近ではOA機器やコンタクトレンズの使用頻度の高い若年者にも、男女を問わず増えてきています。
[症状]
異物感、乾燥感、めやに(眼脂(がんし))などがおもな症状ですが、目が疲れるといった、はっきりしない症状のこともあります。
涙と唾液(だえき)の分泌が同時に低下する自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)はシェーグレン症候群(「シェーグレン症候群」)と呼ばれ、乾性角結膜炎も重症になることが多く、ときには角膜潰瘍(かくまくかいよう)から、失明に至ることもあります。
[治療]
涙の分泌を確実に増やす薬は今のところなく、漢方薬などの内服が行なわれる程度です。治療の主体は、人工涙液(じんこうるいえき)という、目をうるおすための目薬の点眼になります。
重症例には、涙の蒸発を防ぐカバー付きめがねや、涙の排出を防ぐ涙点(るいてん)プラグが使われることもあります。