昭和六年(一九三一)、平凡社の「大百科事典」が出版されたとき、社長の下中彌三郎が、英語のエンサイクロペディアは事物現象の説明であるところから、「じてん」に「事典」と当てたのが始まり。
言葉の発音や解釈を行うものを辞典dictionary(辞書)というのに対して,事項・事件の記述をするものを事典encyclop(a)ediaという。しかし必ずしも厳密には区分されずに,西洋でも《グローブ音楽辞典Grove's Dictionary of Musics and Musicians》のように,事典でありながらdictionaryと称するものも多い。事典の形式は配列法によって二つに分けられる。一つは,主に西洋で発達した,表音表記のアルファベット順などに配列するもので,日本の五十音順もこれに当たる。それに対して事項の属する分野ごとに,さまざまな分類法に従って配列されるものがあり,東洋ではこれを類書といった。最初の事典とされる大プリニウス(23ころ-79)編の《博物誌》は,地理,人種,動物,植物,鉱物と分類されていた。漢代に成立したと思われる中国最初の類書《爾雅》は,親,宮,器,楽,天,地などと19分類されている。1674年に刊行されたフランスのモレリLouis Moreri(1643-80)の《歴史大辞典Le grand dictionnaire historique》が項目をアルファベット順に配列し,以後その方法が普及した。
日本では古くから辞書,事彙などの語を用いたが,1931年平凡社は《大百科事典》を発行する際に,下中弥三郎が〈事典〉と命名して,その後一般に広く用いられるようになった。
→百科事典
執筆者:弥吉 光長
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
物や事柄を表す語を集めて一定の順序に並べて説明した書物をおもにいう。これに対して、ことばや文字をある視点から、たとえば五十音順、漢字の画数順やアルファベット順などに配列して、その読み方や意味などを記した書物を辞典といっている。わが国で事典という名称が使用されたのは、1931年(昭和6)平凡社の社主下中弥三郎(しもなかやさぶろう)が百科事典の計画を発表、『大百科事典』と命名して、「辞典」とは別種であることを宣言したのが最初である。
[彌吉光長]
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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