ごと【事】
〘語素〙
※謡曲・花筐(1435頃)「事新しき問ひごとかな」
② 動詞の連用形に付いて、先の
陳述を統合して
体言格としての機能を果たす。
多く中世の抄物文献に見られる表現。主格に立つ場合は、下に否定的なことばや表現を伴うことが多い。
※足利本人天眼目抄(1471‐73)下「別に
把柄の付け事も无いぞ」
③ 体言に付いて、そのまねをする意を表わす。「ままごと」「おにごと」など。
※
滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)七「旦那ごとはやめたといふに」
じ【事】
〘名〙
※
風姿花伝(1400‐02頃)三「一切の事に、得手得手とて、生得得たる所あるものなり」
こん【事】
〘名〙 「こと(事)」の変化した語。
※
浄瑠璃・
心中宵庚申(1722)上「喉につまってぎっちぎっちてき無いこんでごはりまする」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「事」の意味・読み・例文・類語
こと【事】
《「言」と同語源》
「もの」が一般に具象性をもつのに対して、思考・意識の対象となるものや、現象・行為・性質など抽象的なものをさす語。
1 世の中に起こる、自然または人事の現象。事柄。出来事。「事の真相」「事の起こり」
2 大変な事態。重大な出来事。「失敗したら事だ」「ここで事を起こしたら苦労が水の泡だ」
3 仕事。用件。「事をなしとげる」
4 物事の状態や経過。また、それを中心とした事情。いきさつ。「事を見守る」「事と次第によっては許さないでもない」
5
㋐行事や儀式。
「夜いたう更けてなむ、―果てける」〈源・花宴〉
㋑生命。
「いみじき―の閉ぢめを見つるに」〈源・幻〉
㋒言外に了解されている、ある事柄。例のこと。
「この僧、彼の女に合宿して、―ども企てけるが」〈著聞集・二〇〉
㋓食事。特に、僧の夜食。
「ある人、―をして贈りたりけるに」〈著聞集・一八〉
他の語句をうけて、その語句の表す行為や事態を体言化する形式名詞。
1 行為。仕業。「つまらない―をしでかしたものだ」
2 ある対象に関連する事柄。「映画の事は彼が詳しい」「後の事は君に一任する」
3 心情や動作の向かっている対象。「君の事が好きだ」「家族の事を大切にする」
4 言葉の内容や意味。「君の言う事はわからないでもない」
5 文章の段落などの題目。「イソポが生涯の事」
6
㋐(「…ということだ」「…とのことだ」などの形で)噂。伝聞。「彼も結婚したという事だ」
㋑(「…ことがある」などの形で)場合。「ときどき郵便物が返ってくる事がある」
㋒(「…ことがある」などの形で)経験。「アメリカなら行った事がある」
㋓(「…ことはない」などの形で)必要。「そこまでしてやる事はない」
㋔(「…だけのことはある」などの形で)価値。「専門家に任せただけの事はあって、見事な出来だ」「わざわざ出かけただけの事はあった」
㋕(「…のことだ」などの形で)ある言葉の指し示す対象である意を表す。「九郎判官とは源義経の事だ」
㋖(「…ことにする」「…こととする」などの形で)決定する意を表す。「やっぱり田舎に帰る事にするよ」
㋗(「…ことにしている」などの形で)意図的な習慣にしている意を表す。「毎朝ジョギングする事にしている」
㋘(「…ことになる」「…こととなる」などの形で)結果的にそうなる意を表す。「今度の会談で、国際情勢は新たな局面を迎える事になった」
㋙(「…ことになっている」などの形で)既に規則や予定で、そう決まっている意を表す。「法律で弁償しなくてはならない事になっている」「来秋から留学する事になっている」
㋚(「…ことだ」などの形で)話し手自身の判断に基づいた進言・忠告である意を表す。「入院を機に、ゆっくり休む事だ」「彼にはよく謝っておく事だな」
㋛(「…をこととする」などの形で)その行為に没頭していること、それを当面の仕事としていることを表す。「晴耕雨読を事とする」
「銭積もりて尽きざるときは、宴飲声色を―とせず」〈徒然・二一七〉
7 それに関して言えば、の意を表す。「私事この度転居致しました」
8 通称・雅号などと本名との間に用いて、両名称の指す人物が同一であることを表す。「楠公事楠木正成」
9 活用語の連体形に付いて句を体言化し、そこに述べられた事柄をきわだたせる意を表す。「未来を予知する事ができる」「走る事は走るけれど、遅い」「間もなく帰る事と思います」
10 形容詞・形容動詞の連体形に付いて、その状態を強調する意を表す。「長い事お世話になりました」「不思議な事にからだが宙に浮いた」
11 「の」を介して程度を示す副詞に付き、さらに強調する意を表す。「なおの事悪い」「いっその事やめたらどうだ」
12 (多く「…ごと」の形で用いる)
㋐動詞の連用形、名詞、形容動詞の語幹に付いて、事柄としての行為や状態を表す。「考え事」「悩み事」「色事」「きれい事」
㋑真似をする遊びであることを表す。「まま事」「鬼事(=鬼ごっこ)」
13 活用語の連用形に付いて、句を体言化する。→こと[終助]
「呉人が西施をくせ物と云ひ―は無益なり」〈中華若木詩抄〉
[下接語]当て事・好い事・一つ事・若しもの事・我が事(ごと)遊び事・徒事・他し事・荒事・案じ事・粋事・痛事・入れ事・色事・祝い事・憂い事・絵空事・大事・公事・鬼事・隠し事・隠れ事・賭け事・考え事・綺麗事・稽古事・景事・芸事・拵え事・酒事・杯事・定め事・戯れ事・仕事・実事・忍び事・修羅事・冗談事・勝負事・所作事・心配事・空事・徒事・茶事・作り事・艶事・出来事・手事・内証事・慰み事・何事・習い事・濡れ事・願い事・祈ぎ事・囃子事・僻事・人事・秘め事・節事・振り事・舞事・禍事・真似事・飯事・見事・密か事・無駄事・物事・揉め事・約束事・俏し事・由無し事・余所事・和事・業事・私事・笑い事
[類語]事物・事象・物事・現象・出来事・余事・余所事・他事・他人事・人事・雑事・諸事・事件・時事・事柄・事故・異変・大変・急変・変事・大事・大事・小事・細事・些事・世事・俗事・私事・私事・用事・珍事・不祥事・アクシデント・ハプニング・センセーション
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