ある試行において事象Eのおこる確率をpとする。この試行を独立にn回繰り返す場合にEのおこる回数をXと置くと、Xは確率変数であって、X=kとなる確率pk=P(X=k)は、q=1-pとして次式で与えられる。
pk=nCkpkqn-k
(k=0,1,……,n)
この確率分布を二項分布といい、B(n,p)と表す。
〔例1〕さいころを4回投げて、そのうちちょうど2回6の目の出る確率は
である。
前記のnCkpkqn-kは、(q+p)nを二項定理によって展開した式
nC0qn+nC1pqn-1+……
+nCkpkqn-k+……+nCnpn
の項になっている。二項分布B(n,p)において、kを横軸に、pkを縦軸にとって(k=0,1,2,……,n)、折れ線グラフをつくると次のようになる。k0=np+p-1が整数であれば、pkはk<k0で単調増加、k=k0,k0+1で最大値をとり、k>k0+1で単調減少である。np+p-1が整数でなければ、np+p-1の整数部分をk0とするとpkはk<k0で単調増加で、k=k0で最大値をとり、k>k0で単調減少である。初めに述べた二項分布の定義から次のことが導かれる。確率変数X1、……、Xnは独立で
P(Xi=1)=p, P(Xi=0)=q=1-p
(i=1,……,n)
とする。このとき確率変数
X1+X2+……+Xn
の確率分布は二項分布B(n,p)である。二項分布B(n,p)の平均値はnp、分散はnpqであり、特性関数は(peit+q)nである。
〔例2〕さいころを500回投げるとき、1の目が80回以上出る確率pを求めよ。
求める確率pは
であるが、この値を直接計算することは容易でない。このような形の問題に対しては、次のように正規分布表を用いて計算を行う。二項分布の正規分布による近似確率変数Xの分布が二項分布B(n,p)であるとき、nが大きければ、確率変数
の分布は標準正規分布に近い(ラプラスの定理)。このことを利用して前の〔例2〕の確率pの近似値を求めることができる。0≦a<b≦nである二つの整数a、bに対して、p(a≦X≦b)は の青色部分の面積で、これはXと同じ平均および分散をもつ正規分布N(np,np(1-p))のグラフとx軸および2直線
x=a-0.5, x=b+0.5
で囲まれた部分の面積とほぼ等しい。したがって、Zの分布を標準正規分布として
と置けば、次の近似式が成り立つ。
P(a≦X≦b)≒P(α≦Z≦β)
この式により正規分布表を用いて〔例2〕のpを求めるとp=0.67が得られる。
[古屋 茂]
毎回独立に同じ偶然に支配される試行を繰り返す場合,各試行で二つの可能性(かりにそれらを成功および失敗と呼ぶ)しかないとき,これをベルヌーイ試行という。成功および失敗の確率が,それぞれpとq=1-pであるn回のベルヌーイ試行において,ちょうどk回成功する確率をb(k;n,p)とかけば,
b(k;n,p)=nCkpkqn⁻k
(k=0,1,……,n)
である。これを二項分布という。この分布の平均値はnpで分散はnpqである。確率b(k;n,p)はkが0から増加していくとき,k<(n+1)pの範囲では増加し,k>(n+1)pのときはkとともに減少する。もし(n+1)p=k0となる整数k0があるときはb(k0;n,p)=b(k0-1;n,p)となる。
この分布を平均値0,分散1となるように規格化して,すなわち,直線上の点(ただしk=0,1,……,n)に確率b(k;n,p)を置いて得られる分布は,nが十分大きいとき,図のように標準ガウス分布に近いことが知られている(ド・モアブル=ラプラスの定理)。一方,nが大きくてもpが十分小さく,npがふつうの大きさであるときには,np=λとおいて,ポアソン分布p(k,λ)(ただしk≧0)でよく近似される。
執筆者:飛田 武幸
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…そのとる値は0,1,2,……,nで分布{pk;0≦k≦n}はpk=nCkpkqn-kである。これを二項分布という。これは重要な離散形分布の例で,応用上もよく現れる。…
… 重要なのはF1とF2で,F1は連続型,F2は離散型であるという。
[離散型分布]
(1)もっとも重要なものは二項分布であり,F(x)はx=0,1,……,nのみで増加し,x=kでの跳びはnCkpkqn-k(q=1-p)である。これは成功する確率がpであるn回のベルヌーイ試行における成功する回数の分布である。…
※「二項分布」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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