五山版(読み)ゴサンバン

デジタル大辞泉 「五山版」の意味・読み・例文・類語

ごさん‐ばん【五山版】

鎌倉末期から室町末期にかけて、京都五山などの禅僧によって刊行された、禅籍・語録・詩文集・経巻などの木版本

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精選版 日本国語大辞典 「五山版」の意味・読み・例文・類語

ござん‐ばん【五山版】

  1. 〘 名詞 〙 鎌倉・室町時代に、京都五山やその他の関係の禅院の禅僧らによって出版された書籍。
    1. [初出の実例]「和本 五山板 因師集賢録 全二冊」(出典:典籍秦鏡(1813)以声本)

五山版の語誌

( 1 )この呼称が現われるのは江戸時代末と考えられる。京都の禅宗寺院、臨川寺の名を冠した「臨川寺版」という呼称はそれ以前からあった。
( 2 )通常、五山をはじめとする禅宗の僧侶が鎌倉時代後期から室町時代にかけて刊行した古版本のことをいうが、もっと広く、宋・元・明・朝鮮の刊本の覆刻本、および宋元版の版式を持つ刊本をいうこともある。仏典はもちろんだが、仏法に必ずしもかかわらない典籍(外典)も少なからず開版されたことに特色がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「五山版」の意味・わかりやすい解説

五山版 (ござんばん)

京都・鎌倉の両五山を中心臨済宗の禅僧により,鎌倉時代末期(14世紀前半)から室町末期(16世紀後半)にかけて開版された,国書および宋・元刊本の復刻本の総称。平安・鎌倉時代の各寺院の開版は,ほとんど仏書に限られたが,その後,入宋僧の手で仏典以外の儒書,詩文集,医書などの移入を見,五山の僧によって復刻開版され,いわゆる〈五山文学〉の隆盛をもたらした。五山版の開版は日本の禅僧のみならず,帰化宋僧の力によるところが少なくなく,五山の開版事業の隆盛にともない中国の彫工の来日もさかんとなり,やがて営利出版をうながす原因ともなった。五山版の特徴は,仏典以外の図書の印行にあり,国書開版の糸口を開いたことにあるが,装丁様式にも変化を加え,従来の巻子(かんす)本,折本,粘葉(でつちよう)本のほかに袋綴(ふくろとじ)本(ふつうの和本の形式)があらわれ,しかも,その大部分をしめるようになったことである。なお,開版時の年号,または開版者の名を冠して,〈延徳版〉〈大永版〉〈師直(もろなお)版〉などと呼ぶものもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五山版」の意味・わかりやすい解説

五山版
ござんばん

鎌倉末期(14世紀前半)から室町末期(16世紀後半)にかけて、主として京都・鎌倉の五山の禅院から出版された書籍の総称。内容は禅籍を中心とした仏典を主に、禅僧の教養に必要な中国の経書、史書、あるいは杜甫(とほ)などの詩文集、作詩作法書などの外典にも及んでいる。出版された書籍は、禅籍三百数十種、漢籍100種、総計四百数十種。現存する五山版は約1500部といわれる(川瀬一馬『五山版の研究』による)。五山版の特色の一つは、春日(かすが)版、高野(こうや)版などと異なり、多くが中国伝来の宋(そう)・元(げん)・明(みん)版および朝鮮版の覆刻本、すなわち今日でいう覆製本であるということである。いま一つの特色は、出版には中国から来朝した兪良甫・陳孟栄らの名工が従事したことから、印刷や造本の様式、たとえば匡郭(きょうかく)・界線(かいせん)・版心(はんしん)を刻するなどの点で、中国の印刷技法の影響が顕著にみられることである。そしてこの様式は以後日本の版本様式の基となった。

[金子和正]

『川瀬一馬著『五山版の研究』(1970・A・B・A・J)』


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「五山版」の解説

五山版
ござんばん

鎌倉・室町時代,京都・鎌倉五山などの禅宗寺院や禅僧によって刊行された書籍。宋刊本・元刊本・明刊本の復刻本や,宋元本の版式をもつ版本で,禅籍や漢籍(外典)などがある。最古の五山版は,1287年(弘安10)建長寺の正続庵で出版した「禅門宝訓」2巻で,鎌倉時代は20余刊行された。南北朝期に最盛期を迎え,数百種を出版。京都では春屋妙葩(しゅんおくみょうは)が,天竜寺に住した際に多数の書籍を刊行している。大陸から多数の刻工も移住し,その技術を伝えた。出版を行った寺院は,臨川(りんせん)寺・東福寺・建仁寺・南禅寺など。室町時代になるとしだいに地方での出版が多くなり,中期以後,京都五山の出版は衰退した。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「五山版」の解説

五山版

鎌倉末期から室町末期,京都・鎌倉の両五山を中心とした禅僧関係者などによって出版された書籍の総称.元来が中国伝来の宋・元版本の禅籍をそのまま復刻したものが中心である.五山版には日本の出版史上大きな特色が二つある.一つは,それまでの日本の出版物は内典と呼ばれる仏書ばかりであったが,外典と称される仏書以外の漢籍類も多く,例えば詩文集なども出版されたことである.もう一つは,それまでの出版物がすべて漢文であったのに対し,五山版で初めてかな交じり文の国書が刊行されるようになったことである.こうした出版事業は,春日版や高野版と並んで,地方文化に大きく貢献した.

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百科事典マイペディア 「五山版」の意味・わかりやすい解説

五山版【ござんばん】

鎌倉末期〜室町時代に京都・鎌倉の五山を中心に禅僧によって出版された書物の総称。中国の宋版,元版の経典や語録の覆刻が多いが,日本人の著作も同様な形式で出版され,五山文学の隆盛をもたらした。
→関連項目春屋妙葩

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旺文社日本史事典 三訂版 「五山版」の解説

五山版
ござんばん

鎌倉末期から室町初期にかけて,京都五山を中心に五山の禅僧によって出版された書籍
宋元版の影響をうけ,元からの優秀な版工の来朝により南北朝時代に高揚。おもに禅僧の語録・詩文集を刊行した。総数300点以上になるが,応永(1394〜1428)以後衰え,大内・島津氏などの地方大名の手に移った。中世文化史上のみならず,日本出版文化事業に果たした役割は大きい。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五山版」の意味・わかりやすい解説

五山版
ござんばん

鎌倉時代末期から室町時代初期に,京都五山を中心として出版された木版印刷物の総称。

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世界大百科事典(旧版)内の五山版の言及

【印刷】より

…平安朝末期から鎌倉時代にかけ,興福寺をはじめとし奈良の諸大寺で盛んに印刷が行われた。やがて禅宗の伝来につれ,鎌倉の〈五山〉を中心とする〈五山版〉の刊行が盛んとなった。このころになると,中国からはすぐれた宋版が輸入されたが,日本では仏典以外の書物を印刷することは,ごく稀であった。…

※「五山版」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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