南北朝時代の臨済(りんざい)宗夢窓(むそう)派の僧。芥室(かいしつ)、不軽子(ふきょうし)、西河潜子(せいがせんし)などと称する。甲斐(かい)(山梨県)の人。夢窓疎石(そせき)の俗姪(ぞくてつ)とされる。17歳で出家し、竺仙梵僊(じくせんぼんせん)、清拙正澄(せいせつしょうちょう)らに参じ、夢窓の鉗鎚(けんつい)を受けて法を嗣(つ)ぐ。政治的手腕と経営の才に優れ、等持(とうじ)寺、大光明(だいこうみょう)寺などに歴住、炎上した天竜寺や臨川(りんせん)寺を再興した。1363年(正平18・貞治2)天竜寺、1379年(天授5・康暦1)南禅寺に住し、翌1380年春、智覚普明(ちかくふみょう)国師の号を賜る。ついで後円融(ごえんゆう)天皇より初代の僧録司(そうろくし)に任命される。足利義満(あしかがよしみつ)の相国(しょうこく)寺創建に際し、夢窓を勧請(かんじょう)して自ら同寺の2世となる。また各地に禅院を建立して夢窓派の興隆に寄与、五山版の刊行にも尽くした。1388年(元中5・嘉慶2)8月12日78歳で示寂。『普明国師語録』『天龍(てんりゅう)紀年考略』『夢窓国師年譜』『雲門一曲』などの著がある。
[石川力山 2017年7月19日]
南北朝時代の五山の代表的禅僧。諱(いみな)は妙葩,字は春屋。居所を芥室といい,みずから不軽子,西河潜子と称した。甲斐国の平氏の出身で,夢窓疎石の甥にあたる。7歳で美濃国の虎渓山に法華経を学び,12歳で甲斐国恵林(えりん)寺の道満に従ったが,17歳のとき夢窓について出家した。のち来朝僧の竺仙梵僊(じくせんぼんせん),清拙正澄(せいせつしようちよう)などについて大陸禅を学んだが,ついに夢窓の法を継いだ。1357年(正平12・延文2)京都の等持寺に住し,翌年天竜寺が焼失したあと,幹事となってその復興を成しとげた。そののち臨川寺,阿波光勝院,伏見大光明寺,天竜寺などに住した。ところが,69年(正平24・応安2)南禅寺の山門建立に際して,管領細川頼之と意見が衝突し,翌々年10月,丹後の雲門寺に隠棲した。こののち丹後にとどまること10年,その間,明使の趙秩,朱本,ついで無逸克勤,仲猷祖闡と詩文の往来があった。それらを編集したのが《雲門一曲》1巻である。やがて79年(天授5・康暦1)細川頼之の失脚によって京都の禅林に復帰し,南禅寺に住した。さらに同年10月には初代の僧録に就任して,五山禅林を総轄した。そののち,足利義満の庇護によって嵯峨の宝幢寺をひらき,また幕府の東側に相国寺を創建したが,師の夢窓を勧請開山とし,みずからは同寺2世に甘んじた。88年8月12日,鹿王院に没す。義満の帰依あつく,夢窓派の中心人物として五山・十刹・諸山の官寺制度をはじめとする当代五山の体制づくりに大いに活躍した。生前に後円融天皇から智覚普明国師の勅諡号(ちよくしごう)をうけた。著作に《智覚普明国師語録》8巻のほか,《天竜紀年考略》1巻,《夢窓国師年譜》1巻などの編著がある。
執筆者:今枝 愛真
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(飯塚大展)
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1311.12.22~88.8.12
鎌倉末~南北朝期の臨済宗の代表的な禅僧。諱は妙葩,字は春屋。諡号は智覚普明国師。甲斐国の平氏の出身。夢窓疎石(むそうそせき)の甥。1325年(正中2)夢窓に従って得度。夢窓や鎌倉浄智寺の竺仙梵僊(じくせんぼんせん)らを師として修行。35年(建武2)以降京都に移るが,69年(応安2・正平24)から約10年間,丹後国雲門寺に隠棲。79年(康暦元・天授5)に南禅寺の住持となり,また天下僧録として全国の禅寺・禅僧を統轄した。
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…足利義満が祖父尊氏の天竜寺建立にならって当寺建立を発願,1382年(弘和2∥永徳2)仏殿,法堂(はつとう)の工事に着手した。義満は春屋妙葩(しゆんおくみようは)のすすめにより,春屋の師,夢窓疎石を勧請開山(かんじようかいざん)とし,春屋は2世となった。86年(元中3∥至徳3)五山第2位に列せられ(五山・十刹・諸山),92年(元中9∥明徳3)3世空谷明応(くうこくみようおう)のもとで,盛大な慶讃大法会が営まれたが,その様子は《相国寺供養記》に詳しい。…
※「春屋妙葩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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