高野版(読み)コウヤバン

デジタル大辞泉 「高野版」の意味・読み・例文・類語

こうや‐ばん〔カウヤ‐〕【高野版】

高野山開板された仏典総称狭義には、鎌倉以降に真言宗一門で一定の板型で開板されたものをさす。

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精選版 日本国語大辞典 「高野版」の意味・読み・例文・類語

こうや‐ばんカウヤ‥【高野版】

  1. 〘 名詞 〙 中世、高野山金剛峯寺で印行した仏典などの書籍
    1. [初出の実例]「例へば日本では古刊本としては五山板を主として慶長以前(春日板、高野板の古刊経、或は宗元槧は姑らく別として)を重んじ」(出典:読書放浪(1933)〈内田魯庵〉東西愛書趣味の比較)

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改訂新版 世界大百科事典 「高野版」の意味・わかりやすい解説

高野版 (こうやばん)

鎌倉時代中期以後,紀伊の高野山およびその門流寺院で開版した,密教(おもに真言宗)ならびに悉曇(しつたん)に関する書物の総称。用紙は厚手の鳥の子紙を用い,表裏に印刷し,装丁はおおむね粘葉(でつちよう)形を採用した。開版者としてとくに知られる秋田城介(あきたのじようのすけ)(安達泰盛,1231-85)は,鎌倉執権北条氏の姻戚として勢力をもち,祖父景盛以来の縁故で高野山にはいり,その金剛三昧院(こんごうさんまいいん)は10万余石の扶持を封禄し,武家愛護のもとに偉大な勢力をもって,開版事業にも力をつくした。現存するものでは1253年(建長5)刊《三教指帰(さんごうしいき)》が最も古い。

 高野版については,1260年(文応1)から1323年(元亨3)までのあいだに刊行された4種の開版目録が現存する。それには書名,開版者名,料紙,装丁の品別,価格,経師注文の規定が記載され,日本の開版文化史上きわめて貴重な資料となっている。なお江戸時代初期から木活字による開版がおこなわれたが,これは〈高野活字版〉といって前記のものと区別する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高野版」の意味・わかりやすい解説

高野版
こうやばん

鎌倉時代中期以降、紀伊高野山で出版された仏典類。密教関係の書を主とするが、『悉曇字紀(しったんじき)』『声明(しょうみょう)集』『高野大師行状図画(こうやだいしぎょうじょうずえ)』など特殊なものもある。奈良・京都諸寺における刊経の影響を受けて始まった。現存最古の高野版は1253年(建長5)快賢刊『三教指帰(さんごうしいき)』である。開版者としては快賢、安達泰盛(あだちやすもり)(秋田城介(じょうのすけ))、慶賢らが知られ、金剛三昧院(こんごうさんまいいん)が出版の中心であった。もっとも盛んに行われたのは鎌倉時代中期で、版下を信芸、能海その他能書家が書き、料紙も良質、墨色も漆黒で、精刻のものが少なくないが、南北朝ごろからは料紙に高野紙を用いるようになった。表と裏両面に印刷、やや縦長の胡蝶(こちょう)装(粘葉(でっちょう)装)というのが高野版の特色。注目すべきは、近世初期、慶長(けいちょう)(1596~1615)から正保(しょうほう)(1644~48)にかけて活字による印刷が盛行したことで、古活字版の一種としても高野版は重要である。鎌倉時代開版書目4種が現存、これによって開版事情を知ることができる。

[金子和正]

『水原堯栄著『高野板之研究』(1932・自刊)』『木宮泰彦著『日本古印刷文化史』(1965・冨山房)』


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百科事典マイペディア 「高野版」の意味・わかりやすい解説

高野版【こうやばん】

鎌倉初期以来,高野山で出版された仏典の総称。版式,装丁など春日(かすが)版の影響があるといわれる。4種の開板目録が現存。なお江戸初期から木活字による開板が行われたが,これは高野活字版という。
→関連項目金剛峯寺

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旺文社日本史事典 三訂版 「高野版」の解説

高野版
こうやばん

中世,高野山で出版された書籍の総称
奈良興福寺の春日版に刺激されて鎌倉中期よりおこる。1253年に出版された快賢の『三教指帰 (さんごうしいき) 』が現存する最古のもの。5部の開板目録が出され,高野紙を用いたことが特徴。現在多数の出版書が残り,印刷文化史上貴重な資料である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高野版」の意味・わかりやすい解説

高野版
こうやばん

鎌倉時代中期以降,高野山およびその門流寺院で出版された,木版印刷物の総称。

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世界大百科事典(旧版)内の高野版の言及

【本】より

…鎌倉時代中ごろ高野山に,後期には京都や鎌倉にも及んだ。〈高野版〉は能筆に版下を書かせ,厚様に濃墨を用いて優れたものが多い。高野山では経師大和屋善七など数名を招き,印刷・販売させた。…

※「高野版」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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