京人形(読み)キョウニンギョウ

デジタル大辞泉 「京人形」の意味・読み・例文・類語

きょう‐にんぎょう〔キヤウニンギヤウ〕【京人形】

京都で作られた人形。木彫りで着衣させたものが多い。市松いちまつ人形鴨川かもがわ人形(木目込み人形)・嵯峨さが人形御所人形など。狭義には、おかっぱ姿の少女人形

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精選版 日本国語大辞典 「京人形」の意味・読み・例文・類語

きょう‐にんぎょうキャウニンギャウ【京人形】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 京都でつくられた人形。嵯峨人形、鴨川人形、善次人形などがある。狭義には、おかっぱ姿の少女の人形をいう。着衣は別に作ってつける。
      1. [初出の実例]「京人形(キョウニンギョウ)ども、『こなんはどこからござんした』」(出典:咄本・無事志有意(1798)十軒店)
    2. 京美人。
      1. [初出の実例]「一門の目に余りたる京人形」(出典:雑俳・壁に耳(1716‐36))
  2. [ 2 ] 歌舞伎所作事。常磐津長唄
    1. [ 一 ] 本名題「箱入あやめ木偶(にんぎょう)」。天保一四年(一八四三)江戸市村座初演。
    2. [ 二 ] 本名題「時翫雛浅草八景(しきのひなあさくさはっけい)」。三世桜田治助作詞。四世岸沢式佐・二世杵屋勝五郎作曲。弘化四年(一八四七)江戸河原崎座初演。左甚五郎の作った京人形に魂がはいって動き出すという趣向のもの。のち河竹黙阿彌が補訂して「拙腕左彫物(およばぬうでひだりのほりもの)」となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「京人形」の意味・わかりやすい解説

京人形 (きょうにんぎょう)

歌舞伎舞踊。常磐津。《左小刀》《左甚五郎》とも通称する。本名題《箱入あやめ木偶(にんぎよう)》。1843年(天保14)5月江戸市村座初演。左甚五郎を4世中村歌右衛門,京人形を12世市村羽左衛門ほか。作詞桜田治助。作曲4世岸沢式佐。振付西川巳之助西川芳三郎。お家騒動物の大切(おおぎり)所作事で,ほれた傾城けいせい)の姿を甚五郎が人形に彫ると,人形に魂が入って甚五郎の動きをまねして動き出すという趣向の踊り。前年の河原崎座で同じ常磐津文字太夫,岸沢式佐で市川九蔵により《艶菖蒲木偶(ゆかしのいろあやめにんぎよう)》を上演している。河竹黙阿弥作 《拙腕左彫物(およばぬうでひだりのほりもの)》もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「京人形」の意味・わかりやすい解説

京人形(歌舞伎舞踊劇)
きょうにんぎょう

歌舞伎(かぶき)舞踊劇。常磐津(ときわず)。本名題(ほんなだい)『箱入(はこいり)あやめ木偶(にんぎょう)』。3世桜田治助(じすけ)作。5世岸沢式佐(しきさ)作曲。西川巳之助・西川芳五郎振付け。1843年(天保14)5月、江戸・市村座で4世中村歌右衛門(うたえもん)の甚五郎(じんごろう)、12世市村羽左衛門(うざえもん)の京人形の精により初演。伝説的な名匠左(ひだり)甚五郎の事績の舞踊化で、のち河竹黙阿弥(もくあみ)が『拙腕左彫物(およばぬうでひだりのほりもの)』として補訂、近年は『銘作左小刀(めいさくひだりこがたな)』の名題で多く上演される。五条の廓(くるわ)の小車太夫(おぐるまだゆう)に思いを寄せた甚五郎が、その姿を人形に彫ったところ、魂が入って踊り出す。甚五郎のまねをして男のような動作で踊る京人形が、懐(ふところ)に鏡を入れてやると女らしくなってクドキになるという、男女の使い分けが見どころ。終盤は甚五郎の大工たちを相手の立回りで、いろいろな大工道具を使った所作ダテが楽しめる。

[松井俊諭]


京人形(京都で製作される人形)
きょうにんぎょう

京都で製作される高級な人形の総称。京都は古くから人形の代表的な産地で、江戸時代には目覚ましい発達を遂げた。たとえば、木彫りに盛り上げて彩色し金箔(きんぱく)を置いた嵯峨(さが)人形、高級裂地(きれじ)でつくられた衣装人形、童児形の御所(ごしょ)人形、小型の木目込(きめこみ)人形などがあり、かつては京都産の各種人形を京人形と称した。現在では一般に、桐塑(とうそ)または木彫り彩色の頭に、美しい衣装をつけたやまと人形風な京都製人形をさしていう。

[斎藤良輔]

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百科事典マイペディア 「京人形」の意味・わかりやすい解説

京人形【きょうにんぎょう】

京都産の人形の総称。木目込人形,嵯峨人形御所人形等が有名。狭義ではおかっぱの少女の人形に,着物だけ別に作って着せるものの名称。
→関連項目極込人形京都[市]人形

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「京人形」の意味・わかりやすい解説

京人形
きょうにんぎょう

歌舞伎舞踊曲。常磐津,長唄の掛合。弘化4 (1847) 年江戸河原崎座で『時翫雛浅草八景 (しきのひなあさくさはっけい) 』2番目大切として演じられた人形尽しの所作事の一つ。3世桜田治助作,4世岸沢式佐・2世杵屋勝五郎作曲,藤間大助ほか振付。左甚五郎を4世中村歌右衛門,人形役を4世尾上梅幸がつとめた。初演時には『おやま人形』と呼ばれ,のちに『京人形』『左甚五郎』『左小刀』などと呼ばれるようになった。左甚五郎が,惚れた傾城の姿を人形に彫り上げると,それに魂が宿って踊りだす趣向で,全体の構成はお家騒動に仕組んである。のち万延1 (1860) 年には,2世河竹新七 (河竹黙阿弥) による改作『拙腕左彫物 (およばぬうでひだりのほりもの) 』が江戸市村座で4世市川小団次により上演された。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「京人形」の解説

京人形[人形・玩具]
きょうにんぎょう

近畿地方、京都府の地域ブランド。
京都産の人形。平安時代、貴族の子どもたちの遊び道具であったひいな人形が起源だといわれる。日本は人形の宝庫で、京都を中心として発展してきた。京人形とは、高級な衣裳着人形の総称。ひな人形・五月人形・御所人形・市松人形・風俗人形に大別され、頭・髪付・手足・小道具・着付けなど製作工程が細かく分業化されている。1986(昭和61)年3月、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定。2006(平成18)年11月、特許庁の地域団体商標に登録された。商標登録番号は第5003858号。地域団体商標の権利者は、京人形商工業協同組合。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「京人形」の解説

京人形
(通称)
きょうにんぎょう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
箱入あやめ木偶 など
初演
天保14.5(江戸・市村座)

京人形
きょうにんぎょう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治27.5(大阪・角座)

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世界大百科事典(旧版)内の京人形の言及

【衣装人形】より

…後者は着付人形とも呼ばれ,ふつうにはこの制作法によるものが多い。東京,京都,名古屋などが主産地で,京都でつくられるものを京人形と呼んでいる。布製のマスクを用いたフランス人形式のものも含まれている。…

※「京人形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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