京童(読み)キョウワラベ

デジタル大辞泉 「京童」の意味・読み・例文・類語

きょう‐わらべ〔キヤウ‐〕【京童】

京童部きょうわらわべ」に同じ。

きょう‐わらわ〔キヤウわらは〕【京童】

京童部きょうわらわべ」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「京童」の意味・読み・例文・類語

きょう‐わらべキャウ‥【京童】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙きょうわらわべ(京童部)
    1. [初出の実例]「若男にてありける時、清水の橋殿にて、京わらべといさかひをしける」(出典:古本説話集(1130頃か)四九)
  2. [ 2 ] 六巻六冊。中川喜雲著。明暦四年(一六五八)刊。洛中・洛外の名所案内。名所毎に挿絵発句狂歌が付された、京都の名所記嚆矢(こうし)であり、後続名所記に大きな影響を与えた。同著者による寛文七年(一六六七)刊の続編「京童跡追(あとおい)」六巻六冊がある。

きょう‐わらんべキャウ‥【京童】

  1. 〘 名詞 〙 「きょうわらわべ(京童部)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「されば京童(キャウワランベ)の申沙汰しける」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)

きょう‐わらわキャウわらは【京童】

  1. 〘 名詞 〙きょうわらわべ(京童部)
    1. [初出の実例]「工藤左衛門〈略〉きゃうわらはにて口利にて候」(出典:義経記(室町中か)六)

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日本歴史地名大系 「京童」の解説

京童
きようわらべ

六巻六冊

異記 京わらべ 中川喜雲(重次)

成立 明暦四年

分類 地誌

版本 国会図書館・京都大学図書館

解説 京都の代表的な地誌。ある法師が故郷への土産に、京童の案内によって洛中洛外を巡覧するという仕組みをとる。いわゆる名所記と称される類本の先駆をなすものである。内容は八八ヵ所の神社・仏閣・名所旧跡由来・縁起・伝説で、自作の狂歌・発句に挿絵を加え、読物的な色彩を強めている。著者は、丹波国桑田郡馬路村(現京都府亀岡市)の出身、京都に出、医術や俳諧を学んでいる。「京童跡追」六巻(寛文七年)、「私加多咄」(万治二年)、「鎌倉物語」(同)なども喜雲の作。

活字本 新修京都叢書第一巻

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改訂新版 世界大百科事典 「京童」の意味・わかりやすい解説

京童 (きょうわらべ)

〈きょうわらわ〉〈きょうわらんべ〉とも読み,複数形では〈京童部(きようわらわべ)〉になる。〈京の都に住む,口さがない無頼若者〉の意味で,平安時代後期から江戸時代にかけて各種の文芸にあらわれている語。古くは11世紀初めころの《新猿楽記(しんさるがくき)》に猿楽の芸態の一つとして〈京童の虚左礼(そらざれ)〉がみえ空戯(そらざれ)(ふざけごと)を弄する京童の姿がおもしろおかしく演じられて笑いを呼んだらしい。ちゃかし,ののしり,笑わせる京童というイメージは,その後も一貫して保たれ,痛烈な風刺批判言動とも結ばれ合いつつ,〈京童ノ口ズサミ(口遊),十分一ヲモラスナリ〉で閉じる《二条河原落書》に結実した。京童の実体は,京都において自治・自衛の組織体を編成し〈町衆(まちしゆう)〉としての成長をみせるまでの庶民にほかならない。室町時代以降は,〈京童〉の語は比喩的で情趣的な意味合いをしだいに強めていった。
執筆者:


京童 (きょうわらべ)

仮名草子,地誌。6巻6冊。中川喜雲作。1658年(明暦4)刊。部分,また全体が復刻にかかる別版が3種存する。喜雲の処女作であり,近世初期に刊行された地誌・名所案内記に先鞭をつけたものであった。賢い少年に案内させて見物をする,という形式をとり,京都を中心に山城国一円にわたる87ヵ所を,1ヵ所ずつ挿画を付し,古歌をひき,自作の狂歌,俳諧を添えて記している。喜雲は,続編として1667年(寛文7)に《京童跡追》を刊行し,のちに両書の一部をつなぎ合わせて再構成した《都案内者》を1671年(寛文11)に刊行した。
京雀
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「京童」の意味・わかりやすい解説

京童
きょうわらべ

仮名草子(かなぞうし)。6巻6冊。中川喜雲作。1658年(万治1)刊。京都市内、市外の名所旧跡、神社仏閣など、約88か所を取り上げ、その由来や伝説、さらには現状などを記して解説した啓蒙(けいもう)的な地誌。名所案内としての実用性をもつと同時に、随所に自作の狂歌、発句(ほっく)などを加え、各条ごとに挿絵を入れるなどして、読者の興味をひきつける娯楽性をも兼ね備えている。後続する「名所記」の先駆けとして注目される作品である。

[谷脇理史]

『『新修京都叢書 第1巻』(1967・臨川書店)』『『近世文学資料類従・古版地誌編1 京童』(1976・勉誠社)』


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百科事典マイペディア 「京童」の意味・わかりやすい解説

京童【きょうわらべ】

〈きょうわらんべ〉〈きょうわらわ〉とも。京市中に住む無頼の若者の意で,物見高く口さがない者を表した。平安時代後期の《新猿楽記》には〈京童之虚左礼(そらざれ)(空戯=わざとふざけること)〉が猿楽の芸能の一つとして取り上げられる。ふざける,口うるさくいいふらす行為は風刺につながり,〈京童ノ口ズサミ〉の形を借りて建武政権を批判・風刺した《二条河原落書》は著名。

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世界大百科事典(旧版)内の京童の言及

【中川喜雲】より

…その鬱々たる毎日の根底には,〈昔予若冠のころ愚父とさがにまかりし事有,いにしへはこゝの嵐山の城主はわが先祖のものなりしが,今は城郭さへあとなく,石ずへ井戸のかたちばかりのこれり〉と自著《私可多咄(しかたばなし)》序に書き記したように,零落した家門の栄誉への執着と感傷があったと思われる。 1658年(万治1)刊行された処女作の名所記《京童(きようわらべ)》は,のちの名所記流行の先駆となるものであり,実地に足を運んだ者でなければ書くことのできない詳細な記述は,地誌には欠くべからざる実用性をもたらすものであった。しかし,一方《京童》の盛名は,そのような実用性だけでなく,諧謔精神に基づいた文芸性がいま一本の柱であった。…

※「京童」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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