出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
〈きょうわらわ〉〈きょうわらんべ〉とも読み,複数形では〈京童部(きようわらわべ)〉になる。〈京の都に住む,口さがない無頼の若者〉の意味で,平安時代後期から江戸時代にかけて各種の文芸にあらわれている語。古くは11世紀初めころの《新猿楽記(しんさるがくき)》に猿楽の芸態の一つとして〈京童の虚左礼(そらざれ)〉がみえ,空戯(そらざれ)(ふざけごと)を弄する京童の姿がおもしろおかしく演じられて笑いを呼んだらしい。ちゃかし,ののしり,笑わせる京童というイメージは,その後も一貫して保たれ,痛烈な風刺・批判の言動とも結ばれ合いつつ,〈京童ノ口ズサミ(口遊),十分一ヲモラスナリ〉で閉じる《二条河原落書》に結実した。京童の実体は,京都において自治・自衛の組織体を編成し〈町衆(まちしゆう)〉としての成長をみせるまでの庶民にほかならない。室町時代以降は,〈京童〉の語は比喩的で情趣的な意味合いをしだいに強めていった。
執筆者:横井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
仮名草子(かなぞうし)。6巻6冊。中川喜雲作。1658年(万治1)刊。京都市内、市外の名所旧跡、神社仏閣など、約88か所を取り上げ、その由来や伝説、さらには現状などを記して解説した啓蒙(けいもう)的な地誌。名所案内としての実用性をもつと同時に、随所に自作の狂歌、発句(ほっく)などを加え、各条ごとに挿絵を入れるなどして、読者の興味をひきつける娯楽性をも兼ね備えている。後続する「名所記」の先駆けとして注目される作品である。
[谷脇理史]
『『新修京都叢書 第1巻』(1967・臨川書店)』▽『『近世文学資料類従・古版地誌編1 京童』(1976・勉誠社)』
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…その鬱々たる毎日の根底には,〈昔予若冠のころ愚父とさがにまかりし事有,いにしへはこゝの嵐山の城主はわが先祖のものなりしが,今は城郭さへあとなく,石ずへ井戸のかたちばかりのこれり〉と自著《私可多咄(しかたばなし)》序に書き記したように,零落した家門の栄誉への執着と感傷があったと思われる。 1658年(万治1)刊行された処女作の名所記《京童(きようわらべ)》は,のちの名所記流行の先駆となるものであり,実地に足を運んだ者でなければ書くことのできない詳細な記述は,地誌には欠くべからざる実用性をもたらすものであった。しかし,一方《京童》の盛名は,そのような実用性だけでなく,諧謔精神に基づいた文芸性がいま一本の柱であった。…
※「京童」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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