古代和歌の歌体の一つで,5・7・5・7・7・7の6句38拍からなる形式。奈良の薬師寺に仏足を刻んだ仏足石と,これを賛える仏足石歌碑とが現存する。その仏足石歌碑に刻まれた21首がこの形式の歌であるところから,この名称がつけられた。仏足石に刻まれた21首は万葉仮名で記され,仏足石を賛美する歌と仏教の教えをうたった歌とである。仏足石側面の記文によれば,753年(天平勝宝5)7月に,天武天皇の孫に当たる智努(ちぬ)王(文室浄三(ふんやのきよみ))が亡き夫人(または母)の追善のために建てたとある。ただし,歌碑がこのとき同時につくられたかどうかは不明である。また歌の作者についても定説はない。なお仏足石歌体の歌は,《古事記》《日本書紀》《万葉集》《播磨国風土記》にごく少数見られる。短歌形式の最後の句を多少変化させてくり返すかたちが普通である。最近では,仏足石歌体の存在を否定し,短歌の唱詠の一方法とする見方もある。
執筆者:佐佐木 幸綱
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「ぶっそくせきのうた」ともいう。仏足石(釈迦(しゃか)の足跡を紋様風に彫刻した石)に添えられた歌の意で、753年(天平勝宝5)に智努王(ちぬのおおきみ)が亡妻供養のために造立した仏足石の側の石碑に刻まれ、奈良市の薬師寺境内に現存する。仏の足跡をたたえる内容の17首と無常・生死の道理を現した4首、合計21首からなる仏教歌謡で、作者不明。これらは仏前で歌われたもので、和讃(わさん)などの先駆的存在としての意義がある。全歌が「御足跡(みあと)造る石の響きは天に到(いた)り地(つち)さへ揺(ゆす)れ父母がために諸人(もろびと)のために」のように五・七・五・七・七・七という、仏足石歌体といわれる独特の歌体をとる。なお、この歌体の歌は上代では『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記(ふどき)』にも少数みられる。
[遠藤 宏]
『土橋寛・小西甚一校注『日本古典文学大系3 古代歌謡集』(1957・岩波書店)』
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