抱朴子(読み)ホウボクシ

デジタル大辞泉 「抱朴子」の意味・読み・例文・類語

ほうぼくし〔ハウボクシ〕【抱朴子】

葛洪かっこうの号。
道教の教説書。内・外篇8巻72篇。の著書。317年ごろ成立。神仙思想道家の説や修行法を加えてまとめた内篇と、儒家の立場から政治・社会などを述べた外篇から成る。

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精選版 日本国語大辞典 「抱朴子」の意味・読み・例文・類語

ほうぼくしハウボクシ【抱朴子】

  1. 中国の道家書。八巻。内編二〇編、外編五二編。東晉の葛洪(かっこう)(号抱朴子)撰。三一七年成立。狭義には内編のみをさし、不老長生の仙術と具体的な理論を実観的知識に基づいて論じ、合わせて経典戒律禁忌などを記す。外編は儒教的政治論で、時政の得失、人事の善悪などを論述

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「抱朴子」の意味・わかりやすい解説

抱朴子
ほうぼくし

中国、晋(しん)代の道教の士、葛洪(かっこう)(283―343?)の著書。彼の号を書名とした。現行の八巻本には内篇(ないへん)20巻に20章、外篇50巻に52章(第49巻は3章同巻)を載せる。内・外篇の内容を160篇と記すものもあり、梁(りょう)代以来その巻数は「もつれた糸のようである」(『四庫全書(しこぜんしょ)総目提要』)といわれている。内篇は丹砂(たんさ)(水銀硫黄(いおう)の化合物)や動植物の薬、呼吸法、護符避邪(ひじゃ)、鬼神の駆使、歴臓法(身中の神々を想念する)、戒律などを示して、仙人となる方法や仙人の種類を記す。道家思想を本(先)とし儒家思想を末(後)とする。外篇は儒家を本として、政治、社会、処世のことを説くほか、文学も論じており、その文体は四六駢儷文(べんれいぶん)発達史上注目されている。巻50の自叙は、葛洪の生涯や本書述作の動機、内容を伝えている。今日『抱朴子』といえば一般に内篇をさす。彼は、後漢末の左慈(さじ)―従祖父(いとこおじ)の葛玄(かつげん)―師の鄭隠(ていいん)へと伝わる道術を正統とし、その口訣(くけつ)(奥義の宗教的口授)を受けたものを明師(めいし)とし、老子や荘子をはじめ他の道流を排斥した。明師を選び修行すれば仙人になれる(神仙可学)と説く点に葛洪の貴族出身の知識人らしさが示されている。一方、星宿(生星と死星)による宿命論を説いて神仙可学説への批判をかわし、各種の養生法や道徳を兼修と称して奨励しており、従来の道術が集大成されている。

[宮澤正順]

『大淵忍爾著『道教史の研究』(1964・岡山大学共済会書籍部)』『窪徳忠著『世界宗教叢書9 道教史』(1977・山川出版社)』『村上嘉実著『抱朴子』(1967・明徳出版社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「抱朴子」の意味・わかりやすい解説

抱朴子 (ほうぼくし)
Bào pǔ zǐ

中国,東晋の葛洪(かつこう)の著。内篇20巻,外篇50巻。内篇は神仙,方薬,鬼怪,変化,養生,長生,悪魔ばらい,厄よけ等,道教ないし神仙道の理論と実践(道術)を説く。理論面では嵆康(けいこう)からの影響が顕著であり,道術のうちでは左慈(さじ)に由来する錬金・練丹術がもっとも重視されている。外篇は政治・社会・文明の批判の書であって,当時の世相をうかがう好材料。内外篇それぞれ《日本国見在書目録》にも著録されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抱朴子」の意味・わかりやすい解説

抱朴子
ほうぼくし
Bao-pu-zi

中国,晋の道士葛洪 (かっこう) の号,またその著書名。 106編といわれるが,現存しているのは内編 20編,外編 50編,自叙2編。建武1 (317) 年完成。葛洪は「道教は本,儒教は末」という儒,道二教併用の思想をもち,内編は,仙人の実在,仙薬のつくり方,修道法,道教の教理などを論じ,道教の教義を組織化したものとされ,外編は儒教の立場からの世事,人事に関する評論である。

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百科事典マイペディア 「抱朴子」の意味・わかりやすい解説

抱朴子【ほうぼくし】

中国,東晋の葛洪(かっこう)の著。4世紀初頭の成立。内編20巻,外編50巻。内編は神仙,方薬,養生など道教・神仙道の理論と実践の解説,外編は政治・文明論。
→関連項目神仙説

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「抱朴子」の解説

『抱朴子』(ほうぼくし)

東晋の葛洪(かっこう)の著作。内編20巻は道家(どうか)に属し,神仙道の秘術を伝え,それに思想的根拠を与えたもの。外編50巻は儒家に属し,当時の政治・社会上の諸問題を論じている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「抱朴子」の解説

抱朴子
ほうぼくし

東晋の道士葛洪 (かつこう) の著
内・外編72編。内編で周末以来の神仙術を集大成し,外編は政治・文化など現実の問題を論じている。道教の理論づけの役割を果たした書物。

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世界大百科事典(旧版)内の抱朴子の言及

【尸解】より

…中国,道教における仙人になる方法の一つ。晋の葛洪(かつこう)の《抱朴子》では,現世の肉体のまま虚空に昇るのを天仙,名山に遊ぶのを地仙,いったん死んだ後,蟬が殻から脱け出すようにして仙人になるのが尸解仙であるとし,尸解仙を下位に置く。だが梁の陶弘景が完成した茅山派道教では,この尸解を登仙の方法として重視し,剣を身体の代りに現世に残して仙人となる剣解法を重んじた。…

【仙薬】より

…仙人になるための薬。中国,晋の葛洪の《抱朴子》では,その〈金丹篇〉において,不老長生を得るには金丹を服用することが最も肝要であるとする。金丹の金は火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ,丹の最高のものは九転の丹で,焼けば焼くほど,霊妙に変化する点が重んじられた。…

【丹田】より

…中国,道教に説く身体の部位の名。晋の葛洪の《抱朴子》では,両眉の間の3寸入った所を上丹田,心臓の下にあるのを中丹田,臍下(せいか)2寸4分にあるのを下丹田と呼び,この三丹田には,衣服を着,名前を持つ具象的な神である〈一〉が居り,この神を守ること,すなわち守一の道術が説かれる。北宋の中期ごろに起こった紫陽真人張伯端(987‐1082)の金丹道では,とくに臍下丹田が注目され,体内における不死の金丹の結実するところとされた。…

※「抱朴子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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