仮装人物(読み)カソウジンブツ

デジタル大辞泉 「仮装人物」の意味・読み・例文・類語

かそうじんぶつ〔カサウジンブツ〕【仮装人物】

徳田秋声小説。昭和10~13年(1935~1938)発表愛人の奔放な男性関係と、そのあとを追う主人公痴愚虚実の間に描く。

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精選版 日本国語大辞典 「仮装人物」の意味・読み・例文・類語

かそうじんぶつカサウジンブツ【仮装人物】

  1. 小説。徳田秋声作。昭和一〇~一三年(一九三五‐三八)発表。同一三年刊。初老作家と、多情な女弟子との愛欲ドラマを冷徹な目で描く。

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改訂新版 世界大百科事典 「仮装人物」の意味・わかりやすい解説

仮装人物 (かそうじんぶつ)

徳田秋声長編小説。1935-38年(昭和10-13)にかけて《経済往来》に断続掲載。38年,中央公論社刊。山田順子との老年の恋を描いた《元の枝へ》(1926),《春来る》(1927)など,いわゆる〈順子もの〉を集成,発酵させた作品。大正から昭和にかけて起こった新しい文学運動に焦燥を感じていた老作家庸三は,作家志望の葉子を通じてモダニズムの風俗感覚をとりいれようとするが,彼女の奔放な性の遍歴に翻弄される一方で,貪欲な作家的関心から未練を絶ち切ることができない。そうした異常な恋愛体験を冷ややかに見つめているところに私(わたくし)小説の極北と称されるゆえんがある。冒頭サンタクロース仮面が燃え上がる描写は,道化象徴として有名。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仮装人物」の意味・わかりやすい解説

仮装人物
かそうじんぶつ

徳田秋声(とくだしゅうせい)の長編小説。1935年(昭和10)7月から38年8月まで『経済往来』(35年10月『日本評論』と改題)に連載された。38年12月、中央公論社刊。第1回菊池寛賞受賞。初老の作家稲村庸三(ようぞう)が、妻の死後に近づいてきた若い作家志望の梢(こずえ)葉子にひきつけられ、「飛んでもない舞台へ、いつともなし登場して来たことを慚(は)ぢながらも、手際のいい引込みも素直には出来かねる」仮装の人物として展開する愛欲を描く。秋声と山田順子との交渉を、虚実の間に天衣無縫な構成によって描いた、作者の私小説系の傑作である。

[和田謹吾]

『『秋声全集17』(1974・臨川書店)』『野口冨士男著『徳田秋声の文学』(1979・筑摩書房)』

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とっさの日本語便利帳 「仮装人物」の解説

『仮装人物』

徳田秋声
庸三はその後、ふとした事から踊り揚なぞへ入ることになって、クリスマスの仮装舞踏会へも幾度か出たが、或る時のダンス・パアテイの幹事から否応なしにサンタクロオスの仮面を被せられて当惑しながら、煙草を吸おうとして面から顎を少し出して、不図マツチを摺ると、その火が髯の綿毛に移って、めらめらと燃えあがった事があった。\(一九三五~三八)

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