虚実(読み)きょじつ

  • こじつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

文学論の用語。時代により人により,真 (事実) と虚構,真実と虚偽実体と表現,写実構など,さまざまな味に用いられる。もと中国の詩文書画論などに用いられた語で,日本では歌論,俳論,浄瑠璃論,物語小説論などに広く用いられた。談林俳諧では実よりも虚を重んじ,芭蕉は虚実を止揚し一元化した境地を重んじ,各務支考 (かがみしこう) は最も組織的に虚実論を説いている。近松門左衛門虚実皮膜論は有名。藤原定家の歌論や世阿弥能楽論に説く「花実」の語も「虚実」と似た概念をもつ。

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世界大百科事典 第2版の解説

〈虚〉を実体のないもの,うそ,偽り,〈実〉を実体のあるもの,まこととみる一般的な考え方と,〈虚〉は超越的な存在根拠であり,〈実〉はその具体的な現れであるという《荘子》風の考え方とがある。中国では古く《荘子》関係の思想書にこの言葉が見られ,以後詩文,書画,医学兵学等の分野でもしばしば用いられた。 日本では主として近世俳諧演劇方面で用いられ,その芸術観,文学本質論,表現論等を記述する場合の重要概念となっている。

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① 実質のないこととあること。空虚と充実。
※権記‐長保三年(1001)五月二一日「夢通虚実亦有下統」 〔後漢書‐孝安帝本紀〕
② うそとまこと。また、虚偽か真実かということ。こじつ。
※正倉院文書‐宝亀三年(772)五月四日・秦麻呂解「望請二日之間、求尋虚実、不怠即参向、仍注事状、以解」
※奇想凡想(1920)〈宮武外骨〉恋猫の牝牡と春秋「愛猫家に此説の虚実(キョジツ)を質せしに」
③ 漢方医学の用語で、不足と過分の意。体の機能や症状が衰弱していることと、異常に亢進していること。
※全九集(1566頃)一「此寸関尺にて五蔵六府の虚実、一身の安危三焦の通塞を、取こころみ分別いたすなり」
〘名〙 (「こ」は「虚」の呉音) 虚と実。虚偽か真実か。うそかまことか。きょじつ。
※霊異記(810‐824)中「虚実(こじつ)を知らむと欲ひ、耆老(おきな)の姓名を問へども、遂に无し」
[補注]「色葉字類抄」の「こ」の部に「虚実」があげられている。

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