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伊勢国の新しい名所に選定された10か所を歌題として催された歌合の和歌に絵を添えた絵巻。伊勢の内宮(ないくう)の神官や僧侶(そうりょ)16人が詠んだ80番が載り、上下2巻からなっていたが、現在は下巻の詞(ことば)、絵各5段を残すのみ。歌の詠者の官位や没年から、1294、95年(永仁2、3)のころの歌合とみられ、絵巻の制作も同じ時期と考えられる。各名所の風景が詩情豊かな筆で描き出され、平安朝以来の名所絵の伝統がよく踏襲されている。三重県神宮蔵。
[村重 寧]
『『日本絵巻大成 18』(1978・中央公論社)』
…歌仙絵と同様にかなり早い時期から描かれていたと考えられ,佐竹本《三十六歌仙絵巻》も歌仙を2組に分け18番の仮想の歌合を行う形式をとるので,歌合絵の一種と言える。また1295年(永仁3)の《伊勢新名所歌合絵巻》は,歌合の題となった伊勢の新名所風景を描いており,名所絵の伝統が歌合絵の形式に採り入れられた作例として注目される。しかし歌合絵の主流は歌人の姿を描く作例で,古今の著名な歌人を選び組み合わせた《時代不同歌合絵》や種々の職人たちに仮託して歌合を行う《職人歌合絵巻》(職人尽絵),あるいは物語の登場人物を組み合わせる《源氏歌合絵巻》など,さまざまな趣向が生まれた。…
…絵には独特の強い筆癖があり,人物の容貌にも誇張がみられるが,随所に描き込まれた四季の風物によって,画面は趣豊かなものとなっている。画風から《伊勢新名所歌合絵巻》と同じ絵師の手になると思われ,鎌倉時代における絵画制作の状況を考えるうえで興味深い。他の物語絵巻に比べ,地方武士の生活を題材としている点で珍しく,史料としても貴重である。…
※「伊勢新名所歌合絵巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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