伊豆の国(市)(読み)いずのくに

日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊豆の国(市)」の意味・わかりやすい解説

伊豆の国(市)
いずのくに

静岡県南東部、伊豆半島の北部にある市。2005年(平成17)田方(たがた)郡伊豆長岡韮山(にらやま)、大仁(おおひと)の3町が合併して市制施行。東は箱根山系に連なる高原地帯、西は葛城(かつらぎ)山、発端丈(はったんじょう)山などの山々に囲まれ、中央の田方平野狩野(かの)川が北に流れる。伊豆箱根鉄道、国道136号、414号、伊豆中央道、修善寺(しゅぜんじ)道路が通じ、東端を伊豆スカイラインが走る。

 狩野川流域には肥沃(ひよく)な水田地帯が広がり、イチゴや花卉(かき)などの施設園芸が行われている。西部の急傾斜地ではミカン、カキなどの果樹栽培、南部の田中山や浮橋(うきはし)では酪農や肉用牛の肥育が盛んである。また、大仁地区には工業が発達し、旭化成や東芝テックなどの工場が進出している。

 この地域には鎌倉幕府ゆかりの史跡が多く、源頼朝(よりとも)が配流の生活を送った蛭ヶ小島(ひるがこじま)、執権北条時頼(ときより)の墓がある最明寺(さいみょうじ)、北条時政(ときまさ)の建立した願成就院(がんじょうじゅいん)などがある。また、戦国時代の武将北条早雲の築いた韮山城、幕末に江川英龍(ひでたつ)(太郎左衛門)が建造した韮山反射炉などもあり、歴史探訪に訪れる人も多い。文化財も豊富で、願成就院の阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)(国宝)、南江間の北伊豆地震(1930年)による「地震動の擦痕(さっこん)」(国指定天然記念物)、北江間横穴群にあった若舎人(わかとねり)の石櫃(せきひつ)、現存する日本最古の邸宅建築といわれる江川家住宅(ともに国指定重要文化財)などがある。

 市内には伊豆長岡温泉大仁温泉、韮山温泉をはじめ、葛城山頂のパノラマパークなどの観光施設がある。また、狩野川のアユ釣り、イチゴ狩りやミカン狩りなどの観光農園も盛んとなっている。面積94.62平方キロメートル、人口4万6804(2020)。

[編集部]

〔世界遺産の登録〕2015年(平成27)、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産として、韮山反射炉が世界遺産の文化遺産に登録された。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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