推理作家。本名丸山一郎。東京生まれ。東京大学文学部卒業後、読売新聞社に入社。1959年(昭和34)、密室殺人と特異な動機を組み合わせた処女長編『一本の鉛』を発表、新聞社を退社して文筆生活に入り、旺盛(おうせい)な筆力で長短のミステリーをものし、新本格派の代表作家となる。ジャーナリストの経験を生かした社会感覚、ひねりのきいたプロットの展開、軽妙な文体に特色をみせ、1965年には『華麗なる醜聞』で日本推理作家協会賞を受賞した。これは駐日外国公使のスキャンダルと、それにからむバスの爆破事件が発端となり、その真相の究明に乗り出した新聞記者の手記という形式をとったミステリーで、謎の核心に迫る手法には作者の取材経験が生かされていて迫力がある。『轢(ひ)き逃げ』(1970)も代表作の一つで、第1部は轢き逃げ犯の隠蔽(いんぺい)工作を倒叙形式で描き、第2部ではその犯人の失踪(しっそう)と殺害を本格的な謎ときの手法で描いて間然するところがない。そのほか『完全試合』(1961)、『禁じられた手綱』(1973)など野球、競馬、競輪など現代人好みのテーマを扱った作品も多い。また『金属音病事件』(1961)、『透明受胎』(1965)など、ミステリーの技巧を駆使してSFのなかで謎の解明を追求する、いわゆるSFミステリーの作品もあり、推理小説の発展に貢献したその業績に対して、1997年(平成9)に第1回日本ミステリー文学大賞(光文シエラザード文化財団)を贈られた。
エッセイやノンフィクションも手がけた。ミステリーエッセイの『推理日記』は1976年に始まり、2012年(平成24)の『推理日記FINAL』が最終刊となった。ノンフィクションには、『北の事件簿』(1983)、『檻(おり)の中の詩(うた)――ノンフィクション・布川(ふかわ)事件』(1993)などがある。
[厚木 淳]
『『推理日記』part1~part11、FINAL(1976~2012・潮出版/光文社/講談社/講談社文庫)』▽『『檻の中の詩(うた)――ノンフィクション・布川事件』(1993・双葉社)』▽『『佐野洋推理傑作選』全7冊(講談社文庫)』▽『『一本の鉛』『華麗なる醜聞』『完全試合』『透明受胎』(角川文庫)』▽『『轢き逃げ』(講談社文庫)』▽『『金属音病事件』(ケイブンシャ文庫)』▽『『北の事件簿』(新潮文庫)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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