雅楽書。『楽家録(がっかろく)』『教訓抄』と並ぶ三大楽書の一つ。豊原統秋(とよはらのむねあき)(1450―1524)著。1512年(永正9)成立。全13巻。「體源」は豊原の姓をその旁(つくり)に入れたもので、「家の書」の意味。豊原家は平安初期から鳳笙(ほうしょう)を家芸とする京都の楽家で、江戸期から豊(ぶんの)の姓を名のり、いまに至る。統秋は応仁文明(おうにんぶんめい)の乱のなかで楽道に励んだが、伝統の廃絶する危機感からこの著を残したと思われる。たとえば、秘曲は盗聴されぬよう細心の注意を払うべきで、敦兼は秘曲を吉野の上の宮に奉納する際人々が寝静まってからした、というような逸話が盛り込まれる。思いのまま書き連ね、構成もまちまちだが、仏教、神道(しんとう)、書歌道や当時の世相にまで言及し、文学・歴史的にも貴重な書である。
[橋本曜子]
『『覆刻版 日本古典全集 体源抄』(1978・現代思潮社)』
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