何時しか(読み)イツシカ

デジタル大辞泉 「何時しか」の意味・読み・例文・類語

いつ‐し‐か【何時しか】

代名詞「いつ」に、強めの副助詞「し」、疑問係助詞「か」の付いたものから》
[副]
いつのまにか。早くも。「何時しか今年も暮れてしまった」
過去・未来の不定の時を表す。どの時かに。
「よし小説を読まざるとも―その念起りつべし」〈逍遥小説神髄
早くその時が来るようにと、事の実現を待ち望むさま。いつか早く。
「―御崎といふ所わたらむとのみなむ思ふ」〈土佐
(あとに打消しの語を伴って用いる)いつになっても。
「―話になるためしはござりませぬよって」〈咄・臍の宿替・一〇〉
[形動ナリ]時期が、いかにも早すぎるさま。
「今度の譲位―なり」〈平家・四〉
[類語]何時かしら何時の間に何時いつなんどきいつごろいついついつなんどきいつの間にか何時なんじ何日なんにち何年なんねん幾日某日

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「何時しか」の意味・読み・例文・類語

いつ‐し‐か【何時か】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 代名詞「いつ」に、間投助詞「し」および係助詞「か」が付いてできたもの )
    1. ( 「いつしかと」の形で用いることが多い ) 「いつ…する(できる)だろうか」という気持から、ある物事の実現を待ち望む気持を表わす。いつかいつかと。すぐにでも。早く。
      1. [初出の実例]「伊都之可(イツシカ)病止(い)えて参り入りき」(出典:続日本紀‐天応元年(781)二月一七日・宣命)
      2. 「いつしか御崎といふ所わたらんと」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月一六日)
    2. ある物事が気づかないうちに、または予想以上に早く実現したさま、時の経過の不明なことを表わす。いつのまにか。早くも。
      1. [初出の実例]「うぐひす許ぞいつしか音したるを」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. 「いつしか年も、すぎのとを、あけてぞけさは、わかれゆく」(出典:唱歌・蛍の光(1881))
    3. 過去および未来の事がらに関して、その事のあった、または、ある時が特定できないことを表わす。いつであったか。そのうちいつか。
      1. [初出の実例]「おもふよりいつしかぬるるたもとかな涙ぞ恋のしるべなりける〈後二条関白家筑前〉」(出典:千載和歌集(1187)恋一・六四三)
    4. ( 下に打消を伴って用いる。近世用法 ) いつまでたっても。いつになっても。
      1. [初出の実例]「それを両方から、あからさまにいふてゐましては、いつしか話しになるためしはござりませぬよって」(出典:咄本・諺臍の宿替(19C中)一〇)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 時期があまりにも早いさま。早すぎること。
    1. [初出の実例]「さりける事のありけるよと、聞かれん事もいつしかに侍り」(出典:浜松中納言物語(11C中)二)

何時しかの語誌

( 1 )上代での原義「いつになったら実現するだろう」という推量的自問は、強意の「し」によって、実現を強く待ち望む気持、「早く実現してほしい」「早く実現したい」という願望をも表わすようになる。
( 2 )中古には、事態の完了について使用され、のように事態の実現が予想以上に早く、気づく間もなかったことを表わすことが多くなり、やがて形容動詞の用法が派生した。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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