田畑の耕作に従事する雇人のこと。この語は文芸作品などにしばしば登場するが,各地の農村における実際の使用例はあまり知られておらず,意味は必ずしも明確ではない。農業労働に従事する雇人を大別すると,主家に住み込む奉公人と自分の家から通う日雇になるが,作男はばくぜんと両者を含む言葉とするのが通例である。ただ地方によっては,特定の家に出入りしてその家の農作業や雑事に従事し,なにかにつけてその家から物質的給付をうけるような,主従関係的な人物を作男という所もある。なお,住込みの奉公人を示す各地の言葉は,単に働き手の男子,女子であることを示すオトコシュウ(男衆),ワカイモン(若い者),ワカゼ(若勢)とかオナゴシュウ(女衆)などが一般的である。奉公人は耕作に従事するだけではないからである。また通いの日雇は一般にヒヨウといい,日傭あるいは日用の字をあて,またテマドリ(手間取り),チンビト(賃人)などの表現もある。いずれにしても,作男は農地改革前の古い言葉といえる。
→奉公人
執筆者:福田 アジオ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
農家の住み込み奉公人。雇人、下男(げなん)、下人(げにん)ともいうが、通称はワカイシュ、ワカゼ、オトコシュ、ニセなど一般男子の呼び名と同じであり、ゲナイ、ケライ、ウチノモノ、オクノモノなどの古い呼び名は「家の者」の意味で、「家」に取り込まれた農耕の「働き手」を意味した。近世初期には譜代(ふだい)の「下人(けにん)」、人質奉公(借金返済まで働く)、年季身売り奉公(年季を限っての無償奉公)など古い形の作男もあったが、しだいに消失し、やがて質奉公も「居消(いげし)」(労賃で借銭を年季消却する)の形に移行して、労賃契約の年季奉公、年切り奉公の雇人が主体となっていく。そこでも「労賃前借」の形は久しく残り、「身売り奉公」に等しいものも多く残存した。しかし近世中期以後は1年契約の「年切り奉公」の作男がしだいに一般化し、「出替日」(交替期)も地方ごとに設けられて、いちおうは労賃を米銭で定め、年々更新する形になった。近代産業発達前は上層農への「作男奉公」が貧農子弟の重要な「働き口」で、永年勤続して主家から家屋敷や若干の農地・小作地を与えられて「分家独立」する者も多かった。いわゆるカマドベッケ、ダイドコロベッケ、カドベッケの類である。永年勤続の雇人を「家」の一員として受け入れ、その自立にも努めたのは、農業賃労働の原初形態の作男にも、なお家族的意識が深くまとわりついていたことを示しており、そうした名残(なごり)は明治期以後も広くみられた。
[竹内利美]
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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