日本大百科全書(ニッポニカ) 「信長記(しんちょうき)」の意味・わかりやすい解説
信長記(しんちょうき)
しんちょうき
江戸初期の仮名草子。小瀬甫庵(おぜほあん)作。1622年(元和8)刊。15巻。太田牛一(ぎゅういち)作の実録『信長公記(しんちょうこうき)』を、甫庵が物語風に潤色したのが本書で、保元(ほうげん)の乱以降足利義輝(あしかがよしてる)までの武家政権の興亡を序とし、織田信長(おだのぶなが)の先祖の記述から本能寺で明智光秀(あけちみつひで)に弑(しい)されるまでの戦闘に明け暮れた生涯を記し、その人物評で結ぶ。『信長公記』は記録性を重んじ、信長の若年の奇行やその後の専制君主ぶりをありのままに描くが、『信長記』は、信長を媒材として儒学の理念を宣揚すべく暴君色をやや薄めている。
[村上 学]
『神郡周校注『信長記』上下(1981・現代思潮社・古典文庫)』
[参照項目] |