俳画(読み)ハイガ

デジタル大辞泉 「俳画」の意味・読み・例文・類語

はい‐が〔‐グワ〕【俳画】

日本画の一。俳諧味のある略筆淡彩画または墨画蕪村作品など。俳諧画。
[類語]日本画大和絵浮世絵錦絵鳥羽絵

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精選版 日本国語大辞典 「俳画」の意味・読み・例文・類語

はい‐が‥グヮ【俳画】

  1. 〘 名詞 〙 日本画の一種俳味のある、略筆の淡彩もしくは墨絵で、俳句の賛などが付けてある書画共存形式の絵。与謝蕪村が完成者とされる。俳諧画。
    1. [初出の実例]「俳画などといふ粗画に俳句の讚を書くのは」(出典:病牀六尺(1902)〈正岡子規〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「俳画」の意味・わかりやすい解説

俳画 (はいが)

俳句を題材に,その句が描写する内容を表現し,その画面に題材となった俳句を賛した書画共存形式の絵画。しかし,その本質とするところは,単に俳句の意味するところ,すなわちその内容が視覚化されるという,形式的な一致にあるのではなく,俳諧の成立と展開の中で醸成されたものである。機知と滑稽味,卑俗,即興性,日常的題材,平明さ,軽さ,といった概念は,俳諧が短歌から派生し,貞門,談林を経て蕉風の〈軽み〉の完成に至る俳諧の本質を端的に示しているが,それはそのまま俳画の特質を指摘する言葉でもある。宗祇,宗鑑,守武ら俳諧の始祖といわれる人々や,貞門俳諧の指導者であった松永貞徳らは,俳画といえるものを遺さなかったが,貞門に学んだ立圃(りゆうほ)は,俳諧独特の機知や滑稽味を反映した作品を遺した。西鶴は即興軽口の新風を誇示したその句風をそのまま反映する即興的表現を試み,俳画に新たな展開を与えた。〈軽み〉をきわめようとした芭蕉は,その句風にふさわしく,機知や諧謔味に富んだものというよりは,平明で気取らず,偽らぬ真摯な実感そのままを淡々と絵筆に託した。

 芭蕉の平明な描写をそのまま受け継いだのは杉風や也有であったが,芭蕉への回帰を大きな目的としていた蕪村は,俳画の歴史の中ではその頂上をきわめた人物である。俳人でもあるが,他方,万人の認める画家でもあった蕪村は,俳諧の歴史がたどってきた要素,すなわち機知や諧謔味,即興性や日常的平明さ,軽さといったもののすべてを兼ね備えた描写を完成したが,加えて専門画家としての洗練された描線や技巧的表現,構図感覚などが,蕪村の俳画をそれ以前のものと大きく峻別させる要因となった。蕪村が完成した俳画の伝統は呉春松村月渓),横井金谷,紀梅亭ら,蕪村の弟子たちによって受け継がれていくが,〈容易な言葉〉や〈趣向の軽さ〉によって蕉風が崩壊していったように,俳画もやがては安易な描写の域を出なくなり,衰退の道をたどることとなる。
俳諧
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「俳画」の意味・わかりやすい解説

俳画
はいが

俳味ある洒脱(しゃだつ)な画(え)。俳諧(はいかい)、俳文、俳句を賛とし、淡彩もしくは墨画(ぼくが)の簡略な筆致で、賛の句に響き合う、あるいは賛の内容を説明するところを画にしたもの。自画自賛とは限らない。創始については不明であり、すでに芭蕉(ばしょう)や許六(きょりく)、彭城百川(さかきひゃくせん)は俳画とよべるものを描いているが、それを芸術的に完成させたのは与謝蕪村(よさぶそん)である。蕪村は自ら「俳諧ものの草画」とよび、『おくのほそ道図屏風(びょうぶ)』や『若竹(わかたけ)図』などの優れた作品を残している。幕末の渡辺崋山(かざん)には版本『俳画譜』があり、このころには俳画という呼称が定着し、以後もっとも一般に普及した日本画の一形式として現代に至っている。

[星野 鈴]

『岡田利兵衛著『俳画の世界』(1966・淡交新社)』『『俳人の書画美術』全12巻(1979~80・集英社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「俳画」の意味・わかりやすい解説

俳画
はいが

俳諧画ともいう。日本画の一形式。俳味のある洒脱な略筆の墨絵や淡彩の小品画。1句の俳句を題材にして,その句の内容を絵画として表現し,題材となった句を賛とした書画一体の形式のものが多い。俳諧が盛んになりだした室町時代後期から発生したと考えられるが,江戸時代初期の野々村立圃,松尾芭蕉,宝井其角らによって基礎が固まった。中期の与謝蕪村,建部凌岱 (りょうたい) らによって完成され広く普及したが,以後は趣味的な即興画として今日にいたっている。

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