倉庫業者に対する寄託物返還請求権を表章する有価証券を倉庫証券というが,倉荷証券はその一種である。倉庫証券は,その交付や裏書のみで寄託物の譲渡しや質入れができるため,寄託物を在庫のまま売買したり金融を受ける必要がある場合に利用される。商法では倉庫証券として所有権移転のための預り証券と質権設定のための質入証券とを一組にして発行する制度もあるが,一般には代りに倉荷証券だけを発行する方法が利用されている。倉荷証券は倉庫業者が寄託者の請求により預り証券および質入証券に代えて発行するが(商法627条1項),運輸大臣の許可を受けた倉庫業者でなければ発行できない(倉庫業法13条1項)。倉荷証券には預り証券に関する規定が準用され(商法627条2項),その結果,貨物引換証に関する規定が準用されることになる。その形式,流通方法,効力は,貨物引換証とほぼ同様である。倉荷証券は,寄託物の質入れのためにも利用されるが,質入証券に関する規定(606条)は準用されないので,単純な裏書交付の方法によるべきものと解される。なお,倉荷証券の所持人が寄託物の質入れをし,証券を現在所持していない場合には,証券と引換えでなくても質権者の承諾があれば,寄託者は,債権の弁済期前でも寄託物の一部の返還を請求することができる(628条)。
執筆者:石田 満
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倉庫証券の一種。倉庫営業者が寄託者の請求により、預り証券および質入証券(複券主義)にかえて発行するもの(単券主義)で、両証券をあわせた性質を有し、一つの証券によって寄託物の譲渡・質入れなどの処分行為ができる。その点、陸上運送における貨物引換証と同じ機能を有する。倉荷証券には預り証券に関する規定が準用されるが、次の点で両者は異なる。すなわち、預り証券は、寄託物に対する質権設定以外の処分をなすために利用されるのに対して、倉荷証券はさらに寄託物の質入れのためにも利用される。ただし、その質入れを行うには、倉荷証券の所持人が債権者と質権設定契約を行うとともに、債権者に倉荷証券を引き渡さなければならないから、寄託者は、倉荷証券によって寄託物の質入れをした場合には、寄託物の返還を求めることができないという不便がある。実際の取引では、複券の繁雑さを嫌い、もっぱら倉荷証券が利用されている。
[戸田修三]
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