翻訳|lodging
農作物の地上部が地面に倒れ伏す現象。農作物が発育して草丈が増加し,その上に種子や果実が形成されるようになると,作物体の頂端部にかかる荷重はしだいに大きなものとなる。これに外的要因として風や雨が加わると,自重と外力とに抗し切れず,作物体はしばしば倒伏する。倒伏によって作物体の器官や組織が損傷すると,養水分の移行が妨げられ,種子や果実の成熟は抑えられる。また地面に接する作物体部分は土壌に汚染されたり病虫害におかされたり,場合によっては登熟(とうじゆく)中の種子が発芽を開始したりする。その結果,収量や収穫物の品質が低下するのみならず,収穫作業にも著しい困難を伴うのがふつうである。倒伏は農業上,最も恐れられている災害の一つとされている。
農作物のうち,とくに頻繁に倒伏がみられ問題とされているのは,イネ,ムギなどの穀類である。これらの倒伏には大別すると,(1)地際の節間が折れて倒れるもの,(2)茎が湾曲して倒れるもの,(3)根が抜けて作物体全体が倒れるもの,などがあり,(1)の場合が最もふつうで被害も大きい。倒伏に対して強い抵抗性を示す作物体の具備すべき特性として,草丈が低く,基部の節間が短く太く,また機械組織が発達していることなどが要請されている。多収性を目標に育成されてきたイネ,ムギの近代的品種は,短稈(たんかん)直立葉の草型を呈するものが多いが,このような草型はまた耐倒伏性をもそなえているといえる。一方,栽培条件についてみると,一般に多肥条件は草丈を増加させ,とくに節間伸長期の窒素肥料の追肥は,節間伸長を促進し倒伏を招く一大要因となる。また栽植密度を高くすると,過繁茂になりやすく,茎は軟弱徒長して倒伏に弱い作物体が形成される。多肥も密植も手軽に行使しうる増収技術であるが,その程度を誤ると思わぬ倒伏害を受けることが少なくない。とくに日本では,登熟期のイネには台風が,ムギには梅雨時の豪雨が,倒伏の助長要因として働くので,十分の注意が必要である。なお近年,除草剤として使用される2,4-DやMCP剤が,節間伸長を抑える効果をもつことが知られるようになり,これらの薬剤をいわば倒伏防止剤として利用する農家が増加しつつある。
執筆者:山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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