和議(読み)わぎ

精選版 日本国語大辞典 「和議」の意味・読み・例文・類語

わ‐ぎ【和議】

〘名〙
和睦評議。なかなおりの相談。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※中華若木詩抄(1520頃)上「天子より憐て、胡国へ人をつかわして、和議を扱ふて、蘇武を呼かへす也」
② (━する) おだやかに相談すること。話し合いをすること。協議
※康頼宝物集(1179頃)中「住みわびて和議して離て侍りけるが」
破産宣告予防するために、債務者債権者団体の合意によって結ばれる契約債務者が破産宣告を免れると同時に、債権者としても破産の場合に比べて有利な解決を得られるため行なわれる。→強制和議。〔和議法(1922)〕

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デジタル大辞泉 「和議」の意味・読み・例文・類語

わ‐ぎ【和議】

和睦のための協議。「和議を結ぶ」
旧法で、破産を予防するために債務者債権者との間でなされる合意のこと。債務者は破産を免れ、債権者は破産の場合に比べて有利な弁済を受けることを目的としていた。平成12年(2000)の民事再生法施行に伴い和議法が廃止され、同法による和議(強制和議)は廃止された。
[類語]仲直り和解和睦和平和戦講和休戦停戦終戦矛を収める水に流す元の鞘に収まる

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和議」の意味・わかりやすい解説

和議
わぎ

法律上の意義としては、1999年(平成11)に民事再生法(平成11年法律第225号)が制定されると同時に廃止された和議法(大正11年法律第72号)により規定されていた破産予防のための手続をいう。なお、この和議法による和議手続とは別に旧破産法において「破産宣告を前提とする強制和議」が設けられていたが、破産法の全面改正により、強制和議も廃止され、現行の破産法では強制和議は存在しない。

 和議は、債務者に破産原因が生じ、破産宣告を受けるような状態になった場合に、裁判所その他の公の機関の補助・監督のもとに、債務者は破産宣告を免れると同時に、債権者も破産の場合に比べて有利な弁済を受けることを目的として締結される一種の合意ないし契約であったとするのが通説である。それは債務者による和議の提供と、これに対する法定多数の債権者の同意によって成立するとともに、裁判所の認可によってその効力を生ずる点では、旧破産法が規定していた強制和議と同じ性質のものであったが、破産宣告を前提とせずに、これを食い止めることを目的とする点で、和議法上の和議は「破産外の和議」または「破産予防の和議」とよばれていた。

 しかし、この和議手続では認可後の和議の履行の確保を完全に担保する制度的手当てがなされていなかったことや、和議開始原因が破産原因と同じであったことに対する批判が存在していた。このような批判を受けて、1996年(平成8)より法制審議会において倒産法改正の審議が始まり、その結果、和議法が廃止されて、民事再生法が制定された。民事再生法の登場は、和議法による和議手続について上述のように指摘されてきた欠点を是正するところにその主眼があった。

[内田武吉・加藤哲夫]

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百科事典マイペディア 「和議」の意味・わかりやすい解説

和議【わぎ】

債務者が債務を完済できない状態に陥ったときに,破産の予防を図る制度ないし手続。和議法(1922年)に基づく。破産は債権者・債務者にとって不利であるから,債務者よりの和議開始決定申立てに基づき,債権者と債務者が裁判所関与の下に債権の切捨てや弁済の猶予などの条件を決めて,破産を回避する。和議が成立しないと破産となる。株式会社についてはこれに類するものとして,会社更生手続(会社更生法)の制度がある。1999年民事再生法の制定に伴い,和議法は廃止された。
→関連項目協定国際倒産

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和議」の意味・わかりやすい解説

和議
わぎ
Vergleich; Ausgleich

和議法に定めていた破産予防のための強制和議。破産外の強制和議ともいった。破産手続は債務者の営業を壊滅させ,経済的に再起するのが容易でないばかりでなく,時間と費用がかかって債権者の受けられる弁済もわずかなのが通常である。このような破産手続の不備を補うため,破産法自体も破産宣告後において強制和議に関する規定をしていた。それをさらに一歩進めて破産宣告前に破産を予防する方法として行なおうとしたのがこの和議の制度であった。 2002年,会社更生法の全面改正により廃止された。

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世界大百科事典 第2版 「和議」の意味・わかりやすい解説

わぎ【和議】

裁判所の倒産処理手続の一つ。倒産状態にある債務者からの申出により,債権者集会を開いて債務の一部免除,支払猶予などを定めた和議条件を可決することによって,債務者をして経済的に更生させようとするものである。単に和議という場合は,和議法(1922公布)による破産予防の和議(和議法上の和議)をさすが,広義では破産法(1922公布)に規定されている強制和議をも含む。後者はすでに破産宣告を受けた債務者の申出により,和議条件の可決を経て破産手続を終結させるもので,これにより破産者は破産管財人による財産の清算を免れることができる。

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普及版 字通 「和議」の読み・字形・画数・意味

【和議】わぎ

停戦。講和。〔宋史、高宗紀六〕(紹興八年十一月)辛、樞密院修官胡銓(こせん)、上書直諫して和議を斥(しりぞ)くるを以て、除名せらる。

字通「和」の項目を見る

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世界大百科事典内の和議の言及

【会社更生法】より

…倒産の処理に関する法制としては破産法が代表的であるが,破産清算を目的とするのに対し会社更生法は再建を目的とする。
[和議,会社整理との対比]
 従来,企業再建のための裁判上の手続としては和議法(1922公布)による和議手続および商法に規定される会社整理の手続(1938年改正で新設)があったが,株式会社企業の再建手続として十分でなかった。まず,和議は個人債務者を眼中に置いているうえ,破産原因がなければ開始されえない点で再建には手遅れである。…

【倒産】より

…具体的には,(1)決済資金の裏づけがないため不渡り(その手形,小切手を不渡手形という)を出した法人または個人企業が6ヵ月以内に2回目の不渡手形を出して銀行取引停止処分を受けることにより表面化することが多い。そのほか,(2)会社更生法の適用を申請したり破産申請をしたとき,(3)商法381条による会社整理,和議法による整理状態になったとき,(4)債権者会議を開催し内整理(これは法律によるものではない)を行ったとき,を倒産というが,倒産という言葉は法律用語でも学問用語でもない。ただし中小企業信用保険法には倒産という言葉が用いられている。…

※「和議」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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