中国、唐代の華厳(けごん)宗の僧。華厳教学の大成者で、中国華厳宗第三祖とされる。俗姓は康(こう)氏。先祖は代々康居(こうきょ)国(いまのタシケント、チムケントあたり)の丞相(じょうしょう)を務めたが、祖父の代に中国に帰化し、長安に住した。父の名は謐(ひつ)と称し、左衛中郎将であった。658年(顕慶3)16歳のとき阿育王舎利塔(あいくおうしゃりとう)前で一指を焼いて供養(くよう)したという。翌659年、法を求めて太白(たいはく)山に入ったが、親が病気になったので長安に帰った。雲華(うんげ)寺で智儼(ちごん)(602―668)に学び『華厳経』の講義を聞くこと9年に及んだ。智儼の入寂後2年、670年(咸亨1)に、則天武后は実母栄国夫人(579―670)の霊を供養するため太原寺(たいげんじ)を創建し、勅命を下して法蔵を落髪させこれに住せしめた。法蔵28歳のときのことである。以後『華厳経』を講ずること三十数回に及び、武周王朝期仏教界の第一人者として活躍した。実叉難陀(じっしゃなんだ)の『華厳経』80巻の訳出を助け、地婆訶羅(じばから)(日照。613―687)、提雲般若(だいうんはんにゃ)、弥陀山(みだせん)、義浄(ぎじょう)の訳経にも関係した。また、西明寺、大薦福寺で雨を祈り、悟真(ごしん)寺で雪を祈って、霊験があったという。先天(せんてん)元年11月14日、西京の大薦福寺で示寂。賢首(けんじゅ)大師、香象(こうしょう)大師、康蔵(こうぞう)法師、華厳和尚(おしょう)などと敬称される。『華厳経探玄記(たんげんき)』20巻、『華厳五教章(ごきょうしょう)』(『華厳一乗教義分斉章』『華厳教分記』『一乗教分記』とも)3巻、『妄尽還源観(もうじんげんげんかん)』1巻、『遊心法界記(ゆうしんほっかいき)』1巻、『華厳経伝記』5巻、『大乗起信論義記(だいじょうきしんろんぎき)』5巻、『梵網経菩薩戒本疏(ぼんもうきょうぼさつかいほんしょ)』6巻、『般若心経略疏(はんにゃしんぎょうりゃくしょ)』1巻など多数の著書があり、宏観(こうかん)、文超(ぶんちょう)、智光(ちこう)、宗一(しゅういち)、慧苑(えおん)(673?―743?)、慧英(ええい)らの弟子がいる。
[池田魯參 2017年4月18日]
『鎌田茂雄著『中国華厳思想史の研究』(1965・東京大学出版会)』▽『鎌田茂雄著『仏典講座28 華厳五教章』(1979・大蔵出版)』
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…963年(応和3)に宮中で,天台・法相(ほつそう)両宗の学匠が一切成仏(いつさいじようぶつ)・二乗不成仏をめぐって行った論議をいう。村上天皇は,8月21日から25日までの5日10座,南都北嶺の高僧各10人を清涼殿に招き法華会を催したが,その第2日夕座(ゆうざ)に問者であった天台の覚慶は,一切すべてのものが成仏できると主張したのに対し,講師であった東大寺の法蔵が,成仏できるのは菩薩と不定(ふじよう)の一部に限定されると法相宗の立場から反論して論争となった。激論は第5日夕座に及び,成仏不成仏論では史上最大規模の宗論となったが勝敗は決せず,活躍した法相宗の仲算は恩賞を賜り,天台の良源は翌年内供奉十禅師の一員に列せられている。…
…ここから《華厳経》は頓教であり〈漸教〉が第一時三乗別教,第二時般若経,第三時維摩経および梵天思益経,第四時法華経,第五時涅槃経であるなどというように南北朝諸教判が集大成されて,ここに隋・唐諸宗派教判の基本型が成立すると考えられる。これを改正増補して隋の天台宗の智顗(ちぎ)は,一華厳(阿含)時,二鹿苑時,三方等時,四般若時,五法華・涅槃時の五時にわたり,説法方法からして頓・漸・秘密・不定の四教と説法内容からして蔵・通・別・円の四教との八教が説かれたという五時八教の教判を完成させ,唐の華厳宗の智儼(602‐668)や法蔵は,一小乗教,二大乗始教,三終教,四頓教,五円教の五教と,我法俱有宗,法有我無宗,法無去来宗,現通仮実宗,俗妄真実宗,諸法但名宗,一切皆空宗,真徳不空宗,相想俱絶宗,円明俱徳宗の十宗の教判を完成させた。日本においても,空海の顕密二教を分かち十住心(《十住心論》)を立てる教判や,親鸞の頓教に難行易行の二道と竪超横超の二超を立てて漸教・小乗教に対比させる教判などが説かれた。…
…中国仏教の典籍の一つ。華厳宗の第3祖,唐の賢首大師法蔵の著作。くわしくは《華厳一乗教義分斉章》,もしくは《華厳五教章》という。…
※「法蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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