先天性喘鳴

六訂版 家庭医学大全科 「先天性喘鳴」の解説

先天性喘鳴
(のどの病気)

 原因の半数近くは喉頭軟化症(こうとうなんかしょう)ですが、他の原因がないか、また複数の疾患が合併していないか、詳しく診断を受けることが重要です。喉頭軟化症や徐々に増大してくる血管腫(けっかんしゅ)乳頭腫(にゅうとうしゅ)では、生後5~6週してから喘鳴呼吸困難が現れますが、両側声帯運動不全(りょうそくせいたいうんどうふぜん)麻痺)や先天性喉頭狭窄(きょうさく)嚢胞(のうほう)では、出生直後から呼吸困難が高度で、気管内挿管や気管切開が必要なことが多いようです。しかし、ファイバースコープでの診断が難しい場合も多く、全身麻酔下に観察してやっと診断がつく場合もあります。

 喘鳴は主に吸気の時に聞かれ、いびきよりピッチがやや高いものです。また、急性声門下喉頭炎(きゅうせいせいもんかこうとうえん)クループ)で声帯下方がはれてくる場合には、犬の遠吠え様と形容される独特な喘鳴が起こります。喘鳴が大きくなると、前胸部や鎖骨(さこつ)上部が吸気の際に陥没してきます。

 喘鳴の音が大きくなったり、喘鳴が突然起こるようになった時には、急性炎症、気管・気管支異物、喉頭けいれんなどを合併している場合もあります。乳幼児の場合には、全身状態が急激に悪化し生命に関わることもあるので、早急に小児科医や耳鼻咽喉科医の診察を受けてください。

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改訂新版 世界大百科事典 「先天性喘鳴」の意味・わかりやすい解説

先天性喘鳴 (せんてんせいぜんめい)
congenital stridor

先天性喉頭喘鳴congenital laryngeal stridorということもある。喉頭蓋に先天的な異常があって喘鳴を発する状態。喘鳴とは呼吸のときにのどから出るゴロゴロ,ゼイゼイという音である。舌が大きすぎたり,下顎発達不良であったり,リンパ腫血管腫があるときなどにも喘鳴を伴うが,これらのように原疾患が明らかなものは先天性喘鳴からは除外する。原因は喉頭蓋が長すぎたり軟弱であること,形がΩ形であるためと考えられている。症状は,生後1~4週までに,息を吸うときのほうが強い喘鳴があらわれる。20%くらいには呼気のときにも喘鳴がある。哺乳時,興奮時,泣いたときに増強し,ひどい場合は呼吸困難となる。体位を変えると喘鳴の程度や音も変わるので,経験的に子どもを楽な体位にすればよい。腹臥位(腹を下側にして寝かせる体位)で呼吸が楽になることが多い。満1歳ころまでにはほとんどが軽くなり,3歳までには消失する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「先天性喘鳴」の意味・わかりやすい解説

先天性喘鳴
せんてんせいぜんめい

呼吸するときにのどのあたりで聞こえる雑音を喘鳴というが、新生児期から吸気性に喘鳴が持続している場合を先天性喘鳴という。原因としては、喉頭(こうとう)部が生まれつき脆弱(ぜいじゃく)な喉頭軟化症がもっとも多く、そのほか喉頭の形態異常、巨大舌、舌根沈下、小顎(しょうがく)症、舌根部嚢腫(のうしゅ)、気管軟骨形成不全などがある。診断には、喉頭鏡検査、気管や食道のX線検査を行う。

 一般に苦痛がなく、成長するとともに軽快する傾向があるが、なかには重症で呼吸障害をおこし、心臓に影響が及ぶ場合がある。症状によっては外科的手術が必要である。

[山口規容子]

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