中国,清の康煕45年(1706),勅命で編された唐および五代の詩の全集。全書900巻,2200余人の作4万8900余首を収録する。収集の豊富さは前例を見ない。先行する本格的な唐詩の二つの全集,明の胡震亨(こしんこう)の《唐音統籤》と清初の季振宜の《唐詩》を底本とし,宮廷所蔵の唐人の諸詩集によって校訂を加える。《唐詩》の体例にならって初唐・盛唐・中唐・晩唐の時期区分はしない。皇帝と皇族,五代の諸国主ならびに后妃を最初の9巻に,続いて〈楽府(がふ)〉20巻を載せる。巻三十から一般詩人を時代順に配列,以下無名氏・聯句・断句・女流・僧侶・道士などのあと,末尾に〈詞〉を載せる。各種の唐詩全集の集大成として,現在もなお唐詩研究に最大かつ最重要の資料価値を持つことは言うまでもない。しかし2年にも満たぬ短期間での編集には,当然不備が伴い,それは当時からすでに指摘されている。作品の誤収・漏収,作品や作者の重出,作者小伝の誤りなど,問題点は多い。
執筆者:荒井 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、清(しん)代に編集された唐詩の全集。900巻。2873人の作者の作品4万9403首と1055の詩句を収録(この数字は平岡武夫・市原亨吉著『唐代の詩人』1960による)。1705年(康煕44)3月、康煕(こうき)帝の命を受けた彭定求(ほうていきゅう)ら10人が編集と校訂に着手、06年10月に完成、07年4月に揚州(ようしゅう)詩局から刊行された。詩局本とよばれ、清朝善本の一つとされる。編集作業は、明(みん)の胡震亨(こしんこう)『唐音統籤(とういんとうせん)』と清初の季振宜(きしんぎ)『全唐詩』を底本として進められ、個人の別集など読本を参照して、作品収録(唐五代詞を含む)、校訂および補正がなされ、部分的に小注や作者ごとの小伝が付された。短期間の作業としては、よくできた本であり、詩の黄金期である唐詩の全貌(ぜんぼう)をうかがわせるものとして、その価値は甚だ高い。しかし現在では研究が進展し、多くの欠点、たとえば未収や誤収、作者・作品の重出、小伝の誤謬(ごびゅう)などが指摘されるようになった。よりよい全唐詩の再編が待たれる。1960年に刊行された北京(ペキン)中華書局の排印本が、巻末に作者索引を付載して便利である。なお中華書局から、『全唐詩』を補うものとして、『全唐詩外編』(1982)が刊行された。
[伊藤正文]
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…ただし次の五代(907‐959)の作品をも含めることがある。清の初め(1707)に刊行された《全唐詩》900巻は唐詩の全集で,作者の総数は2873人,作品4万9403首を収める(平岡武夫の調査による)が,その中には五代まで生存していた詩人を含むのである。唐詩の文学史上の意義を論ずるとき,まず注目されるのは,中国古典詩の諸形式がこの時代に完成したことである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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