全日本労働総同盟(読み)ゼンニホンロウドウソウドウメイ

デジタル大辞泉 「全日本労働総同盟」の意味・読み・例文・類語

ぜんにほんろうどう‐そうどうめい〔ゼンニホンラウドウ‐〕【全日本労働総同盟】

同盟

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「全日本労働総同盟」の意味・わかりやすい解説

全日本労働総同盟(戦後)
ぜんにほんろうどうそうどうめい

略称同盟。1964年(昭和39)11月11日、それまでの全日本労働総同盟組合会議同盟会議)を改組し、翼下の全日本労働組合会議全労会議)と日本労働組合総同盟総同盟)とが統合して、組合員数147万人で結成された全国中央組織(ナショナル・センター)。1987年11月、労働組合の新たな中央組織の全日本民間労働組合連合会が発足したのに伴い、解散した。前身は、50年の日本労働組合総評議会総評)の結成に際し、解散に反対して参加を拒否した総同盟右派と、52年10~12月の日本炭鉱労働組合(炭労)と日本電気産業労働組合(電産)のストライキに対する指導が極左的だと批判し、総評を脱退した全国繊維産業労働組合同盟(全繊同盟。現ゼンセン同盟)、全日本海員組合(海員)、全国映画演劇労働組合(全映演)とを中心に54年4月に結成された全労会議。

 その後、総評系組合から分裂して拡大した日本駐留軍労働組合(日駐労。現全駐留軍労働組合=全駐労)、日本自動車産業労働組合連合会(自動車労連)、各地方電力労働組合(1960年全国電力労働組合連合会=電力労連として一括加盟)、官公関係組合から分裂した第二組合(1959年結成の全日本官公職労働組合協議会=全官公に加盟の各組合)などを加えて拡大した。しかし、全国中央組織としての全労会議内に、全労会議加盟の各組合と、同じく全国中央組織としての総同盟とが並列して参加しているという組織の矛盾があった。そこで一つの全国中央組織に統合する過渡的組織として、62年4月、総同盟と総同盟を除く全労会議と全官公とが並列して加盟する同盟会議を結成し、組織の競合関係を解消した。さらに、民主的労働戦線の結集と統一の基礎を築くという本来の目的に従って、64年の全労会議と総同盟との解散、同盟の結成にこぎ着け、全官公は同盟に直接加盟する官公関係組合の部会として存続することになった。

 同盟は、その結成経過にみるとおり、総評に対抗する、反共を目ざす労働組合の全国中央組織で、国際自由労連ICFTU)に一括加盟し、民社党を支持し、政策形成や企業の経営方針への参加を強化すること、労働戦線統一を基礎に政界の再編成を促進することなどを当面の方針とし、1982年の大会では初めて防衛力強化の支持を打ち出すなど、労働四団体の最右派の立場にたった。組織人員は発足以来民間労働者を中心に増加し、74年にはピークの231万人に上ったが、その後やや停滞していた。同盟は総評に比べて民間労働者が大半を占めており、そのため民間先行という形で、労働戦線統一を指導し、82年12月の全日本民間労働組合協議会(全民労協)結成では中心的役割を果たした。87年11月、全民労協は全日本民間労働組合連合会に改組されたが、それに伴い同盟は解散した。さらに89年(平成1)11月、全日本民間労働組合連合会は総評などと統合し日本労働組合総連合会(連合)となった。

[松尾 洋]


全日本労働総同盟(戦前)
ぜんにほんろうどうそうどうめい

略称全総。1936年(昭和11)1月15日、日本労働総同盟(総同盟)と全国労働組合同盟(全労)とが合同して、組合員数公称10万人(内務省調査7万2000人)で結成された右派系組合の全国中央組織(ナショナル・センター)。産業報国運動に対する方針で旧総同盟系と旧全労系とが対立し、39年7月24日、分裂・解体した。

 一方で国家主義系労働組合運動が拡大する1935年4月大阪・港南地方に総同盟・全労合同促進協議会が結成され、両組合本部に合同を申し入れた。両組合で協議の結果、同年7月「日本労働組合会議、社会大衆党の線に沿いつつ汎(ひろ)く僚友団体の協力参加を期する」などの方針が決定した。ところが全労の関東を中心に、日本交通労働総連盟(交総)、東京市従業員組合(東京市従)を加えるべきだとの議が起こり、交総、東京市従は合法左翼の日本労働組合全国評議会(全評)を含む全的合同を主張したので、ついに二組合だけの合同に終わった。

 1937年10月の全国大会で、労働奉公銃後三大運動の一つとして罷業絶滅・産業平和運動を決め、罷業絶滅宣言を発し、社会的反響をよんだ。38年産業報国運動が推進されると、社会大衆党主流、全総の旧全労系は労働組合の解消・産報一本化を主張する一方、旧総同盟系は自主的労働組合の存続のうえにたつ産報協力の二本立て方針をとって対立し、ついに分裂して、11月には旧全労系は産業報国倶楽部(くらぶ)を結成、旧総同盟系は元の日本労働総同盟に戻った。

[松尾 洋]

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百科事典マイペディア 「全日本労働総同盟」の意味・わかりやすい解説

全日本労働総同盟【ぜんにほんろうどうそうどうめい】

(1)1936年右派の日本労働総同盟と中間派の全国労働組合同盟が合同して結成した全国組織(会長松岡駒吉)。略称は全総。組合員10万と称し,日中戦争前夜の右派労働組合戦線の大統一を意味するものだった。しかし,1939年旧全労派が産業報国会への解消を主張して脱退,全総は同年日本労働総同盟に改称。(2)1964年全労会議と総同盟(全日本労働総同盟組合会議)が合体して結成した全国中央組織。略称は同盟。成立と同時に,同盟会議も解散して同盟に一本化し,〈自由にして民主的な労働組合〉を旗印に,総評(日本労働組合総評議会)と対抗する組織になった。総評が官公庁労働組合を主体としたのに対し,同盟は民間労働組合(全繊同盟,全国金属,電力労連,自動車労連,海員組合など)が主体となっていたが,1987年解散し,全日本民間労組連合会(連合)の中核となる。→連合
→関連項目ゼンセン同盟全日本海員組合全日本労働総同盟組合会議ナショナル・センター日本労働組合総同盟

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「全日本労働総同盟」の意味・わかりやすい解説

全日本労働総同盟
ぜんにほんろうどうそうどうめい

(1) 略称,同盟。 1964年 11月に全日本労働組合会議 (全労会議) ,日本労働組合総同盟 (総同盟) および全日本官公職労働組合協議会 (全官公) の3団体を一体化した中央組織として発足。民主的労働運動を掲げ,左翼的労働運動の克服を目指し,生産性向上運動を認めるなど日本労働組合総評議会 (総評) と対立を続けた。 87年,全日本民間労働組合連合会 (現連合の母体) 発足を前に「路線は基本的に継承された」として組織解散。暫定機関として構成組合による「友愛会議」を設け,民社党支持の政治運動を託した。解散年の組織人員 210万 2893名。 (2) 略称,全総。 1936年に日本労働総同盟 (総同盟) と全国労働組合連盟 (全労) が合同した組織。 39年総同盟と産業報国会に分裂した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「全日本労働総同盟」の解説

全日本労働総同盟
ぜんにほんろうどうそうどうめい

①1936年,全国労働組合同盟と日本労働総同盟が合同して発足した労働組合組織
会長松岡駒吉。産業報国会への労働組織のファッショ的統合に消極的に抵抗を試みたが成功せず,'39年分裂,'40年解散。
②1964年11月,全日本労働組合会議(全労会議)・日本労働組合総同盟(総同盟)・全日本官公職員労働組合(全官公)によって結成された右派労働組合の全国組織 略称「同盟」。'87年解散し,連合に発展。

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改訂新版 世界大百科事典 「全日本労働総同盟」の意味・わかりやすい解説

全日本労働総同盟 (ぜんにほんろうどうそうどうめい)

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世界大百科事典(旧版)内の全日本労働総同盟の言及

【組合同盟】より

…関与した主要争議は,1927年の磐城炭鉱,乾鉄線,内閣印刷局,全労時代の東洋モスリン(1930),ゼネラルモータース,住友製鋼(ともに1931)などである。全労(委員長大矢省三)は,当時としては最大の組合であったが,36年1月総同盟と合同して全日本労働総同盟(全総。会長松岡駒吉,副会長河野密,西尾末広)を結成した。…

【総同盟】より

…25年に左派を,26年に中間派を除名し,右派労働組合運動の中軸となった。36年全労と合同し,全日本労働総同盟(全総)を結成したが,39年再分裂して旧名に復し,40年政府の圧力によって解散した。主要機関紙誌は《友愛新報》《労働及産業》《労働》。…

【同盟】より

…正称は全日本労働総同盟。1987年(民間)連合の結成にともない解散。…

※「全日本労働総同盟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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