労働組合の全国中央組織のこと。national center of trade unionの略。日本では、日本労働組合総連合会(連合)、全国労働組合総連合(全労連)が併存している。また、連合にも全労連にも加盟しない労働組合の全国的結集を呼びかけて1989年(平成1)に結成された全国労働組合連絡協議会(全労協)は自らをナショナル・センターとはせず共闘組織と位置づけている。連合は、かつて労働四団体とよばれた日本労働組合総評議会(総評)、全日本労働総同盟(同盟)、中立労働組合連絡会議(中立労連)、全国産業別労働組合連合(新産別)を中心に1989年に統一したものである。全労連は、1974年(昭和49)に発足した統一戦線促進労働組合懇談会(統一労組懇)を母体として1989年に発足した。
2011年(平成23)6月時点の所属組合員の比率は、連合68.7%、全労連9.2%、全労協1.4%、上記3団体以外の団体に加盟している組合18.0%、無加盟8.6%となっている(重複加盟、都道府県単位地方組織のみ加盟を含む。厚生労働大臣官房統計情報部編『労働組合基礎調査報告』による)。
ナショナル・センターは加盟単産(単位産業別組合)の利害を調整し、春闘や政策・制度闘争のような労働組合の全国的規模の取り組みを主導する。また、雇用問題や社会政策など雇用者とその家族の生活全般にかかわる問題について、雇用者の代表としての意思表示をする。さらに、日本経済団体連合会など経営者側全国組織、政府機関および与野党との折衝・交渉、中央・地方における労働委員会や各種行政審議会など行政機関への労働者代表としての参加、国際組織への加盟、国際連帯活動など多面的な活動を担っている。なお、ナショナル・センターは1990年代後半以降、労働組合員の減少に対応するため、都道府県レベルの地方組織、市や郡レベルの地域組織を通じて、未組織労働者の組織化に直接に乗り出した。
これらの取り組みを効果的に行うには、1国1組織が本来の理想である。そのため、絶えず労働戦線統一の努力が重ねられてきた。しかし、実際には活動方針、政治的見解などの対立で分立し、多数の独立組合も存在してきており、歴史的にも、1940年代後半の全日本産業別労働組合会議(産別会議)と日本労働組合総同盟(総同盟)、1950年代以降の総評と全日本労働組合会議(全労会議)・全日本労働総同盟組合会議(同盟会議)・同盟、そして1989年11月以降の連合と全労連など、いつの時代もナショナル・センターが併存・対立する構図が常態となっている。
海外でもナショナル・センターが併存する国と1国1組織をほぼ達成している国がある。前者の国として、フランス、イタリア、スペイン、韓国などがあり、後者の国としてイギリス(イギリス労働組合会議:TUC)、ドイツ(ドイツ労働総同盟:DGB)、オーストラリア(オーストラリア労働組合会議Australian Council of Trade Unions:ACTU)などがある。アメリカも1国1組織であったが、2005年に「勝利のための変革」Change to Win(CTW)がアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)から分裂した。
[松尾 洋・川崎忠文・鈴木 玲]
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…上部団体には,上部団体の決定が加盟組合を多かれ少なかれ拘束する連合体(単一産業別労働組合,略して単産ともいう)と,加盟組合の連絡,情報交換,相互援助などのみを目的とする協議体とがある。また中小企業の組合のなかには,ナショナル・センターの地方組織である地区労,地方同盟にのみ加盟しているものも少なくない。
[連合体の諸類型]
上部団体のなかで最も重要な連合体には,組織面からみていくつかのタイプがある。…
※「ナショナルセンター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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