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全身性エリテマトーデス(SLE/紅斑性狼瘡) ぜんしんせいえりてまとーですえすえるいーこうはんせいろうそう Systemic Lupus Erythematosus

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家庭医学館の解説

ぜんしんせいえりてまとーですえすえるいーこうはんせいろうそう【全身性エリテマトーデス(SLE/紅斑性狼瘡) Systemic Lupus Erythematosus】

◎若い女性に多い自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)
[どんな病気か]
[原因]
◎皮膚・粘膜(ねんまく)症状が特徴的
[症状]
[検査と診断]
◎疲労防止と薬の正しい服用を
[治療]
[日常生活の注意]

[どんな病気か]
 免疫機能の異常によって、皮膚、関節をはじめ、全身の臓器に炎症をおこす病気で、よくなったり悪くなったりをくり返し、慢性に経過します。
 病気の重さや、生命にかかわるかどうかは、どの臓器がおかされるかによってちがってきます。とくに、腎臓(じんぞう)や中枢神経(ちゅうすうしんけい)がおかされると、命にかかわる危険性が高くなります。
 1万人に1人くらいが発病し、20~40歳代の女性がかかりやすく、男性の10倍の発病率です。

[原因]
 今のところ不明ですが、かかりやすい素因をもっている人に、感染、ホルモン紫外線、薬などの環境因子が引き金となって、免疫の異常がおこり、自分のからだの成分に対する抗体(こうたい)(自己抗体(じここうたい))ができます。
 免疫で重要なはたらきをする血液中の細胞(リンパ球)が直接に、あるいは自己抗体が自分の組織を攻撃し、炎症をおこすと考えられています。
 遺伝はしませんが、かかりやすい素因が遺伝するのではないかと考えられています。

[症状]
 全身の症状としては、発熱、倦怠感(けんたいかん)(だるさ)、体重の減少などがみられます。また、からだの各部位や内臓に、多様な病変が生じます。(図「全身性エリテマトーデスの症状」
 皮膚や粘膜の症状に特徴があります。鼻から両頬(りょうほお)にかけて、チョウが羽を広げたような発疹(ほっしん)(蝶形紅斑ちょうけいこうはん))や、円形の紅斑ができた後、中心が萎縮(いしゅく)して色素がぬけ、逆に、周囲に色素が沈着してコインのようになるディスコイド疹(しん)(「円板状エリテマトーデス(DLE)」)がみられます。
 また、手のひら、手指、足の裏などにできるしもやけのような発疹も特有な症状です。約半数の患者さんに、脱毛や日光への光線過敏症がみられます。
 また寒冷時に、手足が真っ白になって、紫や赤に変色するレイノー現象もよくみられる症状です。(図「全身性エリテマトーデスの症状」
 皮膚の血管に炎症をおこすと、紫斑(しはん)や出血がみられ、潰瘍(かいよう)になったり、皮膚が壊死(えし)することもあります。また、口の中や鼻の粘膜に、痛みのない潰瘍がよくできます。
 関節の痛みや腫(は)れで発病することが多く、関節リウマチとまちがえられることもあります。筋肉の炎症をともなうこともあります。
 約半数の患者さんには、腎臓病がともないます。たんぱく尿や血尿(けつにょう)がみられなくても、組織にはすでに変化が生じていることもあります。
 命にかかわる病変なので、治療する前に、腎臓の組織をとって顕微鏡で調べ(腎生検(じんせいけん))、組織の障害の程度を確かめてから、治療方針を決めるのがふつうです。
 中枢神経障害は、腎障害、感染症とともに、この病気の三大死因の1つです。脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)の神経もおかされて、あらゆる神経症状が現われます。
 多いのは、精神症状、けいれん発作、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血などの脳血管障害によって生じる症状です。
 髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎、不随意(ふずいい)運動、末梢神経炎などもみられます。
 心臓や血管の病変としては、心臓をおおう膜に生じる炎症(心外膜炎(しんがいまくえん))がもっとも多く、心臓のまわりに水がたまって、息切れや動悸(どうき)を自覚します。
 心臓の主体である筋肉(心筋(しんきん))に炎症がおよべば、頻脈(ひんみゃく)や不整脈(ふせいみゃく)が現われ、心電図に異常がみられます。ひどい場合は、心筋梗塞(しんきんこうそく)、狭心症(きょうしんしょう)、弁膜症(べんまくしょう)など、心臓のはたらき自体が失われることもあります。
 また、下肢(かし)の静脈をはじめ、腎静脈(じんじょうみゃく)、肺静脈、腹部の大静脈などに血栓(けっせん)ができてつまってしまう、血栓性静脈炎(けっせんせいじょうみゃくえん)をおこすことがあります。
 肺の病変としては、胸膜炎(きょうまくえん)が多くみられます。胸に痛みをともない、X線検査で、胸水(きょうすい)がたまっているのがわかります。
 肺炎も生じますが、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)(「間質性肺炎とは」)が多く、呼吸ができなくなると致死的です。まれにしかおこりませんが、肺胞(はいほう)の中に出血すると、治療するのが困難です。
 消化器の症状としては、腹痛、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)が多く、腹膜炎(ふくまくえん)によって生じることがあります。膵炎(すいえん)もおこりますが、症状がないことが多いものです。
 肝臓の障害は、軽いものから、慢性肝炎(まんせいかんえん)、肝硬変(かんこうへん)(「肝硬変」)のように重症のものまでみられます。
 そのほか、リンパ節の腫れ(リンパ節腫脹(せつしゅちょう))や、脾臓(ひぞう)の腫れ(脾腫(ひしゅ))がみられることもあります。
 血液の異常も、全身性エリテマトーデスの特徴で、各成分の減少、すなわち赤血球(せっけっきゅう)の減少(貧血)、白血球(はっけっきゅう)の減少、とくにリンパ球の減少、血小板(けっしょうばん)の減少がよくみられます。

[検査と診断]
 一般的な検査としては、血沈(けっちん)(血液沈降速度(けつえきちんこうそくど))、尿、末梢血(まっしょうけつ)、CRP(C反応性たんぱく。炎症があると血中に増える)、抗体などの免疫グロブリンの測定などの検査が必要です。
 診断するために重要なのは、この病気に特徴的な、いろいろな抗体を血中から見つける検査です。これによって、自分のからだをつくっている細胞の核に対する抗体(抗核抗体(こうかくこうたい))が検出されます。
 抗核抗体のなかでも、遺伝情報を伝える物質であるDNA(デオキシリボ核酸)に対する抗体(抗DNA抗体)は、この病気に特異的にみられるもので、さまざまな組織に障害をおこすものです。
 そのほか、血球成分に対する抗体、すなわち抗リンパ球抗体、抗赤血球抗体(クームス抗体)、抗血小板抗体、抗好中球抗体(こうこうちゅうきゅうこうたい)が検出されます。
 血清成分に対する抗体としては、リウマチ(リウマトイド)因子、抗リン脂質(ししつ)抗体などがあります。
 これらの抗体のあり方が、病態と密接に関連しています。
 病態をつかみ、臓器障害の有無や程度を知るためには、X線、呼吸機能、血液ガス分析(血中の酸素や二酸化炭素濃度を調べる)、心電図、心臓の超音波(心エコー)、脳波、CT、MRI、髄液(ずいえき)、筋電図などの各検査、皮膚、腎臓、筋肉、肺などの組織をとって顕微鏡でみる生検、消化管造影検査などが行なわれます。
 免疫の異常が、どの程度活発に生じているかを知るには、DNA抗体、補体(ほたい)(免疫において、抗体を助けることがある物質)の量を調べることが、役立ちます。
 注意していただきたいのは、ひとりの患者さんが、これらの症状をすべて示すわけではないことです。
 一人ひとりはちがった症状を示します。また、一時に症状がでそろうというものでもありません。十分に病気の経過を聞き、詳しく診察することによって、特徴的な自覚症状、他覚症状を確認し、検査結果と合わせて、診断を確定します。

[治療]
 免疫の異常がもとになって、全身の炎症が生じている病気なので、治療は、免疫のはたらきを抑えることと、炎症を止めることが、おもな治療法になります。
 おかされている臓器、症状の程度、病気の活動性によって、薬の種類と量が決まります。臓器障害の広がりや炎症の程度を評価しながら、病気の経過をみきわめつつ、病態に応じた治療をしなければなりません。
 関節炎や発熱に対しては、非ステロイド抗炎症薬が使われますが、治療薬の主体は、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬です。
 ステロイド薬には、強力な炎症を抑える効果があり、おもに用いられるプレドニゾロン(1日40mg以上)は、免疫抑制効果も強力です。とくに、中枢神経障害、腎臓障害、血液異常には、大量のステロイド薬が必要です。
 ステロイド薬の大量使用が効かない場合は、1日1gという膨大なステロイド薬を3日間点滴するパルス療法を試みたり、ステロイド薬と免疫抑制薬の併用が行なわれたりします。
 30mg以上のステロイド薬を使用しなければならない患者さんは、その症状とステロイド薬の副作用の可能性を考え、入院が必要です。
 症状が治まれば、ステロイド薬を少しずつ減らします。しかし、その後も、炎症を抑え、再燃を防ぎ、からだに不可逆的な(もとにもどらない)変化が生じるのを最小限にするためには、1日10~15mgのステロイド薬を長期間にわたって使用し続ける必要があります。

[日常生活の注意]
 心身の過労、寒冷、紫外線、外傷、感染、手術、妊娠、出産は、発病のきっかけになったり、病気を悪くするので、注意しなければなりません。
 病気で感染に対する抵抗力が落ちているうえ、さらに治療薬のステロイド薬によっても感染に弱くなるので、清潔にするよう気をつけて、うがいや手洗いを励行します。
 手術、出産、抜歯(ばっし)のときは、主治医に相談して、ステロイド薬を増量してもらう必要があります。
 食べていけない食べ物はありませんが、たんぱく質が豊富で、ビタミンやミネラルのバランスのよいものをとるように心がけます。
 また、ステロイド薬の副作用として骨粗鬆症(こつそしょうしょう)(「骨粗鬆症」)になりやすいので、カルシウムの多い牛乳や小魚をとるように気をつけます。
 ステロイド薬は食欲を増すので、食べすぎて、肥満や糖尿病にならないように注意することも必要です。
 大量のステロイド薬を使用すると、満月様顔貌(まんげつようがんぼう)(ムーンフェイス)といわれるように、顔が丸くなりますが、薬を減らせばもとにもどるので、心配はいりません。
 民間療法にたよったり、自分の判断でステロイド薬を減らしたり、中止したりすると、病気が悪化して致命的となることがあるので、注意しなければなりません。

出典|小学館
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