八女古墳群(読み)やめこふんぐん

日本歴史地名大系 「八女古墳群」の解説

八女古墳群
やめこふんぐん

[現在地名]八女市吉田・宅間田・豊福・本・大籠・忠見・山内・長野など、筑後市西牟田など、三潴郡三潴町西牟田など、八女郡広川町一条・太田・六田など

八女市域の北境を画して東西九―一〇キロの帯状に延びる八女丘陵には百数十基を超える大小の古墳群がある。これらを総称して八女古墳群という。古墳群の西端は三潴みづま西牟田にしむた辺りに始まり、東に広川ひろかわ一条いちじようを経て八女市の丘陵上を東行し、東山麓に至るいくつかの古墳支群を構成している。その代表的支群を西からあげる。

瑞王寺ずいおうじ古墳群(筑後市西牟田字松尾) 八女丘陵の西端近くにある半壊円墳(復原二六メートル)竪穴系横口石室から珠文鏡・馬具鉄鏃・須恵器、墳丘から形象埴輪を発見。五世紀中頃のもの。

石人山せきじんさん古墳群(八女郡広川町一条) 石人山古墳(前方後円墳、全長一一〇メートル)弘化谷こうかだに古墳(円墳、径三五メートル)などの国指定史跡を含む。前者竪穴式石室に収められた幾何学文のある横口式家形石棺を囲む竪穴系横口石室の前に武装石人が立つ。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「八女古墳群」の解説

やめこふんぐん【八女古墳群】


福岡県八女市、八女郡広川町、筑後市にある古墳群。指定名称は「八女古墳群 乗場古墳(のりばこふん) 石人山古墳(せきじんやまこふん) 岩戸山古墳(いわとやまこふん) 善蔵塚古墳(ぜんぞうづかこふん) 弘化谷古墳(こうかだにこふん) 丸山塚古墳(まるやまづかこふん) 丸山古墳(まるやまこふん) 茶臼塚古墳(ちゃうすづかこふん)」。八女古墳群は八女丘陵上、東西十数kmの範囲にある石人山、弘化谷、岩戸山乗場、善蔵塚、丸山塚、茶臼塚、丸山などを中心とした約300基の古墳からなる。1922年(大正11)に乗場古墳(八女市吉田)が国の史跡に指定され、以降、順次追加指定され、1978年(昭和53)に統合されて名称が八女古墳群に改称された。岩戸山(八女市吉田)を代表とする前方後円墳は12基、また、石人山(広川町一條)、丸山塚(八女市宅間田)を代表とする装飾古墳は5基あり、これらの築造は5世紀から6世紀代と推察されている。なかでも九州最大級の前方後円墳の岩戸山古墳は、墳丘長約135m、後円部径約60m、前方部幅約90m、高さ約17mで、古墳の東北部には祭祀が行われた広場をもつ。『筑後国風土記』逸文により、この古墳は筑紫君磐井(つくしのきみいわい)の墓で築造は6世紀前半代であることが知られ、実年代を知りうる重要な古墳といえる。古墳からは石人・石馬や埴輪(はにわ)なども多数出土し、筑紫君一族の栄華をしのばせる。出土品は岩戸山歴史資料館に展示されている。石人山古墳は全長約110mの前方後円形の装飾古墳で、巨大な家形石棺が納められており、蓋の部分に浮き彫り風に彫刻された直弧文と重圏文が有名である。乗場古墳は、全長約70mの前方後円墳で後円部に開口した横穴式石室の内部には、赤・黄・青の3色を使った三角文や同心円文などが描かれている。善蔵塚古墳(広川町六田)は、一部が削られ盗掘坑もあるが、全長約95mと推定される2段築成の前方後円墳。弘化谷古墳(広川町一條)は、径約40m、高さ約7mの円墳で、横穴式石室の奥壁、天井石などに赤・緑で描かれた幾何学文や線刻文様がある。丸山塚・丸山・茶臼塚の3基が1978年(昭和53)に追加になった古墳で、丸山塚古墳は装飾壁画のある径約33mの円墳、丸山古墳(八女市本)は古墳群の最も東に位置する全長約40mの前方後円墳。茶臼塚古墳(八女市宅間田)は径約24mの円墳である。石人山古墳などの出土品は広川町古墳公園資料館に展示。岩戸山古墳へは、JR九州新幹線ほか久留米駅から西鉄バス「福島高校前」下車、徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

事典・日本の観光資源 「八女古墳群」の解説

八女古墳群

(福岡県八女市・八女郡広川町)
福岡県文化百選 歴史散歩編」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の八女古墳群の言及

【広川[町]】より

…九州自動車道八女インターチェンジに近く,久留米・鳥栖テクノポリスの一角を占め,近年工業も成長している。町域南部から八女市北部にかけては人形原(にんぎようばる)台地とよばれ,八女古墳群(史)に含まれ,石人山(せきじんやま)古墳がある。【松橋 公治】。…

【八女[市]】より

… 水田と畑を合わせた耕地が市域の6割を占める田園都市で,八女茶の名で全国に知られる茶をはじめ,電照菊,果樹の栽培や畜産など多角的な集約農業と,仏壇,提灯,和紙,石灯籠などの江戸時代からの伝統工業が盛んである。北部の丘陵一帯に筑紫君磐井(つくしのきみいわい)の墓といわれる岩戸山古墳や装飾古墳の乗馬(のりば)古墳など多数の古墳が分布する八女古墳群(史)がある。秋の彼岸中日の前後に公演される福島灯籠人形は,江戸期から伝承されてきた屋台操りの郷土芸能で,国の重要無形民俗文化財。…

※「八女古墳群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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