八陣(読み)ハチジン

デジタル大辞泉 「八陣」の意味・読み・例文・類語

はち‐じん〔‐ヂン〕【八陣】

中国兵法で、古くから唱えられた8種類の陣立て。日本では、ふつう、平安時代大江維時おおえのこれときが唐から学んだという、魚鱗鶴翼長蛇偃月えんげつ(または彎月わんげつ)・鋒矢ほうし・方円・衡軛こうやく雁行がんこうの8種をいう。孫子呉子のもの、諸葛亮の考案したものなどがある。

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精選版 日本国語大辞典 「八陣」の意味・読み・例文・類語

はち‐じん‥ヂン【八陣】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 中国で古くより唱えられた八種類の陣形。孫子・呉子・諸葛孔明などにそれぞれの八陣の説があるが、日本には吉備真備によって天平年間(七二九‐七四九)に孔明の八陣の法が伝えられ、また大江維時伝来と称する八陣も伝えられている。中国古来の八卦の方位にもとづく八陣は、それぞれ天履・地載・風揚・雲垂・龍飛・虎翼・鳥翔・蛇幡と名づけられている。大江維時の伝えた八陣は、それぞれ魚鱗・鶴翼・雁行彎月・鉾矢・衡軛・長蛇・方円の名を当てる。
    1. [初出の実例]「令諸葛亮八陳・孫子九地、及結営向背」(出典:続日本紀‐天平宝字四年(760)一一月丙申)
    2. [その他の文献]〔班固‐封燕然山銘〕
  2. [ 2 ] 浄瑠璃「八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)」の通称

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八陣」の意味・わかりやすい解説

八陣
はちじん

戦いに臨んで、陣を布(し)く際の、8種の陣備えの形をいう。わが国に古代中国の兵学思想が正式に移入されたのは、735年(天平7)に帰国した、遣唐留学生吉備真備(きびのまきび)(695―775)らによるとされる。方・円・曲・直・鏡の五行(ごぎょう)の陣形や、易(えき)の八卦(はっけ)あるいは井田法(せいでんほう)などの図式に基づいて考案された諸葛亮(しょかつりょう)の八陣や、孫子の九地結営(きゅうちけつえい)の法などである。なかでも亮(孔明(こうめい))の八陣図は、中国古来の天地風雲・竜虎(こ)鳥蛇の八陣に、八卦の乾坤巽艮(けんこんそんごん)(四隅)・震兌離坎(しんだりかん)(四方)を結合させたもので、これに洞当(どうとう)・中黄(ちゅうおう)・竜騰(りょうとう)・鳥翔(ちょうしょう)・連衡(れんこう)・握奇(あくき)・虎翼(こよく)・折衝(せっしょう)の名を冠している。これを受けて平安時代の文人にして兵学者大江維時(これとき)(888―963)がつけた魚鱗(ぎょりん)・鶴翼(かくよく)・雁行(がんこう)・彎月(わんげつ)(偃月(えんげつ))・鋒光(ほうこう)・衡軛(こうやく)・長蛇(ちょうだ)・方円(ほうえん)という和名が後世までもよく使われた。

[渡邉一郎]


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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「八陣」の解説

八陣
(通称)
はちじん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
八陣守護城 など
初演
文化5.3(京・布袋屋座)

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