1398年、中国、明(みん)の太祖朱元璋(しゅげんしょう)の民衆教化の勅撰(ちょくせん)書『教民榜文(ぼうぶん)』41条中、第19条のいわゆる「聖諭六言」をいう。すなわち「父母ニ孝順ニセヨ、長上ヲ尊敬セヨ、郷里ニ和睦(わぼく)セヨ、子孫ヲ教訓セヨ、各々生理ニ安ンゼヨ、非為ヲ作(な)ス毋(なか)レ」の六言で、これをのちに六諭と称した。この『教民榜文』はもともと里甲制にかかわる諸規定、教条であり、里甲制が弛緩(しかん)、解体に向かうにつれて空文化していったが、その過程でかえって六諭だけが嘉靖(かせい)年間(1522~66)以来、郷約と結び付いて、郷村における民衆教化の聖訓として広く宣布され、清(しん)代にも盛行をみるに至った。つまり、専制下における里甲制的秩序から地主制的秩序への移行に伴ってこれの盛行がみられるのである。范鋐(はんこう)が著した『六諭衍義(えんぎ)』はその解説書である。
[溝口雄三]
『酒井忠夫著『中国善書の研究』(1960・弘文堂)』
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明の洪武帝が人民教化のため定めた6カ条の教訓。「父母に孝順なれ,長上を尊敬せよ,郷里に和睦せよ,子弟を教訓せよ,おのおの生理に安んぜよ,非為をなすなかれ」の6条。解説書に范鋐(はんこう)の『六諭衍義』(りくゆえんぎ)があり,日本にも伝えられて流布した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…中国,明の太祖が1397年(洪武30)発布した6項目の聖諭,すなわち六諭に対する解説書。明末ごろの人,会稽(浙江省紹興市)の范鋐(はんこう)(字は声皇あるいは縉雲)が著した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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